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寿国演義 庶民出お転婆皇后と、天空聖地と、雲表列車 (再投稿) (No: 1)
スレ主 ドラコン 投稿日時:
完成させられる見込みが全くない作品を投稿しても良いものかとの疑問はあります。ですが、ブログ記事でお伺いしたところ、管理人のうっぴーさんから「OKです」とのご返信をいただきました。また、投稿しようかどうかと迷ったのですが、「未完」でも投稿できるせっかくの場なので、思い切って投稿しします。
日本から消えてしまった鉄道風景を、中華風ファンタジー世界で再現する、という無茶苦茶な作品です。
以下、あらすじです。
庶民出の皇后、張銀鈴(ちょうぎんれい)が友人の少女で、判事見習の晶芳雲(しょうほほうん)宅に怪しげな寺院「福地寺(ふくちじ)」のチラシを持って来た。福地寺は、霊感商法で問題になっていて、内偵捜査中だった。同席していた、芳雲の幼馴染で、同じく判事見習の欧裁文(おうさいぶん)は、銀鈴が福地寺事件に首を突っ込まぬよう、例のチラシを取り上げた。だが、銀鈴も福地寺の問題は承知していた。そこで芳雲は、上司の越忠元(えつちゅうげん)に連絡を取った。そして銀鈴たちは、福地寺の大本山がある天空の聖地「天陽」へ列車で向かうこととなる。
不安な点としては、無茶苦茶な世界観ですから、やはり「世界観が伝わっているのか?」です。特に気になっているのは、以下の点です。
・昔(明代以前)の中国っぽっくなっているか?
・鉄道という「近代」の象徴を出しておきながら、政体を近世以前にしたこと(架空のもが多いが役所の名称は漢・唐代、科挙は明・清代)。
・西洋文明の象徴たる鉄道を出したが、登場人物が明代以前の中国服(漢服)を着ているイメージを持てるか? (つまり、洋服や和服を着ているイメージがあるか?)
・設定の説明に、想定日本の架空国を出したり、ガイドブックを引用(劇中劇)したりした印象は?
・度量衡をメートル法換算の架空単位にしたが、その印象は?
実をいうと、書けた部分だけも400時原稿用紙63枚(約2万字)ありました。ですので、特に読んでもらいたい部分を抜き出して、強引に投稿の字数制限1万字に合わせました。そのため、省略した部分がかなりあり、分かりずらいかもしれません。
なお、鉄道のモデルが分かった方は、お書き添えいただけると幸いです。
※先に同文の作品を投稿しましたが、作品タイトルとあらすじに誤字があったため、再投稿します。
プロローグ
冬のある日、寿国(じゅこく)の都、長洛(ちょうらく)。その一角にある昌(しょう)家の屋敷。
「芳雲(ほううん)さん、来る途中にこんなのもらったんだけど」
どこかの屋敷の下働きにも見える少女、張銀玲(ちょうぎんれい)が、一枚のチラシを差し出した。年のころは、十四。耳の上で、鳶色の髪の毛を二つの団子に結っていた。薄紅色の筒袖上衣に、中紅色の裳(スカート)姿。
「『天空聖地巡拝団募集』? 『天陽(てんよう)の聖地巡拝と遊牧の土地十日間の旅。雄大な自然の中で、聖典研究をしよう! 宿泊は大本山宿坊。五〇〇〇両』? えっ、安過ぎますわね」
この部屋の主で、十六歳の少女、昌芳雲はそう言いながら、チラシを欧裁文(おうさいぶん)に手渡した。芳雲は、足首までの長着の一種、深衣姿。広袖で、裾が曲線的なのが特徴。黒くつやのある髪の毛を、頭上で心臓型(ハートマーク)――ア(Yに似た漢字)頭――に結っていた。ちょうど、弁財天や吉祥天といった天女のような感じ。ちなみに、銀玲は天女の侍女だろう。この年ながら、皇帝に直属し、寿国で刑事・民事一切の裁判を行う役所、太法院(たいほういん)の判事見習。
昌家は、代々清廉な官吏や、優れた学者を輩出した名家。したがって、その娘、芳雲の部屋も、中庭に面した扉と窓をのぞき、壁のほとんどが本棚。どんな本かと見てみれば、彼女の仕事柄、法律書が多いのは当然として、哲学書に古典小説、詩集に、女の子らしく恋愛小説もちらほらと。そして、画集に作画の参考書。
わずかに空いた壁には、芳雲自らの手による花鳥画が飾られていた。
一方、裁文は実年齢十五歳の少年。ただし、外見だけなら、十二歳未満。駅で「大人」と言わずに切符を買えば、右端が斜めに切り落とされた「小人用」が出てくるほどだ。小ぶりの広袖上衣に、桍(ズボン)姿。良家のお坊ちゃんという雰囲気。芳雲とは幼馴染で、同じく判事見習。
「これは安過ぎて、明らかに怪しいですよ」
そう言って、裁文は携帯版の時刻表を取り出し、営業案内を確かめた。
「長洛―天陽間は、普通列車の三等座席車でも、大人片道一万五六六〇両しますよ。しかも、天陽まで一番速い急行でも、三日かかりますからね。小人運賃が半額の七八三〇両ですから、五〇〇〇両ならそれよりも安い。
それにこれ、不特定多数に配っていたわけですよね? だとすれば、違法ですよ。不特定を対象にして団体旅行を主催するには、鉄道院総裁か、府尹(ふい)・州牧(しゅうぼく)に登録して、鑑札を受ける必要があります。けど、このチラシにはその鑑札番号が書いてないですよ」
さすがは、無類の鉄道好きとして知られる裁文。時刻表は常に持ち歩いているようだ。
鉄道院の三等初乗り運賃・駅の入場券は、百四十両。府・州とは、寿国の最も大きい地方行政単位。府は帝都およびそれに準じる地、州はその他の地。府尹・州牧とは地方長官。
「五〇〇〇両で旅行できるなら、安いわね。わたしのお小遣いでも、出せるわね。申し込んでみようかしら」
と銀玲。
「銀玲殿」
これは裁文。
「銀玲さん」
こちらは芳雲。
そして、裁文と芳雲の二人は、一瞬目線を合わせ、声をそろえてこう言った。
「少しは立場を考えてください!」
「まあまあ、いいじゃないの、裁文、芳雲さん」
銀玲が甘えたような声で言った。
銀玲の立場――一見すると、年上の友人宅へ遊びに来た少女――実際、そうなのだが――。実は彼女、当代皇帝・紀仁瑜(きじんゆ)の皇后。とはいえ庶民出で、女官募集広告を見た友人が、勝手に銀玲の名で応募したら、採用された経歴の持ち主。
芳雲と裁文は、上司の――というより兄貴分の――、太法院の長官、太判事兼女官教育機関「後宮太学」教師、越忠元(えつちゅうげん)の手伝いで、後宮にも出入りしている。
裁文は、改めてチラシに目を通した。
「いくらなんでも、五〇〇〇両で儲けが出るわけがないですよ。日程は、詳しく書いてませんね。格安団体旅行の中には、“観光”とは名ばかりで、土産物屋を連れ回し、法外な値段で土産物を買わせまくるものがある、と東道会(とうどうかい)の知り合いから聞いたことがあります」
東道会とは、旅行業者・旅館業者で作る団体。官設鉄道を運営し、兼ねて運輸業・旅行業を監督する役所、鉄道院の傘下。
「天陽といえば、天陽教の総本山がありますわね。高い土産物って、ありましたっけ?」
芳雲が、裁文に尋ねた。
「……そうですね。じゅうたんが名産ですが、同じじゅうたんなら、西の砂漠地帯の緑州(オアシス)都市へ行ったほうがいいでしょうね。そっちのほうが、いい物が手に入りますよ。西方のじゅうたんは、高い物になると、家一軒分ですし。それに、じゅうたん以外の工芸品もありますから。天陽で値が張る物とすると、薬や香料の原料、麝香か、あとは野生動物の毛皮ですかね。聖地ですから、経典や宗教道具もあるでしょうが」
チラシの文字を追っていた裁文の顔付きが変わった。彼はチラシを懐にしまった。
「とにかく、このチラシは預かっておきます」
「それ、福地寺(ふくちじ)でしょ? 最近、霊感商法で問題になってる。研修会に参加すると、福地寺が桃源郷に見えて、全財産を寄進して出家する人が出ているっての」
「知ってたんですか」
「それぐらい、知ってるわよ。後宮の女官の中にも、何人か教主の本を買ってたわよ」
「……マズいですね。まだ、『妖賊』『教匪(きょうひ)』とまでは言えませんが、一応、監視下には置いてるんですが」
「銀鈴さんが、知っていた、と忠元様に連絡したほうが良さそうですわね、裁文さん」
そう言って、芳雲は席から立ち上がり、部屋の隅に置かれた「千里鏡(せんりきょう)」の前に座った。裁文と銀鈴は、芳雲の後ろに立っている。
芳雲は、手で印を結び、静かにつぶやいた。
「臨兵闘者皆陣列在前、忠元様を」
千里鏡に、雪山を行く汽車の屏風を背にした、いかにも「文人好み」といった、広袖のゆったりした衣を着た男性、忠元の姿が映し出された。年は二十二。
「ああ、芳雲か? それに、裁文に、銀后も。みんなそろって、どうしたんだ?」
寿国後宮では、女官は名の頭文字に、位名を付けて呼ぶのが習わし。
「実は銀鈴さんが――」
芳雲は忠元に、銀鈴と裁文の先ほどのやり取りを説明した。
蓋椀――東方の島国・和国で使われる蓋付き汁椀に受け皿を加えた感じの茶碗――を受け皿ごと持ち上げ、蓋で茶葉をよけながら茶を飲んでいた忠元が、一気に渋い顔になった。
「……そこまで知ってたんですか。後宮の外へ出るな、とは言いませんよ。皇帝陛下も、幼いころから私と一緒に、おしのびで出歩いてますから。とはいえ、少しは立場を考えてもらわないと――」
「……はい」。銀鈴は神妙な顔でうなずいた。(忠元先生のお説教、長いんだから)
「忠元様、福地寺ですがいかがなさいますか?」
芳雲が問うた。
「後宮の女官まで興味を持つ者が出てきたとなると、監視を強化したほうがいい」
「忠元先生、福地寺って確か科挙紛いのことをしてましたよね」
こちらは銀鈴。
「してますね。『福なる科挙』の意で『福挙(ふくきょ)』と称していますよ」
科挙とは高等官登用試験のこと。
「何で、そんなことやってるんですか?」
「福地寺の開祖は、何十年も科挙を受け続けても、郷試にすら受からなかったのが影響しているみたいですよ。府・州本山で行う一次試験を『郷試(きょうし)』、天陽の大本山で行う二次試験を『会試(かいし)』、教主臨席で行う最終試験を『殿試(でんし)』と、科挙と同じ用語を使ってます。それに、歴代教主の本を最低十冊読んで、感想文を提出するのが、入信の条件とか。これ上手いやり方ですよ。こうしておけば、確実に教主の本は売れますよ。しかも普通、本は一人一冊、一家に一冊あれば足りますが、布教のために、一人で同じ本を何冊、何十冊も買って配ることもあります。その上、信者は『これだけ勉強している!』との自覚を持ちますから」
本物の科挙も、府・州の首府で行われる一次試験を「郷試」、帝都・長洛で行われる二次試験を「会試」、皇帝親臨の最終試験を「殿試」という。
「ほんとです。こうしておけば、信者の質も上がりますよ。……福地寺の開祖、科挙に受からなかったことを、相当悔しがっていますね」
裁文がそう言った。
「ふるさとに居たころ、近所の私塾の先生をやってる、よぼよぼのお爺さんの口癖が『せめて挙人(きょじん)になれれば』だったわよ。それにしても、芳雲さんも裁文も早くに受かって良かったわね」
銀鈴が口をはさんだ。
「挙人」とは、郷試の合格者のこと。官吏に準じた名士扱いを受ける。
「銀玲さんも、後宮太学を卒業してますわね。卒業試験は陛下のご臨席でしたし。『進士』と一緒ですわよ」
「進士」とは、殿試の合格者に与えられる称号。
「まさか、わたしが皇后に選ばれるとは思ってもみなかったわよ。仁瑜なんか、初めて見た時、女と思ったわよ。それも、皇后候補筆頭の」
「話が脱線してきたので戻しますが、後宮のほうにまで勢力を伸ばしてきたとなると、気になりますね。さすがに、天下を狙うところまではいってませんが、教団の組織は政府を模倣してますし。その上、科挙に落ちた不平士大夫の受け皿になってるようですから。時間のやり繰りはつきますので、私が直接、天陽に調べに行ってもいいかなと」
忠元が話を引き戻した。
「天陽というと、雲表本線(うんぴょうほんせん)の、蒼玉(そうぎょく)峠の歯軌条式(ラックレール)ですね」
裁文が言い出した。
雲表本線は、寿国で最も標高が高い所を走る鉄道路線。蒼玉峠は、鉄道院線で最も急勾配な箇所。
「そうそう。あの、音に聞こえた蒼玉峠の歯軌条式だ」
「……また始まったわね、芳雲さん」
銀鈴が、芳雲に呆れた声でささやいた。
「ですわね。忠元様と裁文さんの鉄道談義、長くなりますわね。二人とも、無類の汽車好きですから」
実に楽し気な表情で、忠元と裁文は「線路勾配がどうのこうの」「閉塞法がどうのこうの」と話している。そして、一通り話し終わった忠元が切り出した。
「天陽教の法王猊下なら何か知ってるだろうし、天陽まで行ってくる。裁文、芳雲、一緒に行かないか?」
天陽教の開祖は、太祖――寿国初代皇帝――の天下取りに多大な貢献をした。そのため、天陽教は皇家より特別の保護がなされて、代々その長は法王に封ぜられている。
裁文・芳雲は、声を揃えて答えた。
「ご一緒します」
「面白そう。忠元先生、わたしも行っていい?」
銀鈴が、間髪を入れずに言い出した。
「銀后、少しは立場を――、言い出したら聞かないですね」
忠元は、腕組みをして考え込み、そして口を開いた。
「……仕方ないですね。来てもいいですよ。陛下には私からお話しておきます」
「ありがとございます、忠元先生!」
「いいんですか、忠元様」
裁文が心配そうに尋ねた。
「……後になって追いかけてこられたり、文句を言われたりするよりは、マシだろう。切符は私が手配しておく」
帝都・長洛発の翌日。
冬晴れの青空、冷たく乾いた空気。寿国最大の塩湖・蒼塩(そうえん)湖の西岸にあり、蒼玉(そうぎょく)峠の麓の蒼州首府・蒼寧。その玄関口にして、雲表本線の起点であり、鉄道院線最大の難所・蒼玉峠越えの基地、蒼寧駅。
一四時ちょうど。急行「鶴」が定刻通りに到着。始発の都・長洛から一四五〇大里――ちなみに人間が一時間に歩く速さは約四大里――、所要時間二四時間三〇分。これは、表定速度五九・一八大里に当たり、普通急行ながら特別急行並みの速さだ。
瑠璃紺――明るい紺――の瓦屋根に真朱の柱。緑に塗られた軒には、経文を刷った五色の旗――祈祷旗――が、洗濯物のごとく吊るされている。黄色は地、青色が水、赤色が火、緑色が風、白色が空を表す。
急行「鶴」を、蒼寧まで牽いてきた貴婦人型の優美な蒸気機関車が去っていった。
側線に待機していた山男を思わせる無骨な峠越えの専用機関車が、機関車の端につかまった連結手を乗せて動き出した。先頭に一輛、後方に三輛、計四輛連結された。
後方の三輛は進行方向とは反対側に顔を向けている。つまり、七輛の客車はお尻を向けた機関車に両端を挟まれている。
「×番線に停車中の、天陽行き急行『鶴』の発車は一四時三〇分です。発車までしばらくお待ちください。繰り返します、天陽行き急行『鶴』の発車は一四時三〇分です」
機関車付け替え、車輛点検、物資の補給と、どうしても時間が掛かるのだ。
「肉まん~、あんまん~、焼き栗~」
売り子の声が聞こえ、あんまんと焼き栗の甘い香りが漂ってきた。
歩廊の一角には、旅行者の守護神・草鞋大王(そうあいだいおう)像――姿は、大きな木の下で他人の荷を担いでいる親切な兵士――と、道中安全と家畜の守護仏・馬頭観音像を祭った祠がある。
その草鞋大王像と馬頭観音像に向かって、信心深そうな、この地方の遊牧民のお婆さんが、祈りをささげている。頭上で合掌し、合掌した手を口元、胸と下ろし、跪いて、腕を伸ばして額を地につけた。最後はちょうど、万歳土下座のようだ。これを、「五体投地」という。
急行「鶴」の車掌と給仕頭もやって来た。鉄道院線最大の難所・蒼玉(そうぎょく)峠越えの無事を祈るためだ。菜箸ほどの太さと長さの線香を胸の前で持ち、草鞋大王像と馬頭観音像に深々と頭を下げた。そして、蒼州・空州地方の遊牧民の習慣に従い、薄くて長い白布を草鞋大王像・馬頭観音像の首にかけた。この両像の首には、白布がたくさんかかっている。
他の乗客たちも、五体倒地の礼を取らないまでも、祠にある経文が入った摩尼車(マニぐるま)を回したり、合掌して拝んだりしている。ちなみに、摩尼車とは、回した数だけ中のお経を唱えた功徳を得られる道具。
「×番線の天陽行き急行『鶴』は、間もなく発車したしまーす。次の停車駅は北蒼玉(きたそうぎょく)、北蒼玉です」
発車を知らせる銅鑼の音が響いた。
駅長が、巻いた旗を持った腕を高々と掲げた。
機関車が汽笛を一声鳴らし、発車した。
迫る天崑(てんこん)山脈は、木々の一本もなく、雪をかぶっていない麓の方は赤褐色の荒々しい岩がむき出しになっていた。だが、雪をいただいた上の方は、青い空に雪化粧が映えた凛とした美しさ。その優美な姿は、伝説に「神仙の住まう所」とあるが、大いにうなずかされる。
列車は歯軌条起点。つまり、鉄道院発行鉄道旅行案内書『全国鉄道名所案内』で、「鉄道院線最大の難所」とされる、蒼玉(そうぎょく)峠の登り口に差し掛かった。ここから、一〇〇〇分の六六・七という、鉄道院線最大の急勾配が始まる。ちなみに、鉄道の勾配は一〇〇〇分の二五が常用の限度。
その二・六倍を超える急勾配をどうやって登るのか? こんな急勾配は、四台もの機関車を連結したからとはいえ、普通のやり方では到底登れるわけがない。その秘密は、「歯軌条(ラック)式である。
歯軌条式とは、二本の軌条(レール)の間に、もう一本設けられたのこぎり刃状の軌条を設ける方式。のこぎり刃状の軌条に、機関車の歯車を噛み合わせて昇り降りをする。
起点番が厳重に看視する中、列車は最後尾に連結された、運転の指揮を取る本務機関車の汽笛を合図に速度を落とした。歩くよりも遅いぐらいだ。
先頭一台、後方には三台の蒸気機関車。四台もの機関車は、天を焦がさんばかりに、黒煙を吐き上げた。そして、力強く、列車を押し上げていく。実に頼もしい限り。
ここは、蒼玉(そうぎょく)峠の中腹標高三六六一里――一里は一大里の一〇〇〇分の一――にある、北蒼玉(きたそうぎょく)駅。
山間にこだまする重々しい汽車の響き。下り急行「鶴」は、一〇〇〇分の六六・七という、鉄道院線最大の急勾配を登ってきた。麓の標高二八二八里の蒼寧駅から、中間の蒼玉峠三合目の蒼三信号場を経て、一二・五大理の距離を、一時間三〇分掛った。時速六大里、人の速足ほどの速度である。
急行「鶴」は北蒼玉駅一番線に到着。駅の周りは、銀世界。ただし、積雪は多くなく、餃子や肉まんの皮を作るときに、まな板に振る打ち粉程度しか積っていない。歩廊(ホーム)の軒には、経文を刷り込んだ五色の旗が吊るされている。待機していた係員が機関車に飛び付き、ただちに給水・給炭を開始。
「お疲れ様」
と同時に、機関車から降りた機関士・助士たちを、歩廊で待機していた駅長がねぎらった。
「お疲れ様です」
機関士たちは、拱手の礼――握った拳を胸の前で併せる礼――をしながら返礼した。
駅長は武官朝服によく似た服装。
機関士・助士たちは大工のような格好。一二・五大里、一時間三〇分の上り坂の激闘のめ、厳寒のさなかにもかかわらず、全員汗だくだ。
本務機関士が駅長に、通票が入った大きな輪っかを手渡した。駅長は、輪っかを肩から提げ、小走りに駅舎へ駆けてゆく。
機関車と機関車の間に挟まれた七輛の客車から、乗客たちが続々と歩廊に降り立った。ただ、誰一人、改札口へ向かう者は居なかった。
「北蒼玉~、北蒼玉~、機関車給水・給炭、および機関車乗務員交代のため、一〇分間停車いたします。発車は、一六時一〇分でございます。繰り返します。一番線停車の天陽行き急行『鶴』の発車は、一六時一〇分でございます。お乗り遅れなきよう、ご注意願いまーす」
「さっきも、食べたでしょ。また、買い食いですか? 食べ過ぎて、高山病になっても知りませんよ」
忠元は、羊の串焼き肉を頬張りながら、あんまんの包みを抱えた銀玲に声を掛けた。
「大丈夫、大丈夫」
銀玲は、あっけらかんと笑った。
「これ、ほんとに大丈夫か?」
忠元はぽつりとひと言。裁文と芳雲と共に、顔を見合わせて、ため息をついた。
冬晴れの澄んだ青空。木々がなく、雪をいただいた六千里級の山々。翼を広げた神々しい青い鳥。
その青い鳥が、翼を広げて、ゆっくりと停車中の急行「鶴」の上へ降りてきた。
「閣下、鸞鳥(らんちょう)です」
列車給仕が忠元に声を掛けた。
鸞鳥とは、聖鳥・鳳凰のうち、青味が強いものをいう。
列車給仕たちが乗客に知らせたためか、ほとんどの乗客が歩廊に降りて、空を見上げている。
「閣下、珍しいですよ、鸞鳥がここまではっきりと姿を見せてくれるのは。こんなの、私たち列車給仕や車掌でも、二、三年に一度ぐらいですよ。普段は、遠くにちらりと見えれば、運がいいほうですからね」
「そうですか」
忠元はうなずいた。
道中安全の守護仏・馬頭観音や旅行者の守護神・草鞋大王に捧げられた、酥油灯(バターランプ)と線香が香る歩廊。
この地域に住む遊牧民たちだろうか。経文を読む声が聞こえてきた。それも、歌うように。
『全国鉄道名所案内』にはこうあった。
「蒼州首府・蒼寧―空州首府・天陽間の街道は、古来より数多くの隊商・巡礼者が行き交い、都・長洛とも繋がる重要街道。しかし、標高四四九五里の蒼玉峠、五〇六八里の天境峠あり。この二大峠越えは、古より命がけの難事。この街道沿いに雲表本線が通じたとはいえ、峠越えは難事に変わらず。ゆえに、鉄道官吏はもとより、地元遊牧民の乗客は極めて信心深い」
鸞鳥は、ゆっくりと天高く上り、西へ飛んでいった。
通票の入った輪っかを提げた駅長が、小走りに列車に向かってきた。そして、最後部の機関助士に輪っかを手渡した。
「蒼七、通票四角(よんかく)!」
機関助士による、通票確認の指差し歓呼。
進行方向の腕木信号機がひと揺れして、青信号を現示――表示――。
駅長が腕を高々と上げる。
汽笛一声。
急行「鶴」は峠の頂上、蒼玉駅へ向けて、ゆっくりと動き出した。
傾いた日が、その光をだんだんとだいだい色の濃さを増す中、列車は残り半分の上り坂を懸命に登っていく。
天崑山脈はさまざまな表情を見せていた。
荒々しい武人のごとき姿。
謹厳な師。
凛として近寄りがたき女仙。
清濁を全て飲みこんだ翁。
北蒼玉駅と、峠の頂上・蒼玉駅との中間地点、七合目にある蒼七(そうなな)信号場。向かいの線路には、対向列車が行き違いのために待機していた。
最後尾の本務機関車の機関助士が、機関車から半身乗り出し、信号場入り口の渦巻き状の通票受器に輪っかを引っかけた。そして、信号場内の真ん中のお立ち台に立っていた信号場長が高く掲げた輪っかを、その腕から取り上げた。子供に見られると、「列車の窓から顔や手を出してはいけない」と教えても、説得力が一変に失せる光景。
急行「鶴」一等寝台車個室内。
「見えたか?」
榻(とう)――寝台兼長椅子――の上で、あぐらをかいていた忠元は、窓に顔を押し当てて、しきりに後ろを見ていた裁文に声をかけた。
「やっぱり無理ですね。窓を開けて顔を突き出さないと。通票の通過授受、見たかったんですが。夏だったら、窓を開けられるんですけど」
裁文は残念顔。
ちなみに、通票とは単線鉄道の対向列車との正面衝突、および先行列車後方への衝突を防ぐ列車防護のための証票。信号場を含め、行き違い設備のある駅間同士――この場合は蒼玉駅―蒼八信号場間――に唯一ある通票を持った列車に限り進入を許すことで、衝突を防いでいる。いわば、独占通行手形である。
「今度、私が文を書くから、裁文が絵を描いて、鉄道旅行記を、鉄道院の出版部に持ち込んでみようか?」
「それ、いいですね」
高地の厳寒の中とはいえ、車中は春の暖かさだ。
蒼寧―蒼玉間二五大里、出(いで)てはくぐる隧道(トンネル)は、大小合わせて六五。登り勾配の下り列車は、力いっぱい黒煙を噴き上げ登っていく。そんなことをすれば、機関車の運転室はもとより、客室内が煙たくて仕方ないのでは、とお思いか? 隧道内では、罐に除煙丹(じょえんたん)という仙薬を混ぜて石炭を焚いているので、煙は出ない。しかがって、夏なら窓を開け放しても、全く問題はない。むしろ、神山の空気を胸いっぱい吸い込むことができる。
日暮れが迫ろうとする、一七時四五分。汽車はついに、二時間四〇分をかけ、麓・蒼寧からの距離二五大里、標高差一六六七里、一〇〇〇分の六六・七の急勾配を登り切った。
定刻の一七時五五分、蒼玉峠の頂上、蒼玉駅に到着。
歩廊には、等身体の釐牛(ヤク)のぬいぐるみ。釐牛とは、長くて黒い毛を持った牛の仲間。首には「蒼丘(そうきゅう)高原へようこそ」と書かれた札を提げている。
すぐに、列車に係員が飛び付き、峠越えの大任を果たした後方三台、先頭一台の機関車を切り離した。先頭の機関車が去っていくと、新たな機関車がやってきて、連結された。
その間、急行「鶴」の給仕頭が、菜箸ほどの長さと太さの線香を三本胸の前で持ち、三度お辞儀し、歩廊の草鞋大王像と馬頭観音像に無事な峠越えの感謝をささげた。
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寿国演義 庶民出お転婆皇后と、天空聖地と、雲表列車 (再投稿)の返信 (No: 2)
投稿日時:
最初だけ読ませていただきましたが、
知識がないと分かりにくいといった印象を受けました。
初めての説明が多く、ついていけなくなりました。ごめんなさい。
(「鉄道院の三等初乗り運賃・駅の入場券は、」くらいで)
また、世界観の説明の仕方にもっと工夫が欲しかったなと、感じました。
「冬のある日、寿国(じゅこく)の都、長洛(ちょうらく)。その一角にある昌(しょう)家の屋敷。」
どんな街並みなのか、どんな都なのか、伝わりません。軽くで良いので、説明が欲しかったです。
その一角って、貴族などの裕福層の家ですか。下町の庶民の家ですか。その辺から、読みながら情景が分からないです。
あと、中国風の世界観で、最初の登場人物の説明ですが、
「どこかの屋敷の下働きにも見える少女」って、どんな感じなんでしょうか。
私には分かりませんでした。
「薄紅色の筒袖上衣に、中紅色の裳(スカート)姿。」
中華風な装いなのは名称のイメージで伝わります。
ただ、わざわざ衣の種類まで説明して下さってますが、
そもそも筒袖上衣ってどんな形なのか知らない私には、
その恰好までは想像できませんでした。
ネットで検索した結果、袂がなくて動くやすい恰好なんだなぁというのが分かりました。ここでは庶民の多くが着用しているものである、と説明があると良かったです。
一方で、中紅色の裳(スカート)姿は、このスカートという説明のお陰で、
なんとなく私には想像がつきました。
あと、「この部屋の主で」以下で登場人物の説明がありますが、
それでなくても初出の人物なのに、説明対象がころころと変わるので、いちいち前の文章を読み返さないと誰だったのか、分かりにくかったです。
あと、誰の視点に寄ってない三人称の文章の最中に、「ちなみに、銀玲は天女の侍女だろう。」という推定は止めたほうがいいです。「銀玲は天女の侍女だ」と断定したほうが良いと思います。
「この年ながら、皇帝に直属し、寿国で刑事・民事一切の裁判を行う役所、太法院(たいほういん)の判事見習。」って、この文の前に銀玲のことを書かれているので、銀玲の説明にも受け取られる恐れのある書き方にもなっています。読みながら、どちらの説明だろう?って疑問に思いました。
「昌家は、代々清廉な官吏や、優れた学者を輩出した名家。」と昌家の説明が続きますが、登場人物の容姿の説明と一緒に行っているので、説明過多のように感じます。
「冬のある日、寿国(じゅこく)の都、長洛(ちょうらく)。その一角にある昌(しょう)家の屋敷。」の説明のときに、軽く触れていれば、不要だったのではないでしょうか。
それと、登場人物の紹介、特に容姿や恰好の説明の書き方ですが、
全部いかにも説明文といった感じなので、もっとバリエーションを増やされたほうがいいと思います。
動きの地の文に、さりげなく説明を混ぜることも可能かと。
たとえばですが、
「この部屋の主で、十六歳の少女、昌芳雲はそう言いながら、チラシを欧裁文(おうさいぶん)に手渡した。その際に彼女の?色の広袖が軽く揺れた。」みたいな感じで。
自分のことを棚上げして、色々と口うるさく書いて申し訳ございません。
参考になれば幸いです。
ではでは、失礼しました。
長所。良かった点
重厚な世界観。
鉄道を扱った作品を、私はあまり見かけなかったので、それもオリジナリティとして感じました。
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寿国演義 庶民出お転婆皇后と、天空聖地と、雲表列車 (再投稿)の返信の返信 (No: 4)
投稿日時:
>藤谷要さん
ご批評ありがとうございます。ドラコンです。
>どんな街並みなのか、どんな都なのか、伝わりません。軽くで良いので、説明が欲しかったです。
このご意見はごもっともです。町の情景を1ページ目の1行目から書くのもどうかな、との思いもありました。実は列車に乗る前に、駅のレストランで壮行会的に食事をする場面を書き、そこで都や駅について、少しは書きました。ですが、あらすじ(コメント)のほうでも書きました通り、2万字書いたところを、無理やり字数制限の1万字に縮めてと投稿しました。ですので、駅のレストランの場面や乗った列車の車内設備の場面は、あまりストーリー性がないこともあり、省略しました。それに、いちばん書きたかったのは、後半の列車に乗っての峠越えの場面でした。
衣装については、どんな人(職業や身分)が好むのかを書いておいたほうが良かったですね。後半のほうでは、衣装描写をかなり大まかにした箇所もありますが。
また、3等の初乗り運賃や駅の入場券代を書いたのは、1両=1円の換算レートを知ってもらう狙いもありました。鉄道運賃は、物価の変遷を知る一つの目安ですので。
寿国演義 庶民出お転婆皇后と、天空聖地と、雲表列車 (再投稿)の返信の返信の返信 (No: 6)
投稿日時:
度々すいません。
以前書いた感想が分かりづらかったみたいで申し訳ないです。
>また、3等の初乗り運賃や駅の入場券代を書いたのは、1両=1円の換算レートを知ってもらう狙いもありました。鉄道運賃は、物価の変遷を知る一つの目安ですので。
とありましたが、1両=1円とは通じませんでした。
以下の参照資料ですが、
https://www.jacar.go.jp/seikatsu-bunka/p09.html
「運賃を見てみると、新橋-横浜間では、片道だと、上等車1円、中等車60銭、下等車30銭。これが往復になると、上等車1円50銭、中等車90銭となっており、25パーセントの割引になっています。この当時、お米10キログラムが80銭、卵100匁(375グラム)が10銭でしたから、鉄道というのはとても高価な移動手段だったことがわかります。限られた人々にしかできない贅沢であったと言えるかもしれません。」
とあり、時代により、物の価値が全然違うため、作者様の思った通りの情報は私には伝わりませんでした。
また、「鉄道院総裁か、府尹(ふい)・州牧(しゅうぼく)に登録して、鑑札を受ける必要があります。」という文章も「鉄道院総裁か、地方の長官から、鑑札を受ける必要があります。」と置き換えれば、
わざわざ府尹・州牧、地方行政単位に触れずに済むかなぁと。
私も過去に指摘されたことがあるのですが、冒頭で説明過多は避け、情報を小出しにしたほうがいいそうです。
以下に、前に書いた感想では、こういうことを言いたかったんだと、例としていじった文章を載せておきます。下手で申し訳ないですが(;_;)。
今回は、実際に直したほうが伝わりやすいかなぁと思ったのと、他人の方が情報の取捨が客観的に分かり易いと思ったからです。今後、こういった文章の指摘が減るようにと、あくまで参考になればと思って書きました。
どうしてこんな風に変更したんだろうって、疑問に思ったところがあれば、さらに質問をくださっても構いませんし、ご迷惑でしたらスルーして下さって構いません。
他の方もおっしゃってますが、冒頭から事件が起こっていて、構成がいいと思います。
また、実は皇后っていう設定も面白そうですし、こういう問題や謎を探ったり解決したりするストーリーは好みなので、作者様に期待しています。
では、本当に度々、失礼しました。
冬のある日、寿国(じゅこく)の都、長洛(ちょうらく)。四百年続く王国の宮殿を中心に碁盤の目のように街並みが広がっている。昔の趣を残す建物が多い中、通りにはガス灯が設置され、古い石畳の上を蒸気の自動車が通る。その中心部の一角に昌(しょう)家の屋敷がある。代々清廉な官吏や、優れた学者を輩出した名家だ。
そこに一人の少女――張銀玲(ちょうぎんれい)が訪れる。両耳の上で結われた鳶色の団子が、歩くたびに軽く跳ねる。薄紅色の筒袖上衣に、中紅色の裳(スカート)という庶民と変わらぬ姿。場違いな身なりにも関わらず、すんなり奥に通された。
部屋の主である芳雲(ほううん)と先客が、彼女を出迎える。
部屋のほとんどが堅苦しい法律書の本棚に囲まれている。一部の詩集や恋愛小説、壁に掛けられた唯一の花鳥画が、僅かながら主の女子らしさを覗かせる。
「来る途中にこんなのもらったんだけど」
挨拶もそこそこに銀玲が椅子に座りながら、芳雲に一枚のチラシを差し出した。
「『天空聖地巡拝団募集』? 『天陽(てんよう)の聖地巡拝と遊牧の土地十日間の旅。雄大な自然の中で、聖典研究をしよう! 宿泊は大本山宿坊。五〇〇〇両』? えっ、安過ぎますわね」
受け取った十六歳の少女、昌芳雲はそう言いながら、目を丸くする。
深衣姿という裾が曲線的で長い、良家の子女らしい淑やかな身なりだ。黒くつやのある髪の毛を、頭上で心臓型(ハートマーク)――ア(Yに似た漢字)頭――に結っていた。この年ながら、皇帝に直属し、寿国で刑事・民事一切の裁判を行う役所、太法院(たいほういん)の判事見習だ。
芳雲は嫋やかに広袖を揺らし、隣席の張銀玲(ちょうぎんれい)にチラシを渡す。
「これは安過ぎて、明らかに怪しいですよ」
彼は携帯版の時刻表を懐から取り出し、営業案内を確かめた。無類の鉄道好きなので、時刻表は常に持ち歩いている。彼の年齢は十五で成人済みだが、駅で「大人」と言わずに切符を買えば、右端が斜めに切り落とされた「小人用」が出てくるほどの童顔だ。小ぶりの広袖上衣に、桍(ズボン)姿。いかにも良家のお坊ちゃんという雰囲気。芳雲とは幼馴染で、同じく判事見習だ。
「長洛―天陽間は、普通列車の三等座席車でも、大人片道一万五六六〇両しますよ。しかも、天陽まで一番速い急行でも、三日かかりますからね。小人運賃が半額の七八三〇両ですから、五〇〇〇両ならそれよりも安い。
それにこれ、不特定多数に配っていたわけですよね? だとすれば、違法ですよ。不特定を対象にして団体旅行を主催するには、鉄道院総裁か、地方の長官から、鑑札を受ける必要があります。けど、このチラシにはその鑑札番号が書いてないですよ」
「五〇〇〇両で旅行できるなら、安いわね。わたしのお小遣いでも、出せるわね。申し込んでみようかしら」
と銀玲。
五〇〇〇両は、大人一人の米代三ヶ月分に相当する。ほんの少しばかり背伸びすれば庶民でも可能な旅費だ。
寿国演義 庶民出お転婆皇后と、天空聖地と、雲表列車 (再投稿)の返信の返信の返信の返信 (No: 7)
投稿日時:
>藤谷要さん
再度ご意見ありがとうございます。ドラコンです。
最初のご意見を拝読して、出だしの舞台が芳雲宅である必要性を感じなくなりました。むしろ、「鉄道」に重きを置くなら、駅のレストランでの壮行会の場面から始めるのもアリ、と考えなおしました。投稿時に省略しましたが、駅の場面は既に書いてありますので、今、「駅版」を書き直しているところです。
ただ、「駅版」だと関係者が一堂に会しているので、芳雲宅でやったような、鏡を使ったテレビ電話会議ができません。このため、「魔法が存在する世界」を早々に示せづらいのが、欠点です。一方で、駅、それも駅内のレストランが舞台ですので、食事の面から作中の生活は描きやすいと考えています。それに、衣食住のうち、住も駅舎がどんな建物かを少しは書くことができます。
作中の物価についても、鉄道運賃しか出さなかったのは誤りでしたね。比較対象になる他の物価も、言及することとします。
寿国演義~おてんば皇后が行く鉄道の旅 (No: 3)
投稿日時:
はじめまして。アウトサイダーKと申します。
残念ですが、私には貴作についてご意見を申し上げることができません。
なぜなら、掲載されている文が、二万字の文章を強引に一万字にされたものであるからです。
読んでいて文章に違和感を覚えましても、これが文章本来のものなのか、それとも圧縮により歪められたものであるのか判断がつかないため、適切なご意見を差し上げられません。
書かれた二万字を全て読んでもらいたいのであれば、「小説の批評をし合おう!批評・感想交換の場『ノベル道場』」の方に相談なさることをお勧めいたします。
その際は、Dropboxなどのクラウドに上げ、リンクを知っている人のみに対しての限定公開をするなり、Privatterでパスワード限定公開するなりの手段を取れば、小説投稿サイトを使わずとも、作品掲載場所のURLを載せることができるかと思います。
タイトル案
寿国演義~おてんば皇后が行く鉄道の旅
長所。良かった点
文章の前半4,400文字を拝読しました。
話の流れにつきましては、冒頭からホットな話題(怪しい格安旅行、怪しい宗教団体)を出されていて、読者の興味を惹くものとなっていると感じました。
良かった要素
ストーリー
寿国演義~おてんば皇后が行く鉄道の旅の返信 (No: 5)
投稿日時:
>アウトサイダーKさん
ドラコンです。コメント恐縮です。
私もそうですから分かりますが、小説を読むこと、まして批評することは、相当の時間・労力を要します。ですので、決してご無理をなさいませんように。
プロローグ前半について、ご評価くださいましたことに、お礼申し上げます。「三国志」の黄巾党のように反乱を起こしたわけでもなく、また企てた証拠もないのに、最高裁長官・検事総長・法務大臣的な忠元が自分から首を突っ込むにしては、「事件が小さい」ことはないでしょうか。
また基本、会話に終始していて、福地寺が強引な勧誘をしているわけでもないので、出だしとしては弱いかな、とも考えていました。
なお、事後で恐縮ですが、何てかこうか? さん作『ステーキ! ステーキ! ステーキ!』の拙批評にて、アウトサイダーKさんのご批評に言及させていただきました。この旨、この場にてご連絡申し上げます。