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真飛幽利は一人で暮らしたかった。第3話 全4話で完結

真飛幽利は一人で暮らしたかった。の第3話

作者 家節アヲイ 得点 : 0 投稿日時:


「父さん、ちょっとこれどういうこと!?」
「いきなり電話をかけてきたと思ったら口やかましい奴だな。どうかしたのか」
「どうしたもこうしたもないよ! なんで下宿先に座敷童子が住み着いてるんだよ!」

○○○

 期待を胸に足を踏み入れた念願の都会暮らしは、いきなり暗礁に乗り上げていた。
 壮士さんに連れられて向かった部屋には、既に先客がいた。

「やっと私をしっかり認識出来る人間が来たのね。待ちくたびれたわ」

 赤い着物を纏った小さい子供。かといって、子供特有の無邪気さは毛ほども感じさせない落ち着きをもったその子は、座布団の上にちょこんと座っていた。
 
「えっと、キミは?」
「私? 私は座敷童子。別になんて呼んでくれても構わない」

 座敷童子。この少女はそう言った。座敷童子といえば、その家に福を呼び込むというと言われている存在で、妖怪というよりかは、神に近い存在だ。そんな少女が、なぜ?

「座敷童子、キミはなんでここにいるの? この家に福を呼び込むため?」
「違うわ。ここは居心地が良かったから。それにあまり住居を変えたら、私のことを探している人が混乱するでしょ?」
「なるほど、わからん」

 イマイチ要領を得ない座敷童子の言い分に、これ以上の会話は意味をなさない気がした。
 それならばと、スポーツバッグからスマホを取り出すと、こういった件のスペシャリストにに連絡を取った。

○○○

「言ってなかったか。丁度お前が東京に行きたいなどと言い始めた時にな、宵伽のやつから連絡があったんだ。扱っているアパートに幽霊が出て困ってる、助けてくれってな」
「それと、俺の下宿先が重なった理由は?」
「そりゃあ、お前。退魔の練習に決まってるだろ」
「どうしてそれを! はじめに言わないっ!」
「言ったらお前が渋るだろう? それなら言わない方が良いに決まってる」

 ああ、それは正しい判断だ。間違いなくこちらの方からお断りしていただろう。

「それで、退魔は出来たか?」
「退魔もなにも、座敷童子って退治するような存在だっけ?」

 ちらりと少女の方を見れば、湯飲みでのんびりと茶をすすっている。どう考えても害を及ぼすような存在には見えなかった。

「おお、座敷童子だったのか」
「分かんないけど、本人はそう言ってる」
「それなら、パートナーにすればいい」
「ぱぁとなぁ?」

 パートナー? 何の? 学園生活を送るのにパートナーなんていらないだろう。

「そりゃお前、退魔師のパートナーだよ」

 再度、少女の方を見る。少女はもはやこちらを気にする様子もなく、ひたすらに茶をすすっていた。

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