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ホワイトルーム

作者 労働会議 得点 : 3 投稿日時:


 気が付くと、そこは真っ白い部屋である。
「ここどこ?」
 私は懸命に周囲を見渡すが、はるか地平線まで真っ白である。空間感覚がマヒしそうだ。目の前にこれまた真っ白い小さな発券機がある。ボタンが一つあるだけで説明書きも何もない。
「何だこれ?」
 とりあえず、押すだけ押してみる。すると、発券機がカタカタと音を立てて、発券される。そこにはただこう書かれていた。

 ホワイトルームへようこそ。外へ出たければ出口を探してください。

 ただそれだけである。出口も何も、窓も、ドアもどこにも見当たらない。言い知れぬ不安がこみ上げる。なんでここにいるのかも分からないし、自分が何者かもわからない。
 ポケットを無意識に探ると、ケータイがあった。期待が膨らむが、電源が入らない。むしゃくしゃして投げつけようとするが、思いとどまる。
 何かの役に立つかもしれない。
 そっとしまい込み、周囲を見渡す。じっとしていても、何も始まらないし、何よりずっとここにいるわけにもいかない。とりあえず、壁があるところまで移動しようと真っ直ぐへ歩くが、いくら歩いても壁に突き当たらない。
 恐怖感にかられ、叫ぶ。走り出す。けれど、何も見つからないし、返答もない。ただただ疲労感が募るのみである。
 そのうち、自分がどこにいるのかも分からなくなる。何時間歩き続けたのかもわからない。いや、時間の感覚ももうないから、数日経過しているのかもしれない。
 のどが渇いた。
 お腹が空いた。
 けれど、どこにも水も、食料もない。
 がむしゃらに歩いていると、こつんと何かにぶつかる。それは最初目にした白い発券機である。
 「くそっ」
  八つ当たり気味に足で小突く。が、何かはこのようなものに当たる。手に取ると、それは真っ白い木箱である。通常であれば、見過ごしてしまうような。
 箱を開けると、電源が入ったケータイがある。
 急いで操作するが、利用できるのはメールだけのようだ。それも、”助言者”と登録された人物にしか送受信できないものである。
 驚くことに、その人物からすでに3件メールが入っていた。

 1通目 
 よく聞いてくれ。これはお前の命がかかっている。選択によっては死ぬことさえあるんだ。これを見たら、すぐ返信してくれ。
 
 2通目
 いいか。取り乱すんじゃないぞ。冷静になれ。取り乱したら、終わりだ。お前は生きてここから抜け出すことはできない。

 3通目
 おい。時間がない。早く返信をくれ。

 慌てて返信する。
(今、メールを確認しました。一体どういうことですか?)
 すると、すぐに着信がある。
(良かった。時間がない。これから、言うことを聞き洩らさず確実に実行してくれ。出ないと、一生お前はここから出られない)
 一生出られないという言葉、さらにその切迫した文面に、見知らぬ相手からのメールなのに、私は何故だか素直に受け入れた。
(分かりました)
(まず、ここを抜け出すには制限時間がある。そして、ここを抜け出すための基準はこの発券機しかない。その発券機は動かせる。床にくっついていない。動かしたら、下へ続く階段があるはずだ。急いで降りろ!)
 私はあわてて発券機に手を付ける。重いが、動かせないほどでもない。横へずらしていく。
 すると、石造りのらせん階段が下へと続いていた。段数はかなり長い。
 メールにあった通り、急いで駆け降りる。その間も、何件もメールが届き、どれも”急げ”というものだった。
 ただでさえ疲労困憊の上に、急いで駆け降りるものだから、息も途切れ途切れである。
 その時だった。突然、真横を石のブロックが落下して通り過ぎる。
 頭上を見渡すと、螺旋階段の最初の段が落ちていた。
 嫌な予感がする。その後はドミノ倒しのように、次々と段が落ちてくる。下は奈落の底。石がぶつかる音さえしない。急いで駆け降りる。
 急げ。急げ。急げ。
 どんどんと段が落ちる音が忍び寄る。
 最後は飛び込むように、越える。すぐ後ろで落ちる音が響く。
 飛び込んだ場所は階段ではなく、崖の上である。
 どうやら、助かったようだ。
 息も絶え絶えである。一呼吸入れた後、ずっと気になったことを確認する。
(あんたは誰だ?)
 すると、すぐに返信が届いた。
(お前を助けられる生還者だ。さあ、一緒にここから生きて出るぞ)
 ここから出る?こいつは何を言っているんだ?
 目の前には暗い、暗い洞窟が続いていた。
 まだ、危機が去ったわけではないようだ。
 洞窟を歩きながら、メールをする。
(なあ、一体、ここはどこなんだ?)
(残念ながら、よく分からない。ただ、この後が肝心だ。この洞窟を歩いていくと、男と女に出会うはずだ)
 その言葉を聞き、ほっとする。
(ほかにも、似たような人がいるのか?)
(だが、女のほうは信じるな。あいつは敵だ。あいつを信じると、いずれ裏切られる)
 何を言っているのだろう。顔も見えないメールのやり取りの相手が、これから会うことになる人を信じるな?説得力がない。
(出会ってから、しばらくすると地震が起こり、地割れが発生するはずだ。そしたら、女の代わりに、男の手を取れ。いいか。間違えるんじゃないぞ。男のほうだ!)
 しばらくすると、広い空間に出る。そこから道はさらに枝分かれするが、前方の道から誰かが走ってくる。
 服装が乱れている女性である。
「助けて。追われているの」
 女性はおびえた様子で私の後ろに隠れる。すると、その後からナイフを持った男が現れる。いかつく、がっしりとした体型だ。
「おい。その女を渡せ」
 女が叫ぶ。
「言うこと聞いちゃだめよ。そいつはここにいた人たちを殺した殺人鬼よ。ほら、見て。ナイフに血が滴っているでしょ?」
 見ると、ナイフに血が滴っている。けれど、男は否定した。
「嘘を言うな。これはヘビを捌いたときに付着した血痕だ。その女は危険だ。耳を貸すな」
「ヘビなんているのか?」
 男は大きくうなずく。
「ああ。いる。現に、俺は何匹も食べて生きている」
 さて、どちらを信用していいものやら。
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作者コメント

終盤の男性は人を殺めていません。生きるために、仕方なく、ヘビを捌いて食べていただけです。サバイバル環境では仕方のないことなのです。

追加設定(キャラクターなど)

私 主人公。性別は未設定。
助言者 未来の主人公。
男 サバイバル技術あり。主人公の敵ではない。けれど、本能のままに生きている。
女 主人公を監禁した側の人間。スパイ。協力的であるが、すべては情報を筒抜けにし、罠へ誘導するため。

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