「花散るや屋根職人の大笑ひ」の批評
こんばんは。
貴句、及び作者コメントの両方(貴句「屋根職人大笑いせり桜散る」の分も)
拝読しました。以下、長文です。お含みおきください。
独楽爺さんが仰られていた様に、「季語
が動く」と私も思いました。
「桜散る」、「花散る」でないとダメな理由が見付けられませんでした。
上記の季語は「晩春、植物」の分類で、頃・時としての焦点よりも、
桜が散るという「現象」や「散っているもの」としての焦点を持ち、
故に「儚さ」などの印象を持つ季語ではないかと考えました。
そして、読者の視線を上から下に誘導していく性質も持つ季語なので、
屋根職人と取り合わせると読者の視点は慌ただしくなるかもしれません。
また、季語、屋根職人、大笑ひが結び付いた時に「落下事故」の印象も僅かに
出てしまうかもしれません。
(けが負う程じゃなかったので、職人2人が大笑いしたとの解釈もできてしまう)
そして、〇〇職人の〇〇の部分は読者にとっては二次的な情報です。
書かなくても特に問題は無く、その場合は読者が自由に想像できる余白になります。
「どうしても屋根職人と書きたい」のであれば6音も使わず、
4音の「屋根工」、3音の「屋根屋」で十分ではないか?と私は考えました。
以上より、私の添削
例は、時系列順に以下の3つ考えてみました。
A:花時や屋根屋二人の大笑ひ
B:花過ぎや屋根屋二人の大笑ひ
C:夏隣屋根屋二人の大笑ひ
作者が「桜散る」、「花散る」といった「植物の状態、現象を表す季語」を
お使いの意図が「季節の明示」だけではなく「情景を彩る背景」であったなら、
A~C案のどれも、主役を覆い壊さずに全体を支える形になると思います
次に、貴句「屋根職人大笑いせり桜散る」へのコメント欄で気になった事です。
https://weblike-tennsaku.ssl-lolipop.jp/haiku/corrections/view/30072
1.「せり」と完了形にした
確かに完了の意味はありますが、助動詞「り」には継続用法、存続用法もあります。
2.その後の動詞が「せり」ですから
古語辞典で調べましたが、「せり」という動詞は辞典に載っておりませんでした。
文語文法的には以下ではありませんでしょうか。
名詞「大笑ひ」+サ変動詞「す」の未然形「せ」+助動詞「り」の終止形
3.職人の屋根に談笑~
談笑は、「打ち解けて楽しく語り合うこと」を意味する単語です。
時間経過にやや幅があります。
2人の職人は仕事する為に屋根に上っており、語り合いまではしていないでしょう。
精々、一瞬だけ大笑いする程だと私は思います。
4.~桜散りそむる
「そむる」が平仮名ですので幾つかのパターンが考えられます。
・補助動詞「初む」
→マ行下二段活用ですので、句末に来る場合は「散り初む」。
・染めるという意味の他動詞「染む」
→マ行下二段活用ですので、句末に来る場合は「散り染む」。
マ行下二段活用(め/め/む/むる/むれ/めよ)
・動詞「散る」+染まるという意味の自動詞「染む」+助動詞「り」
→「散り染めり」。
自動詞「染む」→マ行四段活用(ま/み/む/む/め/め)
助動詞「り」は四段活用動詞の已然形、サ変動詞の未然形(エ段の音)に接続し、
自身の活用はラ変動詞と同じです(ら/り/り/る/れ/れ)
以上です。ご覧いただきありがとうございました。長文失礼いたしました。