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真飛幽利は一人で暮らしたかった。第2話 全4話で完結

真飛幽利は一人で暮らしたかった。の第2話

作者 家節アヲイ 得点 : 3 投稿日時:


「ここが宵伽よいとぎ荘……」

 高校の入学式を三日後に控えた四月の六日。幽利は引っ越しの際に送りそびれた荷物をまとめたスポーツバッグを片手に、一件の建物の前に到着していた。
 父親の知り合いが経営しているというその建物は、よく言えば風情があり、悪く言えばぼろ臭かった。
 どう見ても築数十年は経過していそうなその木造建築は、まさかの平屋建てで二階らしきものが見当たらない。そもそも、二階があるような高さでもなかった。

「これ、アパートっていうより一軒家じゃん……」

 幽利の知るアパートというものは、二階建てで部屋の入り口が住居者別に分かれており、少なくとも鉄筋で作られたものであったはずだ。
 こんなボロ家でこれから先の三年間過ごさなくてはいけないと考えると、頭が痛くなった。

「君が幽利くんかぃ?」

 玄関前で呆けていた幽利の横、アパートの横にある庭のような場所から初老の男性が出てきた。年は父さんよりも少し上だろうか。白髪交じりの髪を後ろになでつけた、渋いオジサン。それが幽利の、男性に対する第一印象だった。

「はい、真飛幽利です。あなたは……」
「宵伽 壮士そうし。君のお父さんの知り合いで、このアパートのオーナーだ」

 どうやら、このダンディなオジサンが、父さんの言っていたこのアパートの管理人らしかった。

「壮士さん、よろしくお願いします」
「いや、こちらこそ。あの部屋だけは賃貸客もいなかったから、幽利くんに使ってもらえて助かるよ。流石、お寺さんのご子息だ。こういうことには慣れているのかな」
「……?」

 なんか、話が読めない。お寺さんのご子息だから? 慣れている? 部屋の隅でひっそりとうごめく黒光りするGの話だろうか。

「あれ、キミのお父さんから何も聞いてないのかい? てっきりそれを聞いたうえで幽利くんをよこしてくれたものだと思っていたのだけど」
「……何も聞いてないです。父さんの知り合いがいるからそこに厄介になるようにと言われただけで」

 嫌な予感がする。あれほど厳しい父さんがあっさりと親元を離れることを快諾した理由。とてつもない、罠にはまった間隔。

「その部屋、出るんだよ」

 壮士さんは手を前にだらりと垂らし、にやりと唇をゆがめる。
 幽利は嫌な予感が的中したことを確信した。
 父さんは、初めからこれを狙っていたんだ。
父さんのもう一つの職、『退魔業』の修行を幽利にさせるために。
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