「燃えるものが溢れている春愁よ」の批評
お世話になっております。
御句、拝読しました。以下かなりの長文ですがご容赦ください。
まず、御句が表現なさりたい事は、芸能人や政治家等の発言、web上のコメントやSNS、遠い国での戦争での戦火が炎上している事なのかもしれないと自句自解もセットなら洞察できますが、「燃えるものが」という表記ですと、単純に「物(可燃物)が増えている。もしかして作者はゴミ問題について愁いているのかもしれない」と誤読されるおそれがあります。
又、「溢れる」は「あふれる」の他に「あぶれる」とも読めますが、単語の意味が変わってしまいますので、「「もの」が「者」だとすると、やる気に燃えているのにこの人は仕事が無くなってしまって愁いているのかな」等、やはり誤読のおそれがあります。
真っ直ぐに、「炎上の多きこの世の春愁よ」と表現されても良いのではないかと思いました。
次に、拙句「ExcelのSUM、IF、ORの新社員」についてのコメントありがとうございます。
https://weblike-tennsaku.ssl-lolipop.jp/haiku/corrections/view/24709
拙句がシルバー世代の方々にとってはあまり馴染みが無いテーマを扱っているであろう事は、承知しておりました。
ですが以下のサイトをご覧くだされば一目瞭然ですが、今の時代、シルバー世代さえもパソコンの資格を取得される方がいらっしゃいます。
https://mos.odyssey-com.co.jp/voice/2022/2_1.html
拙句の景と詩情ですが、単純に4月の会社の事務仕事等の光景です。
若い新入社員の学習と成長の過程を描く点で、詩的な情緒や感動を引き立てているかもしれないと思いました。
それでも、全ての読者にとって共感し易いものであるとは限らないという点は重々理解しております。これは、俳句を読み解く上で読者は様々な視点を持つ事ができ、それが句の解釈に影響を与えるからであると、読者の洞察力や読み解き方にも依ると私は思っております。
又、2022年7月14日(木)19:00から放送されたテレビ番組『プレバト!!』の俳句コーナーで、高城れにさんの句「風呂上がり火照るばあばとアイスの実」について、俳人の夏井いつき先生は以下の様に解説されていらっしゃいます。
夏井先生:え~、これはね、あの、素直です。はい、え~素直に書いてます。
で勿体無いのはね、やっぱり風呂上がりっていうと大体火照ってるんですよね。
で「火・照・る」って言ったらもうこれで3音、ね。損している訳ですから。
本人:そっか~。
夏井先生:そうなのよ、はい。そして、「アイスの実」問題もちょっと触っておきましょう。
本来でしたら「アイスクリーム」とキチンと言うとか、「凍った菓子」と書いて「氷菓」って言うんですけども、そういう季語もあるんですが、この句の場合は「アイスの実」商品名ですね。でその商品名も、上手く使うと、映像がちゃんと見えてくる訳です。
でまあ、食べた事の無い爺さん婆さんで「アイスの実って何だ?」って言うかもしれませんけれども、そういう人は放っといていいと思います。
(しばらく会場の笑い声)
はい。で、そうなった時にこの「火・照・る」という3音を、どうするかっていう話なんですが、これも「並列」、並べる、言葉を並べるという型を使うと、結構簡単にできます。あなたが一緒に食べてたのね?
本人:はい
夏井先生:はい。そしたら、「風呂上がりばあばと私とアイスの実」ってやっても良いし、あなたのお名前は、何て仰るの?
本人:「れに」です。
夏井先生:そしたら、「ばあばとれにと」ってやったら、自分の名前を詠み込む事だってできる訳ですね。
本人:確かに~。
夏井先生:うん。あっ、ありがとう(笑)。
本人:うわっ、スゴい! ありがとうございます。
夏井先生:どう致しまして。
(録画の会話のまま引用)
今年で67歳になられるシルバー世代の夏井先生でさえ、「食べた事の無い爺さん婆さんで「アイスの実って何だ?」って言うかもしれませんけれども、そういう人は放っといていいと思います」と仰られています。
私も全く同感であり、句の構造(季語の選択、語順、文法、単語の意味、技法の効果の是非)をよく調べもせずに批評なさる方は、基本的に放置する方針です。
特に、添削句だけを書いて他に何も書かない方はミュート対象にしております。
批評するからには最低限単語の意味を調べてから行い、添削句と共に「何故そう思ったのか?」の根拠も書くのが作者に対する敬意であり、礼儀であると私は思っております。
今回の拙句を添削するのは実はとても簡単で、中七だけでExcelだと分かりますので、上五の五音を丸々別の表現に変えるだけでできます。
めいさんならどの様に添削なさいますか?