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ロードバックッ! 勇者アレクの英雄譚
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スレ主 田中一郎 投稿日時:
以前王道を目指して書いた作品なのですが、改稿する際に1章と2章を入れ替え、時系列順に並べ直しました。そのせいかどうも冒頭が説明的になり弱い気がして、改稿後にさらに手直ししたのが現在です。
ハイファンタジーの宿命としてある程度の説明は避けられないとは思うのですが、過ぎればブラウザバックでしょうし。特にお聞きしたいのはそのバランスの過不足、そして興味をひける冒頭部であるかどうかです。その他何かお気づきの点があればご教授いただきたいなと。
作品自体は完結済なのですがweb公開に向けて若干手直ししようと思い、済んだ冒頭部分だけ試しにUPしてみました。
内容は剣と魔法のファンタジー、バトル物です。
保険としてR15つけるぐらいの描写が少々あります。
よろしくおねがいします。
あらすじ
タイヴァス王国の人々は、魔と呼び忌み嫌うニビ族との戦いに疲弊していた。
そんな中、天啓をうけた剣聖アレクは超常の力に目覚め、戦争を集結させるため、仲間と共に敵の本拠を奇襲すべく旅立った。
たどり着いた敵本拠地で一行は力を発揮し、強力な魔法で敵城を崩壊させる。
そして怒りに燃える魔王との激闘の末、見事勝利したアレクは、1年後には失意の中ポンコツ勇者と罵られていた。
取り返しのつかないミスをしたと苦悩する日々から再起する勇者の話、その冒頭です。
プロローグ
水と緑に恵まれた美しい王国、タイヴァス。
女神の御使いの後胤を称する、この自然豊かな国は戦乱の中にあった。
敵はニビの民。
人々が妖魔、魔族と忌み嫌う、山森に住まう残忍な亜人間。灰色の肌と赤い瞳、暗い色の髪をした異種族だ。
王都のはるか北方に連なる黒魔山脈、その麓に広がる暗い森から、ニビの王ヴォルヴォヴァ配下の邪悪な軍勢が溢れ出す。
迎え撃つ王国の勇敢なる将兵たち。両軍の力は拮抗し、戦線は膠着した。
両者疲労の色が深くなる中、王国に女神の福音が。
ふたりの男女が天啓にうたれ、常人を遥かに超えた強靭な肉体と魔導力を手に入れた。
ひとりは剣聖アレク。
ひとりは王女シルヴァ。
伝説に謳われし《現身の勇者》(うつしみのゆうしゃ)の再来と人々の期待が高まる中、アレクはまだ年若く未熟だったシルヴァの剣を鍛え、聖女エミリアとその従士リューリを加えた四人で旅立った。
手薄となったニビの本拠を奇襲しようと、冬の寒空の下人目を避け、戦場を迂回し、息を白げ黒魔山脈の剣峰を踏破して、ようやく辿り着いた敵王の城。
そこに待っていたのは幾層もの防御結界に守られた要塞だった。
「最強の攻撃魔法を城が壊れるまでぶち込もう」
アレクが作戦会議と称して始めた話し合いの第一声はこれだった。
「どっかの誰かさんがミスってアラーム鳴らさなければ潜入もありだったんだがな」
ニヤリと笑いながら向けられた視線を、リューリは平然と受け流す。
「私の見事なネコの鳴きマネで確認しに来た警備兵は欺けたのだ。まだ奇襲は可能だ、問題はないだろう?」
「ネコの鳴きマネ練習する暇があるなら、とっとと《魔力感知》(サーチマジック)覚えたらどうなんだ?」
「パンのことはパン屋に頼め、という言葉があるのだろう? つまり魔法のことは魔法使いに、だ。私は魔法使いではないぞ、忘れたのかアレク?」
黒い革鎧に窮屈そうに押し込まれた、痩身の割に豊かな胸を強調するかのように腕を組み、短髪に包まれた頭部をゆっくり左右に振ったあと、不思議なほど得意げに冷ややかな切れ長の目を向けてくる黒づくめの麗人。
自信に満ち溢れたその態度に、もしかして自分が何かを間違っているのかと、わずかに戸惑いを感じつつ言葉を返す。
「いや……それも仕事の範疇だろう? 偵察やら情報収集やらが主任務なんだからさ……」
「アレクの故郷のパン屋は魔法が使えて偵察もするのか?」
「誰も俺の故郷のパン屋の話なんかしてねーよっ! いい加減にしろ、このポンコツ使い魔っ!」
「じゃあどこのパン屋の話なんだ? それにポンコツとはどういう意味だ? そして私を使い魔などと呼ぶなっ!」
「お前の仕事のうちだって言ってるんだよっ!」
「ほらほら、ふたりとも。いいかげんにしないと年が明けちゃうよ?」
微笑みながら、にらみ合うふたりに割って入ったのはエミリア。
水色のローブをまとった両腕をいっぱいに伸ばしてふたりを引き離す。
「リューリはね、《魔力感知》覚えなければアレクと一緒に偵察行けるから、それが嬉しくて覚えないんだよね?」
「なっ、そ、そんな事ありません。マスター、誤解ですっ!」
「冗談だっ、よっ」
ほっそりした人差し指を振りながらウィンクし、フフッと微笑む聖女。
戸惑うリューリの姿に大笑いする剣聖。
エミリアは波打つ豊かな金髪を揺らしながらアレクに向き直り、輝く緑の視線を真っ直ぐに向けると、柔和な表情を絶やさず語りかける。
「リューリはまだ知らないことが多いの、失敗することもあるけど許してあげてね」
傾げた頬においていた白い人差し指を、物いいたげに開きかけた唇にそっと押し当て「お願いね」とささやき、また微笑んだ。
「それで結局どうするのじゃ? 決まらないなら妾の考えた作戦で行こうぞ?」
焦れたシルヴァがやや舌っ足らずな、まだ幼さの残る外見に似合った声をあげる。
「大体の見当はつくが念のため聞いてやろう、言ってみ?」
師匠の言葉に大きな碧眼を輝かせ、胸を反らし、顔にかかる長い銀の直毛を手で払いつつ得意げに姫が言う。
「まずは正門前で堂々と名乗りを上げ――」
「却下」
速やかに下された非情な決定に可愛らしいふくれっ面を向ける王女。アレクはその視線を払うように右手を振ると「もっとマシな作戦を立ててみろ」と諭すように声をかけた。
「それでは……妾とお師匠がふたりで剣を抜いて切り込んで、エミリアが後ろから魔法で援護して勝つのはどうじゃ?」
「最高の結末だな、申し分無いわ」
苦笑交じりの言葉にすかさずリューリが反応する。
「じゃあこの作戦が採用か」
「違うのリューリ、今のアレクの言葉の意味はね……」
「そもそも作戦と言えんだろ、それじゃ。もっと俺のように頭を使った作戦を考えられんものか、シルヴァ?」
「お師匠の作戦って、さっきの魔法ぶっ放して城ぶっ壊すってのじゃろ? 脳筋は頭の筋肉を使うって意味じゃないぞよ?」
「何言ってるんだよ。敵と罠が待ち構えてる内部に侵入するよりは、瓦礫で丸ごと埋めてしまおうという、俺の知的で頭脳的な作戦がわからんのか?」
「「なるほど」」
師弟のやり取りにエミリアとリューリの頷きが重なった。美貌を見合わせ笑うふたり。
「うんうん、アレクの言うことにも一理あるよねっ!」
「この師にしてこの弟子あり、とはよく言ったものですね」
お互いの言葉に再び顔を見合わせるふたり。
「マスター、あなたもそちら側でしたか。いえ、当然私もマスターの考えに賛同します、ええ全面的に」
黒い瞳が何かを諦めたかのように閉じられる。黒の短髪を右手でかき上げ、ややうつむき加減の色白な顔が力なく微笑んだ。
アレクが言うところの「頭脳的作戦」は、早速決にかけられ、賛成二票、反対一票、白紙委任一票、で可決された。
反対したのはシルヴァで、理由は「遠距離からの魔法攻撃だと自分が参加できないから」だったが、「燻り出してからは参加できるぞ」と師匠に説得されて、渋々ながら王女は合意した。
このような恐ろしい謀議がなされてるとは露知らず、ニビの城は未だ静寂と安寧の中にあった。
それを最初に破ったのは一筋の流星だった。
「《流星は空の女神の落涙》(ティアドロップ・シューティングスター)!」
アレクの叫びとともに青空の光星が光の尾を引いて落下を開始する。
放たれた女神の力を具現した超級魔法は、城の防御結界に衝突し、閃光と轟音と爆風を周囲に撒き散らした。
一層目を易々と貫通し、二層目とぶつかり、また光と音と風のハーモニーを奏でる。
「よし、空いた穴に連続して放り込んじまおうぜ」
再び集中を開始したアレクの足元から青い光が伸び、巨大な魔法陣を形成する。
空に光星が出現し、煌めきを強めていく。
「了解、アレク。私も行きまーす」
集中を開始した聖女の足元から赤い光が伸び、巨大な魔法陣を形成する。
「《円舞する炎蛇》(プロミネント・ブレイズストライク)!」
二層目を貫き三層目に到達していた流星を追尾するように、中空に出現した炎の奔流が、二重螺旋を描いて降下する。
弱まっていた流星の輝きを飲み込むように、重なり、障壁に当たり、表面を這い広がる業火。
「マスター、あれは同魔法の並列発動ですか?」
リューリの質問に対して、エミリアは顔の前で人差し指と中指を使い二を示すと、満面の笑みを浮かべた。
「《流星は空の女神の落涙》!」
聖女の魔法に少し遅れた二度目の落涙が、炎柱を目指して降下する。
三層目を溶解し、四層目に到達した炎蛇を流星が追い、落着する。
撒き散らされる爆風に炎は火輪となり、城の上に咲いた。
流星を追う炎の螺旋柱が更に立ち、そこに落着する流星と同時に新たな炎柱が立つ。
破られた結界は既に十重を超え、そしてまた二匹の炎蛇が襲いかかる。
更に落着する流星、それを追う炎もまた……
そしてついに。
二度目の重なった流星と炎が、二十層に及んだ防御を打ち抜いた。
砕かれ折れる物見の尖塔。
炎に包まれる主塔。
崩れ落ちる瓦礫を見ながら、エミリアはアレクに言った。
「あとお願い、私そろそろ限界。少し余力残しておかないとだし」
「任せとけ」
倍するペースで魔法を撃ち込み続けていた聖女の宣言に、剣聖は力強く安請け合いした。
安心し、細めた緑の眼差しの彼方で、落着する女神の涙が主塔を粉砕し、瓦礫と炎の雨が降り注ぐ。
「おー、お師匠達の魔法はすごいのじゃ。妾も使えるようになりたいのじゃ」
パチパチと手をたたき合わせ、無邪気に将来の希望を語るシルヴァ。
「お、いいなそれ。帰ったら魔法勉強会するか?」
「そんなこと言って誘って、私に無理やり教え込む気だろう? 《魔力感知》を」
「嫌がらずに素直に学べっての、ポンコツ使い魔」
「また使い魔と言ったなっ! 訂正しろっ! そしてポンコツの意味を教えろっ!」
「妾が後ほどポンコツの意味と一緒に《魔力感知》も教えて進ぜようか?」
「ちびっこまで……私は魔法が苦手なんだっ!」
「あーうるせーな。エミリア、俺にまたオリジナル魔法教えてくれよ」
「いいけど、アレクも何か教えてくれなきゃ嫌だよ?」
「任せとけ、何でも教えてやるよ。何なら魔法以外でもいいぜ」
「えー、じゃあ、何がいいかなぁ?」
「言い出しっぺの妾が参加しにくくなってる気がするのじゃー」
ふたりの雰囲気が甘ったるくなっていくのにひとり赤面し、目をそらす少女の碧眼に、また落着する流星が映り、ひときわ豪壮な宮殿が粉砕される。
轟く破壊音。
揺れる大地。
吹き付ける爆風。
更に、過剰とも言える七つ目の輝く星が青空に生まれ、そして流れる。
流星が目指す先で、崩れた瓦礫を押しのけ、現れたいくつかの人影があった。
影達は憎々しげに流星を見上げ、そして目を下ろすと、一行を睨めつけ迫り来る。
先頭を歩く、禍々しい瘴気を放つ男は……ニビの王、魔王ヴォルヴォヴァ。
崩壊する城から打って出た敵王を迎え撃ち、一行は最後の決戦へと挑んだ。
蒼穹が震えていた。
樹木も、そして大地も。
黒い剣と青い剣が打ち合わされる、その度に。
黒と紫の重甲冑に身を包む巨漢が手にした、黒く重厚で長大な剣。その刀身で鮮血のような赤が大理石の模様を形作るように蠢いている。
鎧と似合いの色の瘴気を全身から吹き上げながら、巨漢は剣を振るう。
空気を、空間すら切り裂くような黒い刃を、アレクの青く輝く半透明の刃が受け、火花を散らす。
斬撃から少し遅れた衝撃波が、笑う剣聖の髪を揺らし、背後の大地をえぐり、樹木をなぎ倒す。
両腕に力を込め、巨剣を弾き返し、翻った青い剣が逆袈裟に切り上げる。
巨漢は身軽に後方に跳んで躱すと、背後で切断され斜めに崩れる瓦礫の音を気にもせず、呵う。
「我が身に触れるとは、やるではないか。伝説の勇者の再来と呼ばれるだけはあるな」
胸甲の表面を斜めに走った灼熱の筋が、たちまち冷やされ黒さを取り戻す。
「ずいぶん情報通じゃねぇか、お前も魔王と呼ばれるだけの事はあるわ。よくまだ生きてる、褒めてやるぜ」
傲慢とも取れる言葉を叩きつけ、不敵に笑う。
「ぬかせ、小童。まだ青いわっ!」
ヴォルヴォヴァが左手を振るうと、アレクの足元から土砂が舞い上がる。
黒い巨漢は猛然と間合いを詰めると、土煙ごと両断しようと、巨剣を横に薙いだ。
手応えは――無い。
彼方で剣風が何かを崩す音を聞きながら、顔を上下左右に動かし敵手の居場所を探るヴォルヴォヴァ。
「《旋風は空の女神の嘆息》(サイ・トルネードスラッシャー)!」
未だ不鮮明な視界の先から、力強い叫びが上がった。
突如足元から巻き上がる竜巻に、黒い巨体は身を硬直させ、踏みとどまる。
風柱の中で無数の刃が舞い踊り、身にまとう魔力が込められた装甲が火花を散らす。
背中の漆黒のマントが巻き上げられ、たちまち切り裂かれて、空の彼方へと消えていく。
切り裂かれた肌から血がしぶき、渦になる。
顔の前で腕を組み、背を丸めて耐えるヴォルヴォヴァの左胴を、青い刃が彗星のように尾を引いて薙いだ。
苦痛に呻き、片膝をつくニビの王。
「自ら起こした土煙に幻惑されるとはなぁ。もう歳か、老魔王?」
先の挑発を見事に返され、未だ円熟期にあると自負するヴォルヴォヴァは、自らの矜持をかけて立ち上がる。
「もう勝った気でいるのか、小童? 勝負はこれからが本番よ」
苦痛をこらえ笑い、脇腹を抑えていた左手を振るうと、鮮血が吹いた。
鎧の裂け目から血が流れ出す。
「魔王の血も赤いとは知らなかったな」
「黙っておれば魔族だ魔王だと勝手ばかり言いおって。我らからみれば貴様らこそ害悪、魔そのものよ」
「何抜かしやがる、殺戮者共の親玉がっ!」
「知っているか? かつてお前らは我々を森の隣人と呼んでいたんだぞ? それが亜人間になって今では魔族だ」
「昔話には興味ねぇよ」
「都合が悪くなれば魔呼ばわり、貴様らの正義などそんなものよ」
「負け犬には立派すぎるセリフだぜ、勝ってから言いなっ!」
血の色は等しく赤かったが、それだけでは相容れない隔たりが両者には存在した。
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