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真飛幽利は一人で暮らしたかった。第3話 全4話で完結

真飛幽利は一人で暮らしたかった。の第3話

作者 うっぴー 得点 : 1 投稿日時:


「なんじゃお主は?」
 新居の扉を開けたら、そこに美少女が立っていた。
 『退魔業』の修行の最初一歩はこの部屋に住み着いた物の怪、座敷わらしを追い出す
ことだった。おじさんが出るんだよ、とか言うから、どんなグロい幽霊が出るかと身構えていたが、これなら意外と大丈夫そうだ。
「すみませんが、出ていってください」
「いやじゃ、断る」
 バンっと扉を閉められた。まあ、そうなるわな。
「今、出ていってくれると、豪華賞品をプレゼント!」
「新聞の押し売りなら、間に合っておる」
 霊との交渉とは困難を極める。すぐに結果を出すことは諦め、部屋に入って荷物を片すことにした。
「これこれ、何を勝手にここに住み着こうとしておる?」
「勝手にここに住んでいる奴に言われたくないな」
 座敷わらしが迷惑そうにこっちを見ているが、気にせずフィギアケースを設置し、実家から持ってきた美少女フィギュアを並べていく。
 今日からここが俺の城。ここでは実家では親の目を気にしてできなかったオタク活動を思う存分やることができる!次は、今ハマっているアニメのポスターを壁に飾ろうとしていたら、座敷わらしがこともあろうにフィギアケースを押し倒しやがった。
「き、貴様!なんてことしやがる! 親父にも壊されたことなかったのに!」
 腕があらぬ方に曲がった限定フィギアを見下ろし、俺は未だかつてない怒りと絶望に震えた。
「私の城にこんな卑猥なものを設置しおって、このような嫌がらせ……どんな陰陽師にもされたことがなかったぞ?」
「このフィギアの価値がわからないとは……これだから四次元女は……」
 三次元女はキモいが四次元女(幽霊や物の怪)は、もっとキモいと思った。当たり前だが。
「貴様のような奴は、俺がなんとしても追い出してやる!」
「それは、こっちのセリフじゃ。盛りのついたエロガキが」
 とは言ったもののまだ俺の霊能力では、座敷わらしに触れることもできない。ここは、お宝オタクグッツを壊されないように隠し、守ることを優先せねばならないな。
「おっ、そういえばもうすぐ7時じゃないか!」
 今、ハマっている美少女アニメの放送時間だ。俺はすぐさまテレビのリモコンのスイッチを入れた。
「な、なんじゃ、この卑猥な映像は……!」
 アニメのオープニングが始まると、座敷わらしが悲鳴を上げはじめた。
「素晴らしいオープニングだろう?」
 この芸術的なまでのギリエロオープニングに感動しているようだった。四次元女でも、この芸術は理解できるらしい。
「い、今すぐ消せ! やめろ!」
「は? 誰が消すかよ」
 と思ったら違ったらしい。俺は必要に手を伸ばしてくる座敷わらしから、テレビのリモコンを懐に入れて死守する。
「な、なんと末恐ろしいバカガキじゃ!」
 こうして俺と座敷わらしの共同生活が幕を上げた。

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