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もしも貴方の元に可愛い吸血鬼が訪れたなら…第3話 全10話で完結

もしも貴方の元に可愛い吸血鬼が訪れたなら…の第3話

作者 粘膜王女三世 得点 : 1 投稿日時:


 〇

「この世界にはこんな代物が存在しているのね」感心した表情で、少女はフィギュアを手に取った。「精巧な人形だけれど、とても変わった格好をしているわね。いったい何を模しているの?」
 俺は正直に答えた。「ヴァンパイア」
「は?」
「いやだから、ヴァンパイア」
 フィギュアが飛んできた。
 すさまじい勢いで投擲されたフィギュアを顔面に食らい、俺は頭上に星をきらめかせながら床に転がった。死にそうになりながら少女の方を見ると、フィギュアを投げつけて来た彼女は冷たい表情で不服そうに言った。
「私達はみだらな格好はしないわ」
 俺は床に転がったフィギュアを拾い、壊れていないことをよく確認した後で立ち上がった。
「いや、知らんし……。というか、『私達は』ってなんだよ。まさか、君自身がヴァンパイアであるとでもいうつもりか?」
「いうつもりよ」少女は息を吐いて肩をすくめる。
 見れば見る程美麗な少女だ。すっきりとした顔立ちをしていて、切れ長の瞳と薄い唇は、人間のものとは思えない程鮮やかな紅色をしていた。肌は信じられない程に白く、漆のような髪は腰のあたりまで伸びている。年は十五歳前後だろう。
 素っ頓狂なことを言っているように聞こえる。だが、先ほど俺の背後に一瞬で回り込んで見せたあの動きを思い出すと、普通の人間でないことは確かであるようにも思えた。
 少女は俺のことなど無視しているかのように、勝手に冷蔵庫を開けて中を漁ったりなどし始める。行動の一つ一つが非常識だ。見栄えの良い少女だからとつい家の中に入れてしまったのがまずかった。言うべきことは言っておかねばならない。
 俺はフィギュアを片手に主張する。「それは高価なものだ。粗末に扱わないでもらいたい」
「あなたはこれから私に血を吸われて死ぬのだから、持ち物が壊れる心配をする必要はないわよ」
「何を言っているんだ?」
「私達ヴァンパイアは新鮮な血液以外を口にしないの。あなたはまずそうだったから、何か他に食糧になるものがこの家にあるのならと思ったのだけれど……こうなったなら仕方がないわね」
 少女は冷蔵庫を閉じる。
「あなたで我慢するしかなさそうね」
 先ほど俺の背後に回った時のような敏捷な動きで、少女は俺の懐へと飛び込んでくる。そして真っ赤な唇を開くと、ぞっとするほど鋭い犬歯を持って俺の首元へと食らいついてきた。
 犬歯の食い込む灼熱の痛みに身もだえる間もなく、全身の血を吸われる恐ろしい感触が冷気のように俺を襲った。
 意識が遠のく。
 最後に俺が目にした光景は、俺の首に食らいつきながら、妖艶な表情をこちらに向ける美しいヴァンパイアの顔だった。

 〇

 気が付くと、夜の林の中にいた。
 木々の切れ間に見える空には星なんて一つもなくて、代わりに、見たこともないような大きな大きな満月が陰湿な表情で俺の方を見下ろしていた。
 土と木々の匂い。気が動転している俺の頭上から、鈴を転がすような声がした。
「あ! 起きたですねー」
 仰向けになる俺の頭元に女の子座りして、こちらを見下ろすその子はこれまたたいそうな美少女だった。輝くような金色の髪をショートボブの形にしていて、青い瞳でこちらをじっとのぞき込んでいる。ニコニコと屈託なく微笑ませた表情は幼いが、顔だち自体は十五歳前後だろう。
 何より特徴的だったのは、丸い頭の上にキラキラと輝いている天使の輪のような金色の物体、そして背中から生えた真っ白い大きな一対二枚の翼である。
「天使?」俺はつぶやいた。「俺は……死んだのか?」
「もし死んでたら来るのはあたしじゃなくて死神さんですよー。やだなー」少女はけらけら笑う。「まあ、あなたはもう一生死神さんと会わなくて済む体になっちゃったんですけどねー」
「いったいどういう……?」
「あなた、ヨルコちゃんと会いましたよね? 吸血鬼の女の子」
「変な女に血を吸われた。あの子は、ヨルコという名前なのか?」
「そうでーす。ちなみにあたしの名前はマヒル、あなたを連れ去りに来た天使です」
 天使だの吸血鬼だの並べ立てられて頭が痛くなる。
 いわゆるアニメオタクである俺は天使だの吸血鬼だのという存在をテレビ画面を通してたくさん目にしてきた。だがそういう存在と実際にあっているとなるとさすがに信じられない。美少女がコスプレをしていると考えた方がしっくり来るのだが、それにしては光輪も翼も本物っぽすぎるし、ヨルコという吸血鬼に血を吸われた記憶も嘘とは思えない。
「何があったんだ?」俺は身を起こし、天使の少女……マヒルと向き直る。「説明してくれ」
「ヨルコちゃんはここじゃない世界の犯罪者でぇ……逃走の果てにこの世界へと逃げ込みました」マヒルは人差し指を立てて俺に言い聞かせる。「あたしことマヒルちゃんは、数多ある世界の規律を守る天使として、ヨルコちゃんのことを追っていました。彼女の足跡をたどる途中、ヨルコちゃんに血を吸われて吸血鬼となったあなたと遭遇、このとおり確保したという次第なのです」
「吸血鬼……? 俺は、吸血鬼になってしまったのか?」
「はい、そうです。自分の口の中に手を入れてみてください」
 俺は言われた通りにする。
 もしやと思い、自分の犬歯に手をやると……カミソリのように鋭い感触があった。
 今まで付き合ってきた犬歯と比べても相当に大きく、そして尖っている。まさか、そう思い立ち上がってみると、今まで自分が使ってきた体とは思えない程身軽であることに気が付いた。
「生やそうと思えば翼も生やせますし、尻尾も生やせます。牙だけは引っ込めようがないのですけどね。身体能力もアップしていますし……なにより、生き物を血を吸うことが可能です。そして……」
 マヒルはいいながら立ち上がり、俺の肩を掴んで微笑んだ。
「噛み付いた相手を吸血鬼にしてしまいます。毎日一人は血を吸わないと気がすまなくなってしまっているはずですよ。困りましたねぇ」
「そんな他人事みたいな……」
「他人事じゃありませんよぅ。吸血鬼と化したあなたを連れて、地獄の牢獄に幽閉するのはあたしの仕事なんですからぁ」
「はあ……? いったいそれはどういう……」
「あなたはもう人間ではなくヴァンパイアなのです。この地球上に生かしておけば、どんどん仲間を増やしてしまいます。善良な人たちがその尊い人生を絶たれ、化け物にされてしまう……それはとても良くないことです。隔離しておく必要があります」
「どうして?」俺は目を剥いた。「どうして俺がこんなわけの分からない目に合うんだ?」
「運が悪かった?」マヒルは唇を尖らせて首を傾げる。「気を失っている内に地獄へとお連れしても良かったのですが……最後に地球の空気を吸わせてあげようと思いましてね。優しいでしょう? 決して変なタイミングで目を覚まされても面倒だから人目のないところで説明を澄ましちゃおうとか思ってた訳じゃありませんよーだ」
「おかしい! 俺は何も悪いことはしていない!」
「吸血鬼は生きているだけで犯罪者です。奴ら恐ろしいまでの繁殖力を誇りますから、ちょっと目を離している内に世界中を埋め尽くしちゃうんですよねぇ。だから数の少ないうちに対処しないととんでもないことになるんですよ。だから厳重に隔離していたんですがヨルコちゃんったら逃げ出しちゃうんだから。仕事増やしてくれますよまったく。牢屋に戻ったら今までの二倍イジメちゃおうっと。さぁて」
 マヒルはにっこり微笑んで俺の方を見る。
「それじゃあ地獄へ行きましょうか、芥川さん。大丈夫すぐに独りぼっちじゃなくなりますよ。今頃ヨルコちゃんが仲間を増やしてくれてる最中ですからね」
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作者コメント

 自分の腕前ではどいつもこいつもイマイチキャラが立たないので次の人はその辺補ってくれると助かります。

 ファンタジーってめったに描かないんですけど、たまに書いてみると用語とか考えるのが面倒ですね。だから苦手なんですけども。

追加設定(キャラクターなど)

 ヨルコ:異世界から地球へと逃げて来たヴァンパイア。ヴァンパイアは生きているだけで犯罪者として天使から追われる。
 マヒル:異世界からヨルコを追って地球まで来た天使。
 芥川:主人公。名前つけてみた。

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