真飛幽利は一人で暮らしたかった。の第3話 全4話で完結
真飛幽利は一人で暮らしたかった。の第3話
作者 A 得点 : 2 投稿日時:
思えば、幽利はつらい幼少期をすごした。悪霊退治をしてほしいという依頼がれば駆け回る父親に連れまわされた。
化け物に襲われるたびに、
「俺には幽霊なんて見えないんだよぉぉぉっ!」
と泣き叫んでも父は許してくれなかった。
小学校5年の時に、枯れ井戸から伸びた無数の手に引きずり込まれ、ゾンビのような亡者に揉みくちゃにされた。
「天魔外道皆仏性、四魔三障成道来!」
ゾンビが一瞬で消えた。
神官服を着た父は、白い紙垂を五十センチほどある幣串で挟んだ御幣を片手で持ち、ニヤリと笑った。
「カッコイイだろ。『退魔業』継ぎたくなったろ?」
「ならねえよ! クソ親父!!!!」
それがトラウマで、何があっても父の”そっちの仕事”には同行しないようにしていたのに。
「あ”あ”あ”、はめられたぁぁぁ!」
幽利は頭を抱えた。
「まあ、なるようになる」
壮士さんがポンポンと幽利の肩を叩いた。
「じゃあ早速、依頼があるんだけど」
「だから俺、除霊できないってば! 鬼か!」
「問題ない。お前の部屋にパートナーがいるから」
壮士さんがニヤリと笑う。
かくして幽利は座敷童と、自殺者が絶えないという”魔の踏切”に挑むことになった。