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機動装鎧トルクギア

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スレ主 大野知人 投稿日時:

以前、『創作相談』の方に挙げた『転生モノの相談』のプロローグ三十ページほどです。
企画としては
 『ガンダムっぽい世界の敵国に生まれた主人公』が『ガンダムオタクであった前世の記憶と前世人格(守護霊的な)』を取り戻し、無双したり他の転生者と揉めたりするお話です。
 どこかの小説賞に応募する予定で、あくまで『ガンダム』ではないし『ガンダム』を知らなくても楽しめる作品を目指して作る予定です。
 ただ、上述の理由により『原作自体がかなり複雑』な世界線に転生することとなるので序盤で紹介する設定をかなり抑えめにして作ろうと思っています。

 以下に全体のあらすじ・プロローグが内包している伏線や伏線になる予定の設定を書きます。そのうえで、ご意見もらえると幸いです。

全体あらすじ。

 主人公・ジェイクは異世界・パルム帝国軍の中級士官である。士官学校時代にお世話になった先輩にして第三皇女/地球制圧軍の司令官(七光り&旗頭的な扱い)に当たるヒロイン・エリーチカに惚れつつも、『手が届かない存在・士官学校時代が特別だっただけ』と諦めていた。

プロローグ。
 そんなある日、GG(大型ロボット兵器)乗りでありながら、前線から遠いとある基地の哨戒任務に就いていた彼は敵のゲリラ部隊と交戦・絶体絶命の危機に陥るも、ロボットアニメ『機動装鎧トルクギア』ファンであった前世の記憶(と人格)が己の内に蘇ったことで『戦闘勘・ゲームでの対人戦経験』を取り戻し、敵を返り討ちにする。(ジェイクの前世は守護霊のような存在として扱う。基本的には別人格だが、ジェイクに憑依することが可能である)
 前世の己(コオロギと名乗る)と会話していく中で、自軍が負けることをジェイクは知る。『できる限り原作には関わらず生き延びたい』と消極的な決意をするが、奇襲部隊討伐の手柄を評価されたジェイクは前線への栄転を命じられ、エリーチカ直属の部隊に配属され、原作主人公と因縁が深いライバルポジの男の部下になってしまう。

第一部。
 ジェイクは偶然にも再びお近づきになれたエリーチカとの会話を楽しむが、同時に死への恐怖も抑えきれない。コオロギから情報収集をする中で、ジェイクの直属の上司となったエウリー中佐がエリーチカと深い因縁があり、とある理由から原作主人公を利用して彼女を謀殺する男であったことを知る。

第二部。
 前線での戦闘や自主的な事務作業の手伝いを通じてエリーチカの関係を深め、戦闘で生き残ったことによる自信と共に諦めかけていた恋慕を再燃させるジェイク。コオロギと共に『原作への干渉をするか、しないか』悩みながらも充実したひと時を過ごすが、その間にも『トルクギア』の物語は進み、決断の時が迫る。コオロギはとある理由から『自分以外にも転生者がいる可能性』に気付く。

第三部。
 エリーチカ謀殺の前日。エリーチカへの想いを確かにした『ジェイクは謀殺の概要を知っている・その謀殺が後々のとある事件によって無意味になる』とエウリーに迫る。しかしエウリーは己自身がコオロギの気付いた転生者であること、彼の親友であることを告げて立ち去る。
 当日に至り、敵軍兵がエリーチカを手に掛けようとするのを見て原作への干渉をジェイクは決意するが、エウリーが前世の親友と知ったコオロギの決意は揺らいでいた。前世の親友と現在の想い人の二つに対して葛藤するジェイクとコオロギは迷いの中で敵部隊を撃退するが、戦闘終了後に『己を殺すか、己がエリーチカを殺すのを黙ってみているか選べ』とエウリーに迫られる。
 戦いの中でエウリーの本心に気付いたジェイクはエウリーを説得し和解する。

プロローグ

「なあ、ジェイク君や。キミはこの戦争についてどう思う?」
 ボクが好きになった彼女は、とんでもないリアリストだった。
 士官学校の一つ上の先輩であった。
「どうって……。言われても」
「忌憚のない意見を、いや。それを私が言うのはおかしいか」
 士官学校に居ながらにして戦争という物に疑問を持ち、才能にも見識にも恵まれているのに、立場にとらわれて上手く動けずにいる。
「でも私は、やはりこの戦争は間違っていると思う。三百年前からの『チキュウ』との交流、それによって得られた成果を戦争という形で返すなんて……。あまりに恥知らずと思わないか?」
「それは……。それを論じるのは、ボクの仕事じゃない気がします」
 彼女はリアリストだったけれど、同時にどこまでも『善人』であろうとする。
 その様にボクは惚れた。
「『仕事』ね、実にキミらしい。初めて会ったとき『忠誠心なんかありませんよ、生活のために軍人を目指します』なんてキッパリ言ったのはよく覚えているさ」
「話の流れで断言せざるを得なかっただけですよ、そこまで割り切っているわけじゃなあいです」
 例えばそれこそ貴女のこととか。口には出さず、言葉を裡にしまう。
 そんな彼女にボクの手は届かない。
「私はね、このパルム帝国と言う国を酷く歪だと考えている。父上も、他の貴族たちもそうだが……。あまりに利己的に過ぎるし、その前までの代について言えば利他的に過ぎたように見える」
 手が届かないところからこちらに話しかける彼女はいつも難しいことを考えていて、であるからこそすごく哀れにも見えた。
「ボクには難しいことはわかりませんけどね……。それを変えられる人間が、問題だと認識しているなら良いんじゃないですか?」
「違いない」
 そして不幸にもボクの想い人は『変えられる』側の人間であった。
 彼女の名前はエリーチカ・パルム・ヴァルハルト。この国の皇女様なのだから、そりゃあ政治だって変えられる。
だけど。だからどうにも可哀想で。
 ああ、手が届かない。手が届いたところで、何ができるとも思わないけど。

『こちら、パルム帝国軍・第三大隊所属・アムドゥル小隊。隊長機より各機に通達』
 学生時代のひととき、たまたまお近づきになった風変わりな皇女サマとのことを思い出しているうちに任務の時間がやってくる。
「アイ、サー」
『これより、月面・レクティ鉱山基地周辺の哨戒任務に入る。何も起こらないと思うが、警戒は怠るな!』
 トランシーバーの音がプツンと切れるのを横目に、欠伸を一つ。
 士官学校を卒業してはや一年。
「ボクぁ、何やってんだろうなぁ……」
 何と言うなら、戦争であるが。
 二十七代皇帝が異世界『チキュウ』との貿易・交流を始めてから約三世紀。
 急進派の当代皇帝が交流で得た技術・兵器をもって宣戦布告をしてから五年。
「ま、生活と命が保証されるってんなら、何でもいいですがね」
 汎用大型ゴーレム兵器・通称GG(ギア・ゴゥラム)を月面に走らせながら、誰ともなしにぼやく。古代文明のゴーレム魔法と『チキュウ』の機械技術の融合だとか言う兵器だが、安全なところに居られるなら、もはや何でもいい。
 終わりの見えない戦争の中で、士気を保っていられる人間はそんなに多くない。
「こんな機械モドキを走らせてるだけで生きていけるんなら、閑職万歳ですなぁ」
 皮肉るように言ってはみたが、半分以上は本心である。
 できれば生活していけるだけの給料が欲しい。
 できれば命の危険は冒したくない。
 そんなことを言っているうちに、既制圧地域である地球軍の旧月面基地の哨戒担当に。
 現在の最前線は地上のどこだかと聞いてはいるが、どうでもいい。
『おーい、ジェイク! ジェイコブ・トミルソン曹長! 応答しろ!』
 ボーっとしているうちに、担当区域の端まで来たらしい。
 コクピットの隅の無線機のランプが光っているのを見て、マイクをオンに。
「はい、こちらジェイコブ・トミルソン曹長! 異常はありません!」
 あんまよく見てなかったけど、たぶんないよ。うん。
 こんな後方の基地で何が起こるわけじゃない。
 そう思っていたが、今日ばかりは少し事情が違うらしい。
『オーケー。聞こえているな』
 配属以来一年の付き合いになる隊長の声を聞いて緊張を取り戻す。
『二時の方向、哨戒区域外だがレーダーに妙な反応が出ている。民間船の可能性が高いが、確認を頼みたい』
「了解、です」
 やれやれ、面倒だなぁと思いつつレーダーマップを確認。
 確かに、熱源反応がある。だが、GGにしては反応が小さい。
 敵の奇襲部隊ということはないだろう、ないはずだ。
『頼むぞ!』
 左手からこちらを見ている隊長のGGに一瞬目をやり、それからスラスタを吹かす。
 一応は異常事態だというのに部隊員を一人で行かせる当たり、うちの隊長も大分気が抜けていると見える。
 熱源はゆっくりと移動中、作戦宙域外であるこのあたりを民間船が飛んでいることはしばしばある。大方、暇な貴族が月面観光にでも来たのだろう。
 距離も遠くないし、近づいて害がなさそうだったら軽く注意して帰ってもいいかも知れない。そう思って、機体を浮かせる。
 もう少しでこちらの視界に入る。そのことに少しだけ気を引き締めた。その時。
『九時、十一時方向にも熱源! かなり大きいです!』
 隊長ではない、この声はチャッキーだな。などと呑気に考えて。
 大きい熱源、という言葉にいやな汗が湧いた。
『総員! 戦闘用意!』
即座に響いた隊長の怒声に 背筋を伸ばす。
『ジェイクは三時方向の確認急げ。カレオ、チャッキー、バルピンは俺についてこい!』
 指示が飛び、それぞれのGGが動き出す。
 一応は正規訓練を受けた軍人である。やる気はなくとも動きは速い。
「はぁ……、戦闘は怖いなぁ」
 なんて呑気に言えるのは、パルム帝国軍がチキュウ軍に対してかなり優勢だからであり、また経験豊富な隊長を信用しているからでもあったが。
 どうせこんな隅っこの基地一つに奇襲部隊が来ないであろうという、慢心でもあった。
「ま、行きますか」
 そうボクが身を隠していたクレーターから機体をあげた瞬間。
 いやなものが見えた。四機(‘‘)ほど。
「おいおい、マジかよ……」
 そこに見えたのは、一隻の小型宇宙船。
 そして、未起動状態のチキュウ軍製GG・ヘルムギア。
 熱源でバレない様に小型船間で無理やり牽引してきたらしい。
「隊長!」
 すぐにトランシーバーのスイッチを上げ、叫んだ。
 こちとら哨戒用の旧式GGだ。『コボルト』なんて活かした名前がついてはいるが、開戦当時のロートル品。
機体性能が劣っているうえに一対四では勝ち目などないから、救援を求めようとした。だが。
『どうしたジェ……ッ ザ、ザザザッ!』
 ジャミングと言う奴か、などと考える間もなく。
 目の前の四機の頭部のセンサーアイに光が灯り、立ち上がった。
 明らかにこちらを見ていた。気付かれていることに恐怖する。
「絶体絶命、って奴ですかい」
 冷や汗をだらだら流しながらも、操縦桿を握りなおす。
 サブスクリーンで武装を確認。哨戒用GGではあるが、マシンガンくらいは装備していたはずだ。
 戦闘をするつもりはない。しかし、逃げる際の威嚇発砲は有効だと聞いたことがある。
「生きて、帰るぞッ!」
 向こうの機体が起動する前に、一刻も早く基地まで撤退する。
 ジャミングの範囲はわからないが範囲外に出た瞬間に連絡が取れるよう、無線機の電源は入れたまま。
 向こうは小型船の下からコンテナの様な物を引きずり出し、武装を整えているようだ。
「今のうちに距離を稼ぐ!」
 足を斜め前に投げ出すようにして、スラスタを後ろ向きに吹かせる。
 ガスは無駄にしないように、できるだけ低滑空を維持しながらGGを後ろに飛ばす。
「隊長! 隊長!」
『ザッ、ザーザッ!』
 まだ、ジャミング下か。
 映らなくなったレーダーマップに苦々しい思いをぶつけつつ、逃走する。
「撃って、来るのかよ!」
 瞬間、画面の端を光線が走った。
 コンテナから長大な銃を持ち出した敵がこちらを狙っている。
 スナイパー、と呼ぶのだったか。
「あの距離で、当たるものかッ!?」
 いや、当たるから撃つのだろう。冷静に考えつつスラスタをマニュアルへ、進行方向を斜め後ろにそらして躱した。
「あぶねぇ!」
 そのまま、二発・三発と続けざまに放たれるのを避け続ける。
 シミュレータでの戦績だけなら、悪くはないんだ。実戦で同じことをすりゃあいい。そう言い聞かせて、機体を飛ばす。
 こちらから敵が見えていること、狙いが正確であることから何とか避けることはできた。
「そろそろ、隊長達の機体が見えてもいい頃合いだが……」
 メーターで比較すると、先ほどの解散地点付近まで戻ってきているはずだが。
 バックモニターには味方の姿は見えなかった。
 思考を巡らせつつも、機体を斜めにそらす。光条が視界を駆け抜けた。
『ザザッ、ザーッ!』
「畜生が!」
 相変わらずつながらない無線に毒づいたその時。
 ギャリリリ! と左斜め前から嫌な音が。
 見ると、かなり近くに敵GGの姿。
「ハンッ! ボクが迂闊だった」
 思わず己の浅はかさを笑う。斜めに走るより、まっすぐ走る方が早いに決まっている。
 一機が狙撃をしている間に、他の三機が視界に映らないように接近する。多対一の状況でなら、とてもいい作戦だ。
「どわりゃあぁあ!」
 GGの首を回せば、右側にも二機のマシーンが迫ってきている。
 悲鳴をあげながらも、マシンガンを構えて扇形に威嚇射撃。
 当てるより、距離を取らせることの方が重要に思えた。
 シュパバババ、とマシンガンの弾が中空を撥ねる。薬莢が落ちていく。
 カートリッジにはそんなに余裕がない。弾幕は持って二十秒。それまでには味方と合流しなくては。
 焦った瞬間、視界の隅を光線が駆けた。同時に、強い横向きの衝撃(G)。
 バンッ! と音がした瞬間にスクリーンの左側が急に暗くなる。
 どうやら左肩を狙撃されたらしい。そう気付くより早く、バランスを崩した機体がコントロールを失う。
「こんな時に……ッ!」
 画面端にはオーバーヒートの表示。スラスタに過負荷がかかって動かなくなったらしい。さらに立て続けの衝撃。
 見ると、視界の端でサブマシンガンを抱えた敵機体の姿がある。
スラスタ復旧までの数秒でこちらの手持ちのマシンガンも撃ち落とされ、敵が銃口を向けたまま迫ってくる。
「死んだな、こりゃ……」
 乾いた唇で静かに呟いた。
 報われない恋など、今やどうでもいい。出来ることなら、生きて遠くから見ていたかったけれどそれも難しいらしい。
「エリーチカ、先輩。お世話になりました」
 誰にともなく言った時、ほのかに視界が白く染まった。
 白く、明るく、薄く。
「走馬灯、って言うんだっけ。チキュウの言葉じゃ……」
 妙に冷静に呟いた己の声が、スピーカー越しに聞くように遠い。
 時間が、ゆっくりになる。胸の裡から、脳の奥から情報と感情の波が押し寄せる。
 その後、知らない声がどこからともなく聞こえてきた。
「(おいおい、走馬灯なんて縁起じゃないな。俺はこーいうの、思い出したって言うと思うぜぃ?)」
 止まった時間の中で、ボクは自分の中に増えた情報を整理する。
 焦らず、急いで。
 自分の前世が地球に住む平凡な少年であったこと。
 自分が少年の愛した『機動装鎧トルクギア』という戦争ロボットアニメの世界に生きて居ること。
 自分たちパルム帝国軍があと一年で戦争に負けること。
 最後に、その少年はパルム帝国軍のGGが好きで、独裁者に翻弄されながらも戦うさまが好きで、誰よりもと言っていいほど作品を愛していたこと。
 ああ、全部。全部。
「思い出したッ!」
 瞬間、意識が逆転する。
 視界が灰色に染まって、その中でスクリーンに映る己の瞳だけが不気味に紅く光るのが見える。
 ボクの中の俺が目覚めた。
「ハッハァー。状況は悪い……のは知っちゃあいたが」
 いまだゆっくりな時間の中で、俺は現状をざっと確認する。
 前世とは違う身長、体感覚、声。いや、それはどうでもいいか。
「せっかく目覚めたのに、ここで死ぬのは面白くないねぇ」
 これはもはや走馬灯などではない、一流のスポーツ選手が言うところの『ゾーン』と言う奴に近い何かだ。
「左手とシールドは丸ごと損傷、マシンガンも使えない……。ナタが一本あるだけか」
 武装を確認、使えるものなんざほとんどない。
 こちらの機体は『コボルト』か。開戦直後の旧式GGじゃ、年々アップデートされてる地球軍の『ヘルムギア』には勝てなくて当然とも言えるな。
普通なら絶体絶命だろう。
 だが。
「格闘武器が一本のこっているなら、十分だ」
 あきらめるのは格好悪い。
 負けを認めるのは趣味じゃない。
「(十分、な訳ないだろう。どう考えても無理だよ)」
 内心の『ボク』が文句を言っているが知ったこっちゃあ、ない。
 戦い方は、アニメやゲームで見てよく知っている。
 操縦の仕方なら『ボク』の指先がしっかり覚えている。
 俺なら、できる。負ける道理などどこにもない。
「なあ、『ジェイク』」
「(なにさ?)」
 記憶を漁り、今世の俺へと声をかけた。
「もし『無理』なんて言うなら、俺にべットしてみる気はないかい?」
「(どれだけ?)」
「全部だよ、全部。そんだけ賭けりゃあ、こんな状況屁でもないさ」
「(本気か冗談か知らないけど。もうすぐ死ぬ命だ、賭けたって良い)」
 あきらめる、わな。普通。でも、俺達は普通じゃない。
 まだまだ全然打つ手はある。
「じゃあ、いっちょ派手にやろうじゃないのォ!」
 不敵に笑って操縦桿を握ると同時、時間が再び動き出す。
 灰色の世界が色を取り戻した。
 敵スナイパーのライフルが冷却時間のカウントダウンを始め、目の前の敵の照準がこちらのコクピットに定まる。
 だが、ほんのコンマ数秒あれば何の問題もない。
「ナタ一本で、『ヘルムギア』四体。余裕だね!」
 かつてとあるオンラインのFPSでランカーにまで至った境地、見せてやる。
 意気込んで、スラスタを全開に。さっきまでのオーバーヒートの反動で少々動きが悪い。
「ラァッ!」
『(うぅわ!)』
 もはや観戦を決め込むことにしたらしい『ボク』が急なGに悲鳴を上げる。
「コイツぁ良いね。悲鳴を代わりに上げてくれる分、考える余裕ができるじゃんね!」
 居合の要領で腰裏のナタを引き抜きながら、直近のGGに接近する。
 移動角はやや曲線を描くようにずらした。スナイパーの斜線に敵機を入れるためである。そうすれば敵も狙いにくかろう。
「(この状況でよくそこまで考え付くね)」
「ま、慣れてるもんで!」
 ガン! と音がして、確かな衝撃。
 向こうの魔動力衝突炉――GGを動かすエンジンをぶった切った影響で起きた小爆発を目くらましに、横で棒立ちになっていたもう一体へ突貫。今度はエンジンではなく、コクピットを縦に切り裂く。
「(すごい……)」
「まだまだァ! あと四機分、しっかり見とけよ!」
 内心で『ボク』が驚嘆の声を漏らしているのをよそに敵前衛の三機目へ突進。
 流石に距離があるからか、牽制にピストルを撃ってくるが。
「狙いが愚直!」
「(それを訓練させられるんだけど!?)」
 当たるわけがない。実戦経験が違いすぎた。
 スラスタは相変わらず動作が重いので、地面をけるように斜めに二度跳び、距離を詰めた。
「せぇ、のッ!」
「(ぶぅわ! ちょっと、待ってくれ!)」
「待ってたら死ぬぞ!」
 Gに呻く『ボク』をよそに月面を駆け抜ける。
 刃をU字に、大きく抉るようにして三機目の両肩を落とした。
 そのまま流れるようにナタを返して膝も切り、スナイパーとの間に置く。
「人質、完成ッと……」
 呟きつつ、一息。
「(あっという間にとしか言いようがないが……、本当にすごいな君は)」
「まだ一機、残ってるぜぃ。何なら変わるか?」
「(君がやった方が早いだろうに)」
「あいはい、こき使われてやりますよッと!」
 言葉と裏腹に、気分は上々。
 小さい頃からあこがれてた『トルクギア』の世界で好きに暴れていいのだ、楽しいに決まってる。
「(戦争が楽しいなんて、日本人としちゃ末期的だね?)」
「そうかもな!」
 ようやく皮肉る余裕が出てきたらしい。短く返答し、ナタを腰裏にしまった。敵を盾にするように姿勢を低くする。
「あー。この時期だからフォトンライフルは大型の奴しかねえのか……」
 もう一カ月先だったら便利アイテムが山ほどあったのにと呟きつつ、倒したGGの背部ウェポンラックからバズーカをかっぱらう。
「じゃ、アンタは用済みだ。よく眠れよ」
 背中に背負い込むようにして、発射。コクピットから小さく血の花が咲いた。
「さて、最後の一人を狩るとしようか」
「(楽しいかい?)」
「楽しいとも!」

 もちろん、スナイパーの行く末は言うまでもないだろう。
 ボクが逃げた時と逆の手順をたどるように、ジグザグに走って切り伏せる。
 『俺』と相対した地球軍部隊の最後の一人が殺されるのに、そうたくさんの時間は必要なかった。

「で、キミは一体何なんだよ……」
「(さあ? 俺だって死んだとこまでしか覚えちゃいない。強いて言うならてめえの前世だが……。ま、守護霊とでも名乗った方がいいかもしれないがね)」
 ジャミングが張られてすぐに、哨戒部隊からの通信が途絶えたことに気付いた本部が援護を寄越してくれた。隊長達も敵部隊と遭遇したらしく、向こうはまだ継戦中とのこと。GGの損傷が激しかったボクは一時自室待機となった。
 GG備え付けのレコーダーに撃墜記録が残っていたために、メカニックたちからは随分といろいろ言われたものだが、正直内面の問題が深刻過ぎてうろ覚えであった。
「とりあえず名前は……コウスケ、でいいのかい?」
 記憶を探るようにしてジェイクが問えば、彼は違うと首を振った。
「(いや、轟功輔(とどろきこうすけ)としての俺はもう死んでるからな……)」
 前世の名前はお気に召さないと。
「じゃあ、なんて呼べばいい?」
「(そうだな、『コオロギ』でどうだ?)」
 コオロギ、と言うのはボクの前世・轟功輔がゲームをするときに名乗っていた名前である。
「なら、コオロギ。ボクは正直まだ混乱しているんだが、いくつか確認してもいいか?」
「(どーぞー!)」
 なんとなく乱雑に返された空気を感じつつ、声を出す。
「まず一個目。一年後にボクらが戦争に負けるってのは本当かい?」
 人に聞かれたら軍法会議モノだが、ここは自室の中。危なそうな案件は早めに聞いておいた方がいいだろう。
「(ああ、そうだよ。オマエの記憶が確かなら、今日は帝国歴713年の4月9日だろう?)」
「うん」
「(『機動装鎧トルクギア』の最初のシリーズが始まる1週間前だ。間違いなく)」
 そして一年間のアニメ放送を経て1年後、ボクらパルム帝国軍は敗退するわけだ。
「(そうなるな。……思っていたより冷静だな、オマエ)」
「んー、まぁね」
 正直、国への忠義とかはないし、下手に昇格さえしなければ前線に追い出されることも無い。パルム帝国軍が総力戦に出る前に月の裏側――この月面基地と丁度対極にある本国とのゲートを急襲され、そのまま大部隊が首都に雪崩れ込み終戦。というのが後半のストーリーである。
「つーか、雑なストーリーだな」
「(元々二年かけて放送する予定のアニメが打ち切りで一年になっちまったんだよ。そのあと再放送とかで人気が出て、続編や外伝が数多く作られるような名作になったが、初代のストーリーはなかなか雑にできてる)」
「知ってた」
「(俺の記憶見たもんな)」
 茶番はさておき。ここ、月面基地は比較的安全な陣地の一つ。
 パルム帝国内での謀略でやらかしちまった主人公のライバルキャラがお左遷されてやってくるぐらいしか出番のないショボい基地である。
 ……十年くらい後に、うちの軍の残党部隊が決起する外伝にも出てくるらしいが、知ったこっちゃない。どうせボク、退役してるだろうし。
「まあ一応、『赤封筒』のエウリー・シュバイカー中佐には注意しなきゃ、だけど」
 赤封筒(レッド・エンベロープ)、エウリー・シュバイカー。
 主人公のライバルにして前皇帝の隠し子。様々な謀略の果てに現皇帝に皇室を追い出されて復讐を誓った男。
 ちなみにチキュウにおける『赤封筒』は『祝いもの』の意味があったが、こちらにおいてはもっとシンプルに『白羽の矢』という意味の言葉である。
 要は軍上層部肝いりのエースという意味だ。
「ま、正直ストーリーに関わらなきゃ命の危険はない、よな?」
「(地球側のルールを考えれば、戦争裁判になってもC級戦犯止まりで命は助かるだろうってか? ロマンがないねぇ)」
「現実的と言ってくれ、現実的と。……とにかく、メインストーリーには関わらない」
 というか、主に主人公のケンゾウ・バークレイと彼の駆る『トルクギア』にだが。
「(ま、お前(まぃ)さんの人生だから、深くは口出さねぇがな)」
「コオロギにわかりやすく言うなら、『命あっての物種だろうに!』ってとこだな?」
「(戦闘狂じゃない奴に言われてもねぇ……)」
「命が惜しいんだよ、悪いか」
「(悪かねぇさ、ただ)」
「ただ?」
「(いんや、気にするな)」
 これから面白いことになるって言うのに。彼がそう続けなかった意味をボクが理解するのは翌々日、基地の指令室でのことであった。

「ジェイコブ・トミルソン、先日の地球軍――失礼、東側諸国連合軍による奇襲作戦での君の功績を称え、ここに二階級特進・少尉の称号を与えるものとする」
 これは、良かった。昇格というのは、つまり給料が上がるということで敗戦後の貯えになるということだからだ。
 だが。
「並びに、先日の対GG戦における戦績を鑑み、軍令本部からの新しい辞令を告げる」
『ジェイコブ・トミルソン少尉 貴君の対GG戦における戦闘評価に基づき、パルム帝国軍エウリーチカ大隊麾下・シュバイカー小隊への転属を命ずる』
 シュバイカー(赤封筒)……ェ。
 憧れのエリーtか先輩の元へ行けるのは(比較的)嬉しいことだが、主人公のライバルの部下と言うのは頂けない。
 だぁぁぁああああああ!
「(メインストーリーから逃げようとしたら、向こうからやって来たってか? 面白いじゃねえのよ)」
 コイツ、知ってて黙ってたな。
「(原作三話で主人公のいる基地にシュバイカー隊がカチコミを掛ける。その前準備で今は歩兵集めの真っ最中なんだろうさ)」
 確か、物語が始まる時点で主人公と『赤封筒』のシュバイカーは因縁があるのだったか。
「(愉快な話だろう、なぁ?)」
 全く面白くない! 
「(ま、こっからさらに面白くなるんだが……)」
 また、不穏なことを……。
 ボクとコオロギの記憶の共有率は『又聞き』程度であり、細かいところまでは彼に聞かないとわからないことが多い。
 一応聞いておこうかな、と思ったタイミングでコオロギから警告が入る。
「(おい、『ボク』。隊長さんが不審な目で見てるぞ)」
 言われて慌てて隊長に向き直り、とりあえず敬礼する。
 今はコオロギなんかの相手をしている場合じゃなかった。
「いや、どうしたよ……。敬礼は良いから、辞令を受け取ってくれ」
 受け取りたくない。
「……ちなみに隊長、この辞表断ったりとかは……」
「軍令本部に逆らって、身一つで生き延びられるなら好きにしろ」
 概ねボクの怠惰さを理解しているであろう隊長に一応お伺いを立ててみたが、ダメだった。
「(そりゃ無理だろう)」
「どうしても、ですか?」
「俺も命が惜しいんだ……」
 隊長もこちら側(・・・・)の、つまるところ生活のために軍人をしている人間だった覚えがあるが。いや、だからこそ彼は辞令をこちらに押し付けているのか。
その言葉は現実という重みを伴って、ボクの胸に深く突き刺さった。
「栄転だぞ、喜べよ。……前線だから命の危機は増すけど」
「最後のが喜べねえんですよ。隊長だってわかるでしょう?」
「ああ。この辞令が届いた瞬間、自分のことじゃなくて心底ほっとしたよ」
 妙にいい笑顔しやがって。ジト目で睨めば笑ってごまかされる。
「まぁ、なんだ。ジェイク」
「……はい」
「生き残れよ」
「はい」
 本当に、現実というのは重い。
「(アッハッハッハッハッハ! 頑張れ!)」
 そして笑っているコイツ、どうしてくれよう。
「(どうしようもないんじゃねぇかな! 一心同体なんだし!)」
 本当に。ああ、もう!

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