真飛幽利は一人で暮らしたかった。の第3話 全4話で完結
真飛幽利は一人で暮らしたかった。の第3話・E
作者 せんり 得点 : 0 投稿日時:
『退魔業』とはいうものの、幽利は未だそう言った父を信用してはいなかった。
何せ今まで霊など見たことがないのだ。だから小学生の時、父から家の寺が代々裏方で退魔をしていたと聞かされた時は、正直いかれてしまったのかと思ったし、そんな見えもしないものを相手にしろなどと言われて、はいそうします、と返事をするわけもなかった。
断固として拒否していたが、手回しをされていたらしい。何という親かと思いつつも、ふと考えて壮士にたずねる。「でるって言ってましたけど、どんな霊なんですか?」
「私も直接見たわけではないのだけどね。ポルターガイストはしょっちゅう起こるらしくて、部屋に住んだ人はみんな気味悪ががって出ていったんだ」
「霊の姿を見た人はいないんですか?」
「いないな。だからこそ余計に不気味なのかもしれない。これがイギリスだったら優良物件になるらしいけどね」
ポルターガイストなら、むしろ怖いというより迷惑な面が強いな、幽利は思った。しかし最終的に範囲内だと思い直して壮士に告げる。
「いやー、おもしろそうじゃないですか。俺、姿が見えないのなら怖いと感じないたちなんで平気です」
「本当に、ここでいいのかい?」
「はい、もちろんです」
見えなければ霊に忠告することもできないのだが、とりあえず幽利は霊のお手並みを拝見することにしたのだ。
学校から帰って部屋を開けると、段ボールを飛び出し、物という物が散乱していた。
「これは、派手にやってくれたなあ……」
思わず幽利がため息をつくと、耳に聞こえるはずのない声が後ろから響く。
『やーい、ざまあないね! わたしの領域にはいるからだよー!』
幽利は一秒もかからない速さで、バッと後ろを振り向く。『あっ…………」
そこにいたのは、着物の幼い女の子だった。