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海賊の話(仮)

スレ主 s.s 投稿日時:

お久しぶりです。二ヶ月ほど前からプロットを練っていた海賊物のプロローグが出来たのでこちらにて公開しようと思います。
質問したい点は主に二点です。
一つ、読んでいてストレスがないか、途中で切ろうと思わないか。
二つ、物語の冒頭として、読者を引きこめているか、これから始まる冒険にワクワクするか、続きが読みたいか。
です。その他、気になった点があれば言ってください。
よろしくお願いします。

プロローグ

1
「俺は宝を探していた」
 夕日が海原に反射し淡く緑色に光る。
「その宝の名はロストトレジャー」
 甲板には潮の匂いを乗せた風が吹き、帆がはためく。
「俺は大洋を跨ぎ、大陸を旅し、その宝を発見した」
 空は夕暮れ、橙と紫のグラデーションに染まっている。
「ちょうど、あの一番星のような、キラキラと光る宝だった」
 レイシ船長は虚空を指差し言った、その先には確かに宵の明星が煌々と輝いていた。
「しかし、俺はその宝を持ち帰ることなく、きびすを返した。ライチ、なぜだか分かるか?」
 唐突な質問にライチは困惑した。
 レイシ船長は太い腕を組み、爽やかな笑顔で答えを待っている、ライチは頭をフル回転させ解を探す。
 探し求めていた宝を放置するとは意味不明だ。宝があったなら、持ち帰るのが常だろう。しかし、持ち帰らなかった。
 少し考えてから、答えを述べた。
「宝が大きすぎたとか?」
 長い人差し指を左右に、「違う」と返された。ライチは再び考える。
「じゃあ、宝は危険な場所にあったとか、例えば溶岩に浮かぶ岩石の上とか」
 首を横に振り、「それも違う」と返される。ライチは再び考える。
「レイシ船長は宝を持ち帰る気がなかった……とか?」
 弾むような声で、「間違っている」と返ってくる。
 レイシ船長は口角を上げた、恐らくは答えを出しあぐねてる自分の姿を見て、ほくそ笑んでいるのだろう。
「トンチですか? 僕にはそのくらいしか思い浮かびません」
「ライチは音楽の才はあるが、謎解きの才はまったくだな。まぁ、それにしても、この謎はライチには難しかったな」
 レイシ船長の自分を子供扱いするような発言にムッとした。歳は十年近く離れてるとはいえ、自分はもう十五だ。
 ライチは我慢できず訊く。
「答えはなんですか?」
 レイシ船長は一拍おいてから言った。
「答えは……教えない」
 その勿体ぶりに眉間に不機嫌なシワができる。
 途端にその、ロストトレジャーの謎が解きたくなった。
「レイシ船長が教えてくれないなら、その謎は僕が自力で解きます」
「おお、そうか。では約束だ。ライチが謎を無事解くことができれば、ロストトレジャーはお前にやろう」
「わかりました、絶対ですよ」
 いつものよう、レイシ船長はライチの髪をクシャクシャに撫でた。照れ臭いが悪い気はしない。
「しかし、カラスの帰りはえらく遅いな」
「この近くに島でもあるのでしょうか?」
 ライチ達はカラスの帰りを待っていた、カラスは近くの陸に飛んで行く習性がある。カラスが戻ってくれば船の近くに島はない、カラスが戻ってこなければ船の近くに島があることを示している。
 未だ、こんな古風な方法で船の現在地を調べるのはレイシ船長だけだろうとライチは思った。
「となると、今、我々は新世海(しんせかい)の海賊海域周辺にいると言うことか」
 レイシ船長は航海図を広げ、なにかを考えるようにマジマジと見つめている。
「船長、地図が逆ですよ」
「おお、これは失敬」
 照れながら航海図を逆さにする。こんな奴が船長でいいのだろうか? 不安になった、しかし、その不安は霧散し、杞憂に過ぎないとライチは思った。レイシ船長の自身満面の顔を見ているとそういう考えになるのだ。
 この人は原来、無茶苦茶な勇気のみで場を切り抜けてきたような人だ。それは先のロストトレジャーの話を含め、色々な逸話が証明している。
 今回の新世海横断の冒険も、恐らくは順調そのものだろう。
 ライチはレイシ船長のことが好きだ。冒険家として自分を育ててくれたのは彼だからだ。レイシは第二の親と言っても差し支えない。
「そろそろ夜だ! 諸君、ランターンに灯りを灯せ」
 レイシ船長は乗組員に命令した。それと同時に、彼方から爆発音が聞こえる。静かな海には大きすぎる轟音だ。
「なんだ?」
 どよめきが一斉に船上を包んだ、次の瞬間、どこかから飛来した砲弾が、狙ったようにメインマストの根本に着弾、メキメキと音を立て帆柱が折れ、逃げ損ねた少年が下敷きになる。
 一発の砲弾でマストを折るとは、よもや天文学的確率を超え奇跡と等しかった。
「船長! 黒旗! 海賊です!」
 見張りが叫んだ。それによりデッキは混乱が支配する。
 それまで仕事をしていた水夫や仲間たちは叫び、慌てふためいている。かくいうライチも立っているのが精一杯だ。産まれたての小鹿のごとぐ足が震えてやまない。
 皆もこの状況がどれだけ窮地か理解しているのだろう、メインマストを折られた時点で逃げ果せるのは不可能に近い。修理しようも時間が足りない。
 海賊とは戦いのプロだ。移乗攻撃を仕掛けられれば、乗組員のほとんどが水夫のこちらに勝ち目はない。あまつさえ、見張りが発見できないほどの遠距離から狙撃をしたわけで、砲戦もこちらが負けてしまうだろう。
 打つ手無しだ。
 ライチは一縷の希望を瞳に宿し、レイシ船長を見やった。彼はこの場において笑っていた。
「なんだ、ライチ。怖いのか? まぁ、初めはそうかもしれん、だがな、冒険ってのは死地に行くから冒険なんだ。死地に行かない冒険は散歩やピクニックとさして変わらない」
 そう言って、肩をドスンと叩く。ただそれだけだが、少しばかり勇気が湧いてきた。
「諸君! 静まれ、我々の艦に攻撃を仕掛けたのは海賊だ」
 鶴の一声とは正にこのことだろう。レイシ船長の一声でそれまで慌てふためいていた乗組員達は即座に落ち着きを取り戻し、傾注する。
「海賊は金目のものが目当てで船を襲う、あちらさんも無益な血は流したくないだろう。ここは素直に金目のものを差し出して、とっととお引き取り願おうじゃないか。白旗を掲げろ! それと、お前ら一人も死ぬな。これが最も守るべき命令だ!」
 レイシ船長の勇猛な声に、仲間たちの瞳に希望が灯る。乗組員は彼の指示に従い、白旗を掲げる。
「見張り、海賊船はどのくらい離れている」
「大体、五キロほどです」
「そんな遠くから……了解した。諸君、海賊共が来るまでに貴重品を甲板に出しておけ、なに心配することはない、物は港で新しいものを買えばいい、食糧も然りだ」
 皆は貴重品や食糧を甲板に運び出す。
「ライチ、何、ボヤッとしている。俺たちはマストに下敷きになった、少年を助けるぞ」
「は、はい」
 この船は小型だが、それでも船体は充分大きい、そんな大きいものを動かすには莫大なエネルギーが必要だ。そのエネルギーの源とも言える帆を支える柱はそれ相応の重さだった。
 少年は痛みに喘いでいる。
「待ってろ、今助ける」
 レイシ船長は袖をまくり上げる、胴体から聳える筋骨隆々なその腕はものすごく、頼り甲斐がある。
 レイシとライチはマストの下に腕を滑り込ませ、力を込め上に持ち上げようとするが、びくともしない。
 歯を食いしばって、己の力を全て使っても、一向に柱は動かなかった。
「人、呼びましょうか?」
「いや、乗組員達は自分の仕事を全うしている、人を呼ぶのは最終手段だ。大丈夫、あと少しで持ち上がる」
 レイシ船長は威勢よく言ったが、言外の雰囲気から絶望感がただよう。
 ライチは脳漿を絞り、少年を助ける方法を考えた。そういや、本でテコの原理たるものを見た気がする、それを利用すれば……
 ライチは頑丈な棒状のものを探す。そこにあったのは鉄製のスコップだった、武骨な宝石で装飾された船長のスコップであった。
「船長、スコップ借りますよ!」
 ライチはスコップの先端を床と帆柱の間に突き刺す。船長は柱を持ち上げようと青筋を浮かべながら。
「何する気だ?」
「テコの原理です、持ち手を下に押せば、柱が上に上がります」
 そう言って、ライチは力を込めて持ち手を押すがビクともしない。
 駄目だ……けど、諦めるわけにはいかない!
 ライチは信念を持ち、全身全霊をスコップにかける、すると、鈍い音を立て、柱が数センチ浮き上がった。
 その隙に、船長は少年を柱の下から救出する、力を緩めると、ドッと疲れが体に回ったが、休んでる暇はない。ライチは自分を鼓舞し立ち上がる。
 少年の足は折れてるようだったので、ライチは肩を貸してやった。
 しかし、一度目も二度目もスコップに込めた力は同じだったはずなのに、なぜ、二度目は柱を浮かすことに成功したのだろうか?
 少年を助け出した安堵感から、ライチはそんなことを考えた。考えただけで答えは分からなかった。
 そうこうしている内に海賊船は迫ってくる。
 海賊船は意外にも小綺麗で、王国の貿易船のような風態をなしている、その甲板の上には数十人もの男達が不敵な笑みを浮かべ、カットラス(剣)やラッパ銃を構えていた。
 あのカラフルな羽が二枚ついた海賊帽を被っているのが船長だろうか、片腕がないようで無理やりレイピア(刺突用片手剣)を縛り付けてある。
 やがて、海賊船はライチ達のいる帆船に横付けされた。
 夕陽が海賊達を紫紺に照らし出す。その様はなんとも不気味で、ライチは足が竦んだ。
「我々は降伏する! 少ないかもしれないが、我が艦の財産だ、持っていてくれ!」
 船長は猛々しく言った。
 しかし、海賊達はニタニタと笑うのみで、返答はよこさなかった。ライチ達乗組員に不安感が細波のように発生する。
 緊張により、動悸が激しい。
 ライチは叫び、逃げ出したい気持ちを必死に理性で押し殺していた。実際には一分も満たなかっただろうが、その時間は永劫にも感じられた。
 陽は地平線に飲み込まれ、夜が訪れる。
 周囲のトーンの変化と共に、海賊は不気味な、恐ろしい怪物に変わった。比喩ではない、実際に陽光がなくなった途端、海賊達の姿は、醜くい怪物へと変貌を遂げたのだ。
「なんなんだ、あの怪物は……見たこともない」
 張り詰めた緊張はついに破れ、乗組員の一人が悲鳴をあげる。それに続くよう、海賊船ーー怪物船の船長はレイピアを穿ち、嬉々として言った。
「お前ら! 一人残らず、殺せぇ!」
 その言葉に触発され、怪物はライチ達の帆船に乗り込む、地面や手すりをカットラスで叩きながら、悠々と移乗攻撃を仕掛けてきた。
 戦いに心得のある乗組員達は隠し持っていた短剣で応戦するが、怪物達は名の通り怪力で戦闘員をねじ伏せる。
 目の前では、バタバタと人が血潮を上げて倒れていく、バタバタと、バタバタと。
 もはや、声すら出なかった。ライチはただ、呆然と味方が倒れていく様子を見ているほか何もできなかった。
 人が死んでいく。さっきまで、会話していた人が、飯を食ってた人が、死んでいく。
 血生臭さに空気が淀む。
 怪物の一人がこちらに気が付いたのか、広角を上げて近づいてくる。手には血糊でべっとりと赤くなった剣が握られていた。
 血痕の間から覗く刃は眩むほど輝いて、恐怖を掻き立てる。
「もう……終わりだ」
 ライチはかすれる声で呟いた。
「まだ、終わりじゃない!」
 怒声が聞こえる、レイシ船長だ。
「お前がその少年を守らなきゃ、誰が守る!」
 ライチは自分の肩に寄りかかる少年に視点をやった。少年の瞳孔は開き、怯えている、しきりにライチの袖を千切れんばかりに握っていた。
 そうだ、自分はこの少年を守らなくてはいけない。
 ライチは言うことを聞かない足を、一生懸命に動かし、自分たちの命を潰そうと欲する怪物の一閃を避ける。
 それから、考えた。どこに行けば安全か? いや、この船にいる限りはどこも安全ではない、しかし、この少年を安全なところに送り届けなくてはいけない。
 考えろ、考えろ。考えろ!
 思いつく。救命ボートだ。
 戦乱に乗じてあそこに逃げ込めば、安全だ。少なくとも身は隠せる。
 ライチは少年を抱え上げ、怪物達の攻撃を躱しながらデッキを駆けて、救命ボートを目指す。
 怪物達の猛攻を寸でやり過ごし、目的地に到着した。
 救命ボートは雨風を凌ぐためシートが掛けられている、ライチと少年は救命ボートに乗り込み、身を潜める。
「少年。ここでジッとしているんだ。騒ぎが収まるまで、静かにここで待っているんだ、分かったね?」
 ライチは息を切らしながら、ゆっくりと言った。少年はコクリと頷く。ライチは少年の頭をレイシ船長がやったようにクシャクシャにした。
 少年の表情が少し朗らかになる。
 ライチはそのまま救命ボートを出ようとした。自分も怪物達と戦わなくてはならないからだ。
 しかし、救命ボートから出ることが出来なかった。直感的に自分が死ぬことを悟ったのだ。
 ライチはシートとボートの間から、甲板の惨劇を見ていた。変わらず、怪物が仲間を蹂躙していく。所々で血飛沫が舞い上がる。
 怪物の斬撃により首が飛び、怪物の弾丸により体に穴が開き、そして、仲間たちはその場で力なく倒れていく。
 レイシ船長はまだ生きているようだ。自慢のスコップで怪物の頭に強烈な殴打を喰らわしている。良かった。
 彼なら、この苦境も打開してくれるはずだ。
 グサ。
 銃声、悲鳴の中、生々しい音が耳朶を叩く。慌ててレイシ船長を見ると、怪物船長が右手のレイピアでレイシの背面から胸板を貫いていた。
 レイシは自分の胸に刺さった剣先を一瞥すると、傀儡師の居なくなったマリオネットよう、地面に突っ伏し。甲板に血溜まりを作った。
 ライチは泣き叫びたくなった。しかし、怪物に場所がバレるのはまずいと、理性が衝動を抑制する。
 血が滴るほど唇を噛みしめ、悲しみを紛らわした。涙が表面張力を起こし、目の前が歪んでよく見えない。
「本当に、終わりだ」
 途端にボートを覆っていたシートが剥がされる。剥がしたのは美少女であった。
 大きな瞳に、ポニーテールで艶めかしい髪、引き締まった体。その姿は死線を往来する自分の元へやってきた、天使あるいは女神に見えた。
 しかし、こんな美少女は自分の船に乗っていなかったはずだ。となると、彼女は怪物……? 気持ちは否定するが、合理的に判断を下せばそういうことになる。
 怪物たちは人間に擬態することができる、怪物たちが現れたあの時、姿は海賊と相違なかった。彼女も美少女に擬態しているだけかもしれない。
 彼女は毅然とボートに乗り込むと、持っていた剣で船とボートを結んでいたロープを切る。ボートは帆船との接続が外れ、海へと勢いよく着水する。
 それから、彼女はオールでボートを漕ぎ始めた。ライチは恐る恐る訊いた。
「君は怪物なのか?」
 声はひどく掠れていたが、意図は伝わり、彼女は答えた。
「あなたも死にたくなければ、無駄なことは詮索しない方がいいわ」
 言葉を濁すが、しかし、証拠は出揃っている。彼女は怪物だ。ライチは持っていた短剣を彼女に向ける。
「死にたいの?」
 たった一言、その語気は異常に凄みがあった。ライチは恐怖に竦み、何もできなかった。

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