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幻想砂漠(仮題) (No: 1)
スレ主 柊木なお 投稿日時:
創作相談掲示板のほうにも投稿させていただきました、仮想現実を舞台にした話です。
ストーリーを語らずに見せる、スピード感のある文体を模索しています。
描写の過不足や場面の組み立てなどについて、ご意見をいただけるとありがたいです。
よろしくお願いします。
プロローグ
「腕の良い運び屋を探してるんだけど」
入ってくるなり、少女はそう言った。
最低限の調度しかない、整然としたオフィス。
クラウは椅子から立とうともせず、少女を横目でちらりと見たきり、手元の端末に視線を戻す。
「こっちが探してるのは依頼人だ。迷子じゃなくてな」
スクリーンの起動音。
クラウが顔を上げると、少女は無言のまま、目の前にバンクの残高証明を展開してみせる。
天文学的数字。
ため息をついて、端末をデスクに投げ出す。面倒くさそうに少女を眺める。
「で?」
スクリーンが消える。
「セイクルスまで。期限は明後日の12時」
クラウは鼻で笑う。
背後にある大きな窓を振り返る。
窓の向こうには、砂が渦巻くばかりの荒野が広がっている。
「知らないみたいだから教えてやる。〈レーヴ〉で未開発地帯を横切ろうとするのはな、白血球にアカウントをBANされたい自殺志願者だけだ。……ああ、別に授業料はいらないぞ。ただの常識だからな」
少女はうなずいた。
「つまり、あなたには無理ってことね。ありがとう。他を当たるわ」
クラウの口元が引きつる。
ややあって、大人の笑みを浮かべる。
「もうひとつ教えてやるよ。俺たちみたいな小悪党を相手にする時は、言葉に気をつけたほうがいい」
少女もまた笑みを返す。
「お互いにね」
ログアウト。
少女の姿がかき消える。仮想空間から現実世界へと。
クラウは少女がいた場所を見つめながら、
「エル」
応えるように、一匹の黒猫がデスクの上に現れる。
楽しげに尻尾をひと振り。若い女の声で言う。
「ずいぶん面白い子に絡まれたね。相手する気がないなら、最初から入れなきゃ良かったのに」
「許可してない。勝手に入ってきた」
「あらら」
そう言いながら、エルはデスクから飛び降りる。
塵ひとつない床を行ったり来たりしながら、
「いまログ見たけど、ダミーアカウントですらないみたいね。この短時間で痕跡を完ぺきに消すなんて、そんなことできるのかな? もしかすると……最初から実在してなかったりして」
デスクにスクリーンを展開する。
めちゃくちゃなスピードでコンソールを叩く。
「馬鹿馬鹿しい。脳みそのない幽霊が〈レーヴ〉にアクセスできるかよ」
言いながら、滝のように流れる文字を目で追う。
少女との先程のやり取りが、0と1に分解されて再現される。
エルが肘掛けに飛び乗ってきて、一緒になってスクリーンを見つめた。
やがて、ぴたりと手を止める。
憎々しげに舌打ちし、
「そんなこったろうと思った」
どれどれ、という感じでエルが覗き込む。
素人はもちろん、一流のプロですら見落としそうなほど巧妙なやり方で、オフィスとはまったく別の座標が仕込まれている。
「ここが次の面接会場ってわけだ」
エルがクラウを見上げる。目が笑っている。
「で、行くの? 行かないの?」
クラウは座標をダウンロードし、スクリーンを消去する。
目を閉じ、ひとつ息を吐いて、
「ちょっくらおめかししないとな」
エルは首をかしげ、
「あら意外。やっとお金の大切さがわかった?」
「お前と一緒にすんなよ」
そう言って、乱暴にコンソールを押しのけて立ち上がる。
窓の外に広がる荒野を一瞥する。
エルのほうに向き直り、余裕ぶった笑みを浮かべて言う。
「俺はな、ああいうクソガキが大嫌いなんだ」
ログアウト。
幻想砂漠(仮題)の返信 (No: 2)
投稿日時:
読みました。
スピード感はあると思うんですが、読者にとって初見の単語は流石に解説が居るかも。レーヴがVRMMOであること、セイクルスが場所の名前であること、未開発大陸とは何か、あたり。
あと、『白血球』という言葉が一般的過ぎるので、せめて当て字で『白血球(監視プログラム)』って書くとかした方が良いかな。
後半のクラウとエルの会話のシーン、『一つの台詞+一つのモーション』って言うのがずっと交互に入る構造になっていて、ちょっと短調すぎます。
もう少しメリハリがあった方が良いかも。まあ、俺も上手く出来ないけど。
ちょっと思い付きで、『俺だったらこうする』版を作ってみました。参考までに。
ピクセルで構成された荒野を、データの風が吹き抜けていく。
《大陸》と呼ばれる広大なマップの端のまた端、何にもないような荒野にポツンと経つ小さな事務所の扉が今、開かれた。
「腕の良い運び屋を探してるんだけど」
入ってくるなり、少女はそう言った。
ステータスバーに表示されているのは『アリス』という名前のみ。ガキらしい口調に反して情報管理はしっかりしてやがるな。内心で考えつつ、クラウは皮肉で返す。。
「こっちが探してるのは依頼人だ。迷子じゃなくてな」
スクリーンの起動音。
クラウが顔を上げると、少女は無言のまま、目の前にバンクコイン(ゲーム内通貨)の残高証明を展開してみせる。
「おいおい、何の冗談ですかっての。それともアレ? どこぞの石油王が変声機(ボイチェン)まで使って美少女ロールプレイですか?」
嫌味を言いつつ、眺めていた端末をデスクに投げ出す。面倒そうながらも、真っ直ぐに少女を見つめる。
「で?」
クラウの態度が気に食わないのか、アリスはスクリーンを消して、端的な言葉だけで目的を述べる。
「セイクルスまで。期限は明後日の12時」
クラウは鼻で笑った。ここからセイクルスまでの距離もそうだが、問題はその時間設定だ。確実に大陸を横断するハメになる。海路ならまだしも、横断はヤバイ。
「知らないみたいだから教えてやる。〈レーヴ〉で未開発大陸を横切ろうとするのはな、監視プログラム(ハッケッキュー)に不正アカウント扱いでBANされたい自殺志願者と犯罪者(レッド)ユーザーに有り金スラれたいマゾヒストだけだ。……ああ、別に授業料はいらないぞ。ただの常識だからな」
「つまり、あなたには無理ってことね。ありがとう。他を当たるわ」
馬鹿にしたような言い様には、馬鹿にしたような返しが戻って来る。クラウの口元が引きつった。
だが、こっちは大人だ。すぐ余裕を取り戻してニッコリと笑みを浮かべる。
「もうひとつ教えてやるよ。俺たちみたいな小悪党を相手にする時は、言葉に気をつけたほうがいい」
「お互いにね」
向こうもまた嫌味に笑顔で返し、ログアウト。
少女の姿が現実空間へとかき消えると同時、クラウは小さく呟いた。
「エル」
「随分面白い目に遭ったみたいね」
入れ替わりにログインしたのか、それともステルス迷彩でも羽織っていたのか。若い女の声と共に一匹の黒猫がデスクの上に現れる。
「相手する気がないなら、最初から入れなきゃ良かったのに」
「許可してない。勝手に入ってきた」
「あらら」
そう言いながら、エルはデスクから飛び降りる。
塵ひとつない床を行ったり来たりしながら、
「いまログ見たけど、ダミーアカウントですらないみたいね。この短時間で痕跡を完ぺきに消すなんて、そんなことできるのかな? もしかすると……最初から実在してなかったりして」
「はぐらかすなよ。どうせ答えぐらい知ってるんだろう?」
「いえいえ、そうでもないわよ。私は消すのが専門だもの。直感的に見える事ならともかく、テクノロジーはそっちの専門。でしょ?」
返事はせず、クラウはデスクにスクリーンを展開する。
タタタタタタタン。めちゃくちゃなスピードでコンソールを叩いた。
「馬鹿馬鹿しい。脳みそのない幽霊が〈レーヴ〉にアクセスできるかよ」
滝のように流れる文字を目で追う。
少女との先程のやり取りが、0と1に分解されて再現された。
「ほーら。見えて来たぞ……」
エルが肘掛けに飛び乗ってきて、一緒になってスクリーンを見つめた。
やがて、ぴたりと手を止める。
タン!
「チッ。どーせ、そんなこったろうと思ってた」
どれどれ、という感じでエルが覗き込む。
素人はもちろん、一流のプロですら見落としそうなほど巧妙なやり方で、オフィスとはまったく別の座標が仕込まれていた。たかだか数十文字の、会話の中に。
「ここが次の面接会場ってわけだ」
「……で、行くの? 行かないの?」
クラウは座標をダウンロードし、スクリーンを消去する。
「分かってて言ってるだろ?」
「ええ、まあ。キーボードを叩く指が楽しそうだったもの。でも意外ね。こういうの普段なら嫌がるじゃない?」
「……おう、ちょっと思う所あってな」
エルは首をかしげ、ネコらしく後ろ足で首元を掻いた。
「あら意外。やっとお金の大切さがわかった?」
「お前と一緒にすんなよ」
そう言って、乱暴にコンソールを押しのけて立ち上がる。
窓の外に広がる荒野を一瞥する。
エルのほうに向き直り、余裕ぶった笑みを浮かべて言う。
「俺はな、ああいうクソガキが大嫌いなんだ」
ログアウト。
長所。良かった点
展開の速さは良かったと思います。
ミステリアスさと前のめりな感じが同居していて、かなりいい雰囲気でした。
良かった要素
ストーリー
幻想砂漠(仮題)の返信の返信 (No: 3)
投稿日時:
大野知人様
ありがとうございます。
とりあえず最低限の描写、キャラクターの行動と台詞以外をすべて排除してみました。冷静になって読み返してみると、小説というか中途半端な脚本ですね。
いっそ脚本形式で最後まで書き切って、そこから小説の形に翻訳するというのも、二度手間ではありますが、私にとっては良い練習になりそうです。
設定の解説について、了解しました。初見だとミステリアスを通り越して???な会話になってそうですね。
後半のテンポというのでしょうか。難しいです。ここまで徹底的に文体を見直す機会もなかったので、これを機に勉強します。
膨らませ方も参考になりました。ありがとうございます。自分が書いたシーンを他の人の文体で読むのってちょっと楽しいですね。確かに知っているはずなのにまるで見覚えがない、久しぶりの親戚に会うような感覚です。
ありがとうございました。
それでは。
幻想砂漠(仮題)の返信 (No: 4)
投稿日時:
せっかくなので、先に頂いたご指摘を踏まえつつ、もう少し小説っぽく書いたものを。
相変わらず勢い任せの文体ですが、いったん脚本風に起こしたことで、うっとうしさが多少は軽減された……ような気がします。気のせいかもしれません。
最低限の調度しかない、整然としたオフィス。
革張りの椅子に深く沈み込み、クラウはいかにもやる気のない様子で、手元の端末をいじっている。
ふと誰かの視線を感じて、顔を上げる。
入室を許可した覚えもなければ、見たこともない少女が目の前にいる。
「腕の良い運び屋を探してるんだけど」
いかにも良いとこのお嬢様。〈レーヴ〉風の活発なパンツスタイル。
にこりともせず、深々と青い瞳でクラウを見つめている。
ちょっとしたホラーである。
が、裏稼業はビビったら負けだ。
人差し指でさりげなくデスクを二回叩いて、相方を呼び出す。
つとめて何事もなかったふうを装って、手元の作業に戻る。
「こっちが探してるのは依頼人だ。迷子じゃなくてな」
スクリーンの起動音。
再び顔を上げたクラウの目と鼻の先で、シティ・バンクの残高証明が展開される。
わざわざ数えるのも億劫になりそうな、天文学的数字の羅列。
名義人は、空欄。一般市民からすれば縁のない、クラウからすれば見飽きた、大なり小なりの犯罪者御用達の裏口座。
ため息をひとつ。端末をデスクに投げ出し、面倒くさそうに少女を見やる。
「で?」
スクリーンが消える。
「セイクルスまで。期限は明後日の12時」
大陸の向こう側にある、海を望む大都市だ。
鼻で笑ってやった。
椅子を回して、背後にある大きな窓を振り返る。
そこには砂が渦巻くばかりの荒野が広がっている。
「知らないみたいだから、教えてやる。〈レーヴ〉で未開拓領域を横切ろうとするのはな、白血球にアカウントをBANされたい自殺志願者だけだ。……ああ、別に授業料はいらない。ただの常識だからな」
少女はうなずく。
「あなたには無理ってことね。ありがとう。他をあたるわ」
クラウの口元が引きつる。
が、すぐに余裕ぶった大人の笑みを浮かべ、
「もうひとつだけ教えてやるよ。俺たちみたいな小悪党を相手にする時は、言葉に気をつけたほうがいい」
少女はクソ生意気な子供の笑みで返した。
「そっちもね」
ログアウト。
少女の姿がかき消える。
クラウは少女のいた空間を憎々しげに眺めながら、
「エル」
応えるように、一匹の黒猫がデスクの上に現れる。
楽しげに尻尾をひと振り。若い女の声で言う。
「ずいぶん面白い子に絡まれたね。相手する気がないなら、最初から入れなきゃ良かったのに」
「許可してない。勝手に入ってきた」
「あらら」
エルはデスクから飛び降りる。
塵ひとつない床を行ったり来たりしながら、
「ごめんだけど、捕まえられなかった。というより……なんだろ、これ。ログ見るかぎりね、ダミーアカウントですらないみたい。でも、こんな完ぺきに痕跡を消すなんて、私でも……。あの子、ほんとに実在してるのかな?」
舌打ち。デスク上にスクリーンを展開し、めちゃくちゃなスピードでコンソールを叩きながら、
「馬鹿馬鹿しい。脳みそのない幽霊が〈レーヴ〉にアクセスできるかよ」
先程の少女とのやり取りを、0と1に分解して再現する。
滝のように流れる文字を目で追う。
エルが肘掛けに飛び乗り、一緒になってスクリーンを見つめた。
やがて、クラウの手がぴたりと止まる。
忌々しげに、
「そんなこったろうと思った」
どれどれ、とエルが覗き込む。
まるっきり暗号めいた文字列の中に、それを見つける。
素人はもちろん、一流のプロですら見落としそうなほど巧妙なやり方で仕込まれた、砂漠の街の展望台を指し示す座標。
「次の面接会場ってわけだ」
エルはクラウを見上げる。目が笑っている。
「で、行くの? 行かないの?」
クラウは物も言わず、座標をダウンロードし、スクリーンを消去する。
目を閉じて、深々と息を吐く。
ややあって、
「ちょっくらおめかししないとな」
そう言った。コンソールを押しのけて立ち上がり、そのまま出ていくのかと思いきや、窓のほうに歩み寄って、地平の彼方まで続く荒野を眺める。
第二の現実を謳う、人々の夢と夢を繋いだ仮想空間〈レーヴ〉。
クラウが自分好みに設計した、快適そのもののオフィスとは訳が違う。
そう。
窓の外に広がる砂が渦巻くばかりの荒野は、開発がクラッカー対策に放った白血球プログラムや、エラーまみれの悪夢の残滓がひしめく、前人未踏の未開拓領域だ。
エルは少し首を傾げ、
「あら意外。やっとお金の大切さがわかった?」
「お前と一緒にすんな」
振り返る。
憤懣やる方なしという表情には、ほんのひと欠片だけ、どこか期待するような色が混ざっている。
「取引に乗るかどうかは俺が決める。いくら積まれようが関係ない。が、それはそれとして……」
再び荒野に視線を戻して、口の端を釣り上げる。
「クソガキにはお仕置きが必要だよな?」
ログアウト。
幻想砂漠(仮題)の返信の返信 (No: 5)
投稿日時:
設定などが程よく読み込める、いいプロローグになって居ると思います。
……と言っても、ここまで俺の意見しか書き込まれていないので他の人の意見も欲しい所ですが。
個人的に難を挙げるなら、『動きに音が無いな』というのと、『韻を踏んでるわけでもないのに同じ音が連続する部分があるな』っていう二点。
前者はそのまんまですが。このプロローグ、セリフ以外に『音』の描写が無いんですよ。猫のアバターを使っているクラウの動きでも良いし、アリスの衣装がひらめいたり、衣擦れを起こしてもいい。或いはクラウがキーボードを叩く音、それから《レーヴ》そのもののSEとか。
なんでもいいんですが、『音が無い』という事に妙な無機物感を感じました。
後者については、複数個所有るので自分で探してほしいんですが。『一般市民からすれば縁のない、クラウからすれば見飽きた』のように、意味が通じるんだけど音感的に少し面白くないというか……。
『一般人からすれば縁のない、しかしクラウには見飽きた』
『一般人には縁遠い、クラウからすれば見飽きた』
でも良いんですが、複数の事を並列で書くときに主語を変えただけで『似た形』になっている文章がチョイチョイ見受けられます。
感覚的な物で説明が難しいんですが、ちょっとテンポが悪いように感じました。
以上二点。参考になれば幸いです。
幻想砂漠(仮題)の返信の返信の返信 (No: 6)
投稿日時:
大野様
ありがとうございます。
いや、めちゃくちゃ参考になります。
自分が読者ならこれぐらいかなーという情報量にしてみましたが、大野様は(もちろん私も)既に設定を知っているので何とも言えないですね……。当然好みによるのでしょうが、もう少し親切でも良いのかもしれません。説明抜きの造語も適当に入れましたが、SFファンゆえに自分の許容範囲がズレているのは自覚があるので、今回はあまり冒険するのはやめようかなと思います。
言われてみると、音に限らず質感がほぼないんですね。「リアルな」仮想世界という設定であるにも関わらず。
無機質感を出すために特定の場面で狙ってやるならともかく、確かに不自然な感じがします。
非常に良い視点をいただきました。ありがとうございます。
音の連続は奇妙な癖ですね。他にも自覚してるだけでもたくさんありますが。
手癖で書くとそうなるので、今回はちょっと意識してみます。
で、そもそもシーン自体が淡白でクソつまんないですね……。
文体にこだわる前に、まずは読めるストーリーにしようと思います。
お付き合いいただき感謝します。
ぜひ、引き続きご指導いただければ幸いです。
幻想砂漠(仮題)の返信 (No: 7)
投稿日時:
ストーリーのほうを先に進めなきゃと思いつつ、せっかく良いアドバイスをいただいたのに放置するのもあれなので。意識した点は以下のとおりです。
・音を含め、もう少しリアルな質感を出すように
・導入なので、キャラクターの性格と背景をもう少し明らかに
・主人公がいずれ赴くであろう場所のヤバさを強調して、今後のストーリーに期待感を持たせる
・ひとつひとつのやり取りやアクションが味気なかったので、ちょっと増量
個人的な好みで言えばもっと書き込んでもいいのですが、今回はさくさくシーンを進めて、とにかくストーリーを追ってもらいたいので、これぐらいが限度でしょうか。
特にシーンのテンポや長さが適切かどうか(好みにもよると思うので、主観的な感想でも構いません)、ご意見をいただけるとありがたいです。
もちろん他のアドバイスもお待ちしています。
ひな型から余分を削ぎ落とした、整然としたオフィス。
革張りの椅子に深く沈み込み、クラウはいかにもやる気のない様子で、手元の端末をいじっている。
ふと誰かの視線を感じて、顔を上げる。
入室を許可した覚えもなければ、見たこともない少女が目の前にいる。
「腕の良い運び屋を探してるんだけど」
いかにも良いとこのお嬢様。〈レーヴ〉風の活発なパンツスタイル。
にこりともせず、深々と青い瞳でクラウを見つめている。
ちょっとしたホラーである。
が、裏稼業はビビったら負けだ。
人差し指でさりげなくデスクを二回叩く。こつ、こつ。
つとめて何事もなかったふうを装って、手元の作業に戻る。
「こっちが探してるのは依頼人だ。迷子じゃなくてな」
スクリーンの起動音。
再び顔を上げたクラウの目と鼻の先で、シティ・バンクの残高証明が展開されていく。
わざわざ数えるのも億劫になりそうな、天文学的数字の羅列。
名義人は、空欄。一般市民には縁のない、クラウからすれば見飽きた、大なり小なりの犯罪者御用達の裏口座。
ため息をひとつ。端末をデスクの上に投げ出し、面倒くさそうに少女を見やる。
「で?」
スクリーンが消える。
「セイクルスまで。期限は明後日の12時」
大陸の向こう側にある、海を望む大都市だ。
「北ルートなら5日、南ルートなら一週間。うちより早いところを見つけたら逆に教えてくれ」
少女は首を傾げる。
「なんでわざわざ遠回りするの?」
クラウは小馬鹿にしたように笑う。
「なんで?」
ぐるりと椅子を回して、背後にある大きな窓を振り返る。
そこに広がるのは砂が渦巻くばかりの荒野。悪意ある怪物のように蠢く。すすり泣きにも似た風切り音が、ガラス越しにかすかに聞こえてくる。
「どうして未開発領域があんな異様な風景に設定されてるか、知ってるか? まともな感性のやつが、ちゃんと二の足を踏むようにさ。あんなとこに踏み込んだら、二度と帰ってこれるわけがない……ってな」
少女はため息をつく。
「要するに、どういうこと?」
「〈レーヴ〉で未開発領域を横断しようなんてのは、白血球にアカウントをBANされたい自殺志願者か、不整合データに脳みそをぐちゃぐちゃにされたい変態だけだってことだ。……授業料はいらないぞ。ただの常識だからな」
少女はちょっと考えて、うなずいた。
「あなたには無理ってことね。他をあたるわ」
クラウの口元が引きつる。
が、すぐに余裕ぶった大人の笑みを浮かべ、
「まあ待て。とりあえず、理由を話してみろよ。俺だって鬼じゃない、次第によっちゃ相談ぐらいは乗ってやる」
少女がにやりとする。
「できないんでしょ? 悪いけど、私も暇じゃないの」
ログアウト。
少女の姿がかき消える。
ほっぺたを引っ叩きたくなるような、生意気な笑みの余韻を残して。
舌打ち。しばし中空を睨みつけ、
「エル」
じわりと滲み出すように、一匹の黒猫がデスクの上に現れる。
普通はもっと部屋の隅とかに隠れてるもんだろ、とクラウは呆れる。とはいえ、その大胆さに正当な実力の裏付けがあることは、相方としてもちろん知っている。
黒猫は楽しげに尻尾をひと振り。若い女の声で言う。
「ずいぶん面白い子に絡まれたね。相手する気がないなら、最初から入れなきゃ良かったのに」
「許可してない。勝手に入ってきた」
「あらら」
エルはひょいとデスクから飛び降りる。
足音もなく塵ひとつない床を行ったり来たりしながら、
「ごめんだけど、捕まえられなかった。というより……なんだろ、これ。ログ見るかぎりね、ダミーアカウントですらないみたい。でも、こんな完ぺきに痕跡を消すなんて、私でも……。あの子、ほんとに実在してるのかな?」
クラウはデスク上にスクリーンを展開する。
苛立たしげな音を立てて、めちゃくちゃなスピードでコンソールを叩く。
「馬鹿馬鹿しい。幽霊が〈レーヴ〉にアクセスできるかよ」
入退室ログ。
確かに、ゲストアカウントの記録はない。ざっと見たところ、不審な改ざんの痕跡もない。
エルが肘掛けに飛び乗ってきて、一緒になってスクリーンを見つめる。
手のほうは忙しなく動かし続けながら、
「そういやお前、やけに来るのに時間かかったな。かつあげでもしてたのか?」
トラフィックの監視ツールに質問を送る。
技術者資格を剥奪される前、まだ〈レーヴ〉の開発にいた頃に、白血球のソースコードをこっそりパクってきて流用したものだ。
「あたらないでよ。私はあなたの召使いじゃないし、追跡は専門外だし、頭を捻るのはそっちの仕事」
「さいですか」
回答。少女が現れる前と後で、不自然な通信量の変化はない。
クラウはぎしりと背もたれに寄りかかり、ため息をつく。
なるほど、彼女は本当に幽霊なのかもしれない。
ふと思いついて、自身の会話ログにコマンドを送ってみる。
0と1に分解された少女とのやりとりが、スクリーン上で再現される。
滝のように流れる文字を目で追う。
それほど期待していたわけではない。
が、その手がぴたりと止まった。
スクロールを逆転。
一時停止。
「……舐めくさってんな」
どれどれ、とエルが覗き込む。
まるっきり暗号めいた文字列の中に、それを見つける。
素人はもちろん、一流のプロですら見落としそうなほど巧妙なやり方で仕込まれた、砂漠の街の展望台を指し示す座標。
「次の面接会場ってわけだ」
エルはクラウを見上げる。目が笑っている。
「で、行くの? 行かないの?」
クラウは物も言わず、座標をダウンロードし、スクリーンを消去する。
目を閉じて、深々と息を吐く。
ややあって、
「ちょっくらおめかしするか」
そう言った。コンソールを押しのけて立ち上がり、そのまま出ていくのかと思いきや、窓のほうに歩み寄って、地平の彼方まで続く荒野を眺める。
第二の現実を謳う、人々の夢と夢を繋いだ仮想空間〈レーヴ〉。
クラウが自分好みに設計した、快適そのもののオフィスとは訳が違う。
そう。
窓の外に広がる砂が渦巻くばかりの荒野は、開発がクラッカー対策に放った白血球プログラムや、エラーまみれの悪夢の残滓がひしめく、前人未踏の未開発領域だ。
エルは少し首を傾げ、
「あら意外。やっとお金の大切さがわかった?」
「お前と一緒にすんな」
振り返る。
憤懣やる方なしという表情には、どこか期待するような色も混ざっている。
「乗るかどうかは俺が決める。いくら積まれようが関係ない。が、それはそれとして……」
再び荒野に視線を戻して、口の端を釣り上げる。
「クソガキにはお仕置きが必要だよな」
ログアウト。
幻想砂漠(仮題)の返信の返信 (No: 8)
投稿日時:
プロットの変更に伴い、全面的に改稿しました。
引き続き、アドバイスをいただけるとありがたいです。
==
電脳空間レーヴ。人々の夢と夢を繋いだネットワーク上に創られるのは、誰もが自由を楽しめる世界のはずだった。
※
「運び屋を探してるんだけど」
入ってくるなり、少女はそう言った。
ひな形から余分を削ぎ落とした整然としたオフィス。真ん中に置かれた幅広のデスク。
皮張りの椅子に沈み込んでいたクラウは面倒くさそうに顔を上げ、風変わりな闖入者を観察する。
ゆるやかなウェーブのかかった赤髪、いかにもお嬢様然とした雰囲気。
レーヴで流行りの活発なパンツスタイルは良家の子女には相応しくないかもしれないが、少女の勝気な瞳を見れば、それはそれで似合っていると言えなくもない。
すぐに興味を失って、手元の端末に目を落とす。
「こっちが探してるのは依頼人だ。迷子じゃなくてな」
スクリーンの起動音。
クラウの目と鼻の先に、シティ・バンクの預金通帳が展開されていく。
桁を数えるのも億劫になりそうな天文学的残高。
しかしそれ以上にクラウの目を引いたのは、左上に表示されている名義人の欄だった。
アリス=シャフト。
偶然ではないだろう。忘れもしない。シャフト社といえば、レーヴの開発に初期から関わっていて、今や世界有数の規模に成長した複合企業だ。
「それで?」
言いながら、デスクの引き出しに手が伸びそうになる。
そこには文房具でもグラフ用紙でもない、装填済みの五十口径が鎮座している。前の職場にいたときに詳しい同僚に聞きながら設計したもので、威力は折り紙つき。使いどころは難しいが、たとえば至近距離で誰かの頭を吹っ飛ばしたい気分になったときにはちょっと便利かもしれない。
少女――アリスは落ち着き払っている。淡々と依頼内容を告げる。
「セイクルスまで。期限は明後日の正午」
大陸の反対側にある、海を望む大都市だ。
「北ルートなら5日、南ルートなら一週間。うちより早いところを見つけたら逆に教えてくれ」
アリスは首を傾げる。その視線はクラウの背後に向けられている。
「なんでわざわざ遠回りするの?」
クラウはせせら笑う。
「なんで?」
椅子を回して、大きな窓を振り返る。
そこに広がるのは砂が渦巻くばかりの荒野だ。すすり泣きにも似た風切り音が、ガラス越しにかすかに聞こえてくる。
「どうして未開発領域がああいう風景に設定されてるか、知ってるか? まともな感性のやつが、ちゃんと二の足を踏むようにさ。あんな場所に入ったら、無事に出てこれるわけがない……ってな」
そう言って、アリスのほうを振り返る。
アリスは訝しげに眉をひそめる。
「よくわかんないけど。あなたには無理ってこと? なら他を当たるわ」
ひとつめ。生意気な少女の顔を胡乱げに眺めながら、そっと引き出しの把手に触れる。仏の顔も三度までだ。あとふたつ舐めた口を利いたら脳みそをぶち撒けてやろう、と心に決める。
どうせ夢の中だ。本当に死ぬわけではないのだ。ショックは本物だし、トラウマぐらいは残るかもしれないが。
「とりあえず理由を話してみろよ。相談ぐらいは乗ってやらんでもない」
「できないんでしょ? 私も暇じゃないの」
ふたつめ。
「できないとは言ってない。だが、うちの方針で客は選ぶんだ」
「報酬の話?」
クラウは鼻で笑う。
「何でも金で解決できると思ってるなら、さすがとしか言いようがない英才教育だな」
アリスはクラウをじっと見つめ、
「お金だけじゃないとしたら?」
「あ?」
「腕は一流だけど頑固だって聞いてたから。調べさせてもらったの、あなたの経歴。私はあんまり知らないけど、ワールドメイカー……だっけ? レーヴの開発部にいたのよね。で、不祥事で追い出された。そうでしょ?」
みっつめ、どころの騒ぎではなかった。
ワールドメイカー。今や世界中の人々が日常的に利用するようになったレーヴの基礎を築き上げ、その発展を担っている公認の技術者たち。かつてクラウが理想のために身を粉にして働いていた場所。
いきなり現れて、他人の過去に土足で踏み入る傲慢さ。ついでに鼻持ちならない大企業の娘となれば、気持ちとしては十回殺してもまだ足りないぐらいだ。
「失せろクソガキ。さもないと」
半ば本気で引き出しを開け、
「開発部に戻れるようにしてあげる。それが今回の報酬」
その手が止まった。引き出しを元に戻す。
「……なんだって?」
アリスは言う。
「もちろん、私自身に権限があるわけじゃないけど。それができる人に紹介してあげるわ。あなたが何をやらかしたのか知らないけど、多分どうとでもなるんじゃない?」
もちろんそのとおりだ。シャフト社の威光が通用しない場所など、現実世界にもレーヴ上にもそうそうない。だが、
「ガキの言うことなんて真に受けると思うか?」
アリスは肩をすくめる。
「信じるのも信じないのもあなたの勝手。これは純粋な取引だもの」
舌打ち。純粋な取引などこの世に存在しない、とクラウは思う。そこにあるのは打算と妥協と、歴然とした力関係だけだ。
「……エル」
クラウの呼びかけに応えて、デスクの真ん中の空気が揺めいた。しなやかな黒猫が滲み出るように姿を表す。完璧な迷彩。
「わ」
アリスが目を丸くする。先ほどまでとは打って変わって、年相応に隙だらけの表情を見せる。
黒猫――エルは尻尾をひと振り、広々としたデスクをとことこ横切って、端っこで置物のように丸くなる。顔だけクラウのほうに向け、
「お金がもらえるなら、私はどっちでも」
若い女の声でそう言うと、あとは任せたとばかりに目を閉じてしまう。
ため息をひとつ。
そんなふうに割り切った態度で物事を見ることができたらどんなに楽だろう、とクラウは思う。
ふとアリスのほうを見やれば、まだポカンとしてエルを眺めている。
なんだか急に毒気を抜かれてしまった。
「おい」
アリスが振り向く。
「さっきの話、本当だろうな?」
気を取り直したように、
「……もちろん。約束は守るわ」
クラウは背もたれに深々と身を沈めた。椅子を半分回して、窓の外に視線を向ける。
地平の彼方まで続く荒野。
目的地の街との間に横たわっているのは、ただの砂が渦巻くばかりの荒野ではない。開発部がクラッカー対策に放った白血球プログラムや、エラーまみれの誰かの悪夢の残滓がひしめく、前人未踏の未開発領域だ。
クラウはしばらく無言で荒野を眺め、悩みに悩んだ末に、ようやくアリスに向き直る。
まるで物怖じしない少女を見返して、投げ出すように言った。
「まずは打ち合わせから。契約の話はそのあとだ」
幻想砂漠(仮題)の返信の返信の返信 (No: 9)
投稿日時:
まず最初に。あんま俺の意見ばっかり反映された状態になるのは良くないと思うので、これ以降このスレッドへの返信は控えます。
その上で言うのもアレなんですが、正直言うと『プロットをどう変更したかわからないから、意見出来る事が少ない』というのが現状ですかね。
設定、キャラともに分かりやすく、テンポも良いので『続きが気になる』良いオープニングだったと思います。
一方、『アリスがシャフト社の名前をかたっている可能性が無い/シャフトの名前を名乗ることに制限があるという描写が無い』事から、『クラウはどうしてアリスを信用したのかな?』と思う部分も。
また、拳銃の実効性(仮想空間においてどれくらいの効力を持つか)や『そもそも仮想空間内に『距離』の概念があるのか』などの設定説明がやや雑であるように感じました。
ただ、こちらの設定説明についてはオープニング以外の場所で紹介してもいいので、参考までに。
総評として言うと、かなり出来の良いプロローグだったと思います。
この調子で、執筆頑張ってください。
幻想砂漠(仮題)の返信の返信の返信の返信 (No: 11)
投稿日時:
大野様
ありがとうございます。
> その上で言うのもアレなんですが、正直言うと『プロットをどう変更したかわからないから、意見出来る事が少ない』というのが現状ですかね。
プロットと絡めて考えるとオープニングは本当に難しいですね。考えないといけないことが多すぎて。あまり情報を詰め込んでも仕方ないので、
現時点では
・レーヴという電脳世界の話であること
・主人公の職業と過去の匂わせ
・物語の目的(大陸横断)
だけ確実に押さえて、あとはキャラクターや関係性に費やせたらなと思っています。
>一方、『アリスがシャフト社の名前をかたっている可能性が無い/シャフトの名前を名乗ることに制限があるという描写が無い』事から、『クラウはどうしてアリスを信用したのかな?』と思う部分も。
同じように感じたので、今回のラストでは主人公は最終的な判断を保留にしました。打ち合わせで気を引いている間に相方に裏を取らせる展開があとに続きますが、分かりにくいですね。
「主人公が依頼を引き受けた」で終わってしまうと(読者にそう受け取られてしまうと)流れが途切れてしまうので、上手くつながるようにセリフを変えるか、地の文を入れようと思います。
その他細かい設定についても、どこでどう出すかいろいろ考えてみたいと思います。
大野様をはじめ、たくさんの方からアドバイスをいただくことができたので、そろそろ執筆に専念しようかと思います。
ありがとうございました。
幻想砂漠(仮題)の返信の返信の返信 (No: 10)
投稿日時:
お疲れ様です!
私もプロットをどう変更したのか分からないから、残念ながら踏み込んだ発言はできない感じですね。
でも、全体的にテンポよく、分かりやすく書けていると思いました。
電子空間での距離感について他の方がご指摘されていましたが、私はこの場面で「電子空間でも距離の概念がある」前提で話していると察することができたので気にはなりませんでした。なので、ここの場面ではなく後で詳しく踏み込んだ説明があるといいのでは?って思いました。
ただ、「どうせ夢の中だ。本当に死ぬわけではないのだ。ショックは本物だし、トラウマぐらいは残るかもしれないが。」とあるので、「前人未踏の未開発領域だ。」と危険を語られても、「本当に死ぬわけじゃない」という設定があるため、どうしても危機感が弱まってしまうかなって思いました。なので、死んだら「ペナルティーで残高が減る」「死亡情報が管理者に届くので、解雇された人間がレーヴにいるとバレやすくなる」みたいな主人公にとって致命的な何かがあると、ハラドキが維持されやすいかもしれないですね。
あと、若干ですが文章で一部気になる点がありました。たぶんテンポを意識して主語をわざとカットしているのだと思いますが、一瞬誰のことを説明しているのか戸惑う箇所がいくつかありました。
例えばですが、「すぐに興味を失って、手元の端末に目を落とす。」の「すぐに興味を失って」の部分ですが、それまで少女のことを主人公が話していたので、「すぐに興味を失って」の主語が一瞬少女のことかと私は勘違いしました。流れで主人公のことだと気づきはしたのですが、読んでいる最中に行ったり戻ったりはあまりしたくはなかったかなと。
たぶん、文章の感性が柊木様のほうが鋭いので、わずかな違いに気づきやすいから主語がなくても気づけると思うのですが、私みたいに文章に対して大雑把な感性だと、一瞬迷いやすいかな?って思いました。なので書いてあった方が分かりやすくて良かったかな?って個人的に思いました。
あくまで個人の意見なので、合わない場合は流してくださいね。
何か参考になれば幸いです。
幻想砂漠(仮題)の返信の返信の返信の返信 (No: 12)
投稿日時:
ふじたにかなめ様
こちらにも返信いただきありがとうございます。
> なので、ここの場面ではなく後で詳しく踏み込んだ説明があるといいのでは?って思いました。
> 「前人未踏の未開発領域だ。」と危険を語られても、「本当に死ぬわけじゃない」という設定があるため、どうしても危機感が弱まってしまうかなって思いました。
今一番悩んでいるのがレーヴの仕様をどのタイミングでどこまで明らかにするかで、現状だとこの直後に、基本的な設定と大陸横断の危険性(ペナルティ)を主人公が説明する場面になります。
が、ご指摘の部分は確かにわざとらしくて浮いている感じがしますし、そもそもオープニングの段階で危機感が削がれているのは問題ですよね。少し考え直してみます。
主語の欠落に関してはただの手癖で、おっしゃる通り動きがわかりにくくなっていると思うので、探し出して直そうと思います。ありがとうございます。
プロットのほうでいただいたアドバイスも参考にしつつ、引き続き執筆を進めたいと思います。
ありがとうございました。
幻想砂漠(仮題)の返信 (No: 13)
投稿日時:
私は正直プロットなどなどは知りませんので、プロローグのみを見ての批評というか感想を書かせて頂きます
全体として、この勢いが死なない限りにおいてはとても面白そうな作品だな、とも思います。『ライトジーンの遺産』などが脳裏に浮かんでくる、面白そうなサイバーパンクモノとしての風格を持っていると思います。
その上で、気になることを幾つか。
①電脳空間内で物理的な距離や障壁を扱っていること
恐らく、この話はサイバーパンク系電脳世界モノの一種だと思うのですが、その中で明らかに物理的な距離や荒野が言われているのはどうにも違和感があります。この現実世界に重ねられる形で存在しているのなら、まだそれも理解できるのですが、どうにもそういう訳ではなく、現実世界と別に電脳世界が設定されているように見えます。もしそうだとしたら、そこにある距離は、『北回りルート』のような言葉で表現されるものとは違う道や距離なんじゃないかと思います。また、『未開発領域』に風景が設定されていることも違和感があります。本当に『未開発』なのであれば、そのような分かりやすい風景が設定されているとも思えません。また、荒野はそこまで人が通れない場所でもないでしょう。寧ろ、お宝が隠れているなどで良く人が入りそうな印象があります。逆に、未開発とされているだけなら、開発に関わっていた主人公が知らないとも思えません
②あまりにも発想が現実に寄りすぎている
①と同じですが、判断などがあまりに現実に寄せ過ぎているように感じます。アリスは少女の姿を取っている訳ですが、電脳空間においては姿なんてどうにでもなるので大した意味はありません。だと言うのにそれをもってガキと全員が認識しているのは違和感があります。また、リアルでは五十口径もあれば頭を吹っ飛ばすのには十分ですが、電脳空間内ではやはりその姿に大した意味は無いです。アリスが『シャフト』の一員であることを最初から認識しているのに、そのシャフトのシステムで対抗しようとしているのも違和感があります
③アリスの知識量
『シャフト』は『レーヴ』に深く関わっている企業なのでしょう。そのトップ周りの一員である人物が、『未開発領域』のようなレーヴの常識レベルの事を知らないとは思えません。世間知らずっぽさの演出にも出来ていません。また、主人公の過去を漁れているあたりからして『シャフト』内で冷遇されているために何も知らないと言うふうにも見えません。どうにもチグハグです。
1、2に関してはまとめて言ってしまえば、この邂逅はリアル側でこそなされるべきだと思います。電脳空間内での邂逅はまた違う性質を持っていると思います
3は人物造形に関する問題です。ここはある種アリスがどんな人かの説明にもなる部分ですので、そこで『知らない』行動を取ると、アリス『・シャフト』との噛み合いが悪くなってしまいます。これを私の受け取ったアリス感から直すとしたらこのような感じです
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「どうして未開発領域がああいう風景に設定されてるか、知ってるか? ま「ともな感性のやつが、ちゃんと二の足を踏むように、あんな場所に入ったら、無事に出てこれるわけがないと思わせるため、でしょ?」」
クラウは、発言を奪われ憮然として振り返ると、そこにはしたり顔のアリスがいた。
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もちろんこれでは前後も変えなければなりませんが……。
長所。良かった点
やいのやいのと書いていますが、けしてつまらなそうとは思っていません。寧ろ、面白そう、続きが気になる、と思わせることに成功しているので、上げている問題点も、改めて考えたら思いつく、程度ですので、そこまで気にされなくてもよろしいかと思います
良かった要素
ストーリー 文章
幻想砂漠(仮題)の返信の返信 (No: 14)
投稿日時:
silica様
投稿ありがとうございます。
返信が遅くなり申し訳ありません。
実を言うと、本作は初稿だけ書いて無事お蔵入りとなりました。
理由の一端は、ご指摘いただいたような人物・世界観に関する練り込みの甘さで、設定に振り回されてまともにストーリーを展開できなかったように思います。
反省を踏まえて、現在は極力シンプルなつくりの作品に取り組んでいるところです。
とはいえ、折しもメタバースが世間でも取り沙汰されるようになったこともあり、機を逃さないうちに再挑戦したいテーマではあるので、その際は今回いただいたご指摘もぜひ参考にさせていただこうと思います。
貴重なご意見をありがとうございました。
また機会がありましたらよろしくお願いします。