「立ち漕ぎのスーツ淑気をひるがへす」の批評
立ち漕ぎ(自転車による全力疾走)をすると、スーツの裾がひらひら舞い、翻る。その様子は、まるで淑気を翻しているかのようだ……と、第一感では読みました。
それを受け、軽微な悩みどころが4つ。
【1.下五の語尾の問題】
立ち漕ぎのスーツ淑気をひるがへす(原句)
立ち漕ぎのスーツ淑気をひるがへし
景の動き(自転車による全力疾走+スーツの裾が舞う様子)を重視するなら「ひるがへし」として、最後を切らずに終えるのも手かも。逆に「ひるがへす」と言い切れば「淑気をひるがへす」という行為その物に重心がいく(=「「淑気をひるがへす」という事象を発見した」というようなニュアンス)。
どちらが良いかは、書き手の選択によります。
【2.中七の措辞の問題】
立ち漕ぎのスーツ淑気をひるがへす(原句)
立ち漕ぎのスーツの淑気○○○○○
「スーツ=淑気」の扱いで良いならこの形も手だが、「スーツ≠淑気」を明確にしたい場合は使えない。
【3.急所を「(淑気を)ひるがへす」にするか「淑気」にするかの問題】
「スーツが翻る」と「淑気を翻す」が連携しているのは句を見れば何となく分かる(読みが間違っていたらごめんなさい(>_<))ので、「ひるがへす」よりも「淑気」の方を急所に据えた方がインパクトが出るかも。
立ち漕ぎのスーツの抱く淑気かな
立ち漕ぎのスーツの○○○淑気かな
ただし、この場合は音数の調整のため「ひるがへす」を消す必要がある。「ひるがへす」は書き手の工夫だと思われるので、消すのは非常に躊躇われる。また、散文の語順にかなり近いため、かえって味が出ないかもしれない。
これとは別に、
立ち漕ぎのスーツひるがへす淑気(破調:八八編成)
として、「立ち漕ぎのスーツひるがへす」「ひるがへす淑気」のコンバインド俳句
にする方法もある。ただし、この場合は調子の関係上「淑気」がちょっと浮く。また、先程と同様「スーツ≠淑気」を明確にしたい場合、これは使えない。
……一周回って、やはり急所は「(淑気を)ひるがへす」の方が良いような気がしてきました(^_^;)
【4.「淑気をひるがへす」という語そのものの問題】
「翻す」は、「さっと裏返しにする/からだを踊らせる/態度などを急に変える/風になびかせる・ひらめかす」の意味らしい。
私は、第一感では「さっと裏返しにする」の意味で読んだが、淑気そのものに裏表など無い(と思われる)ので、ちょっとした違和感があった。しかし、単に「風に(風のように)なびかせる・ひらめかす」と読めば問題はない。セーフと見るべきであろうか。
こうして見ると……第一感ではちょっと不安定な句のように思えたが、意外にも修正できる余地は少ない。隙がなく、措辞も優れている非常に優秀な句と言えると思います。
……個人的な検証の実験台に使ってしまったようで、申し訳ありません(>_<)
それにしても……「立ち漕ぎでスーツが翻る」から「淑気を翻す」……よく思い付いたものです。何か、物理の「作用反作用の法則」っぽい趣があるような(^_^;)
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遅ればせながら、あけましておめでとうございます。
年末にコメントくださっていた皆様、ありがとうございました。個別に返信できずごめんなさい。
本句は新年に出勤する人の姿を見て詠みました。あらためて今年もよろしくお願いいたします!