「ただいまのトーンの低し薄氷」の批評
こんばんは。お久しぶりです。貴句、拝読いたしました。
トーンという単語には「色調」の意味もございますので、
私めはダブル含意ではないかと初読で考えました。
何故なら、季語
「薄氷」は初春・地理の分類だからでございます。
①作者が外にいらっしゃり、「ただ今ここは、まだ初春なので景色の色調
(草木の伸びなど)が低く、低い位置に薄氷が張る位の寒さですよ」との心象的意味
②作者が庭先や玄関先などで、ご家族の「ただ今」の声を聞いた視線の先に、
薄氷が見えた意味
繰り返しますが、季語「薄氷」は初春・地理の分類ですので、
・地面、・水鉢、・軒下、・置物など、必ずしも視点が地面に限定されません。
ですので形容詞「低し」で、「低い場所に薄氷が張っておりますよ」と
明示されているとの読解は自然に成り立ちます。
つまり
・声のトーン、・景色のトーン、・薄氷が張っている位置の低さを
同時に含み得る訳でございます。
私めが気になったのは、形容詞「低し」の活用形が連体形「低き」で
季語に係っておらず、終止形で切れて唐突に季語が現れている事でございます。
・声のトーンが低い ・春の色調がまだ低い ・薄氷が地面、水面という低位に張る
この3つは垂直方向の感覚(低さ)で統一されております。
したがいまして、形容詞「低し」を終止形で切る→概念が宙に浮いてしまい、
切断による多義の放置が起きます。
「低き」と連体形で季語に係らせる→低さの収斂点が季語に定まり、
多義を保ったまま季語「薄氷」に収束させる事が可能でございます。
この差は大きいでしょう。
以上の事から、私めからの添削
提案は以下でございます。
具体的には「活用形を変える」だけでございます。
・ただいまのトーンの低き薄氷
上記なら、拡散している多義性の含意を季語の一点に集める事ができますよね。
実景と心象がより適するのではないでしょうか。
以上、ご参考いただけましたら幸いでございます。
お目通しいただき、感謝いたします。
添削のお礼として、みつかづさんの俳句の感想を書いてください >>
春なのに明るい句にならず投句を迷いましたが
ご意見を伺いたくて思い切って投句しました。
よろしくお願いいたします。