キトンブルー(仮題)
スレ主 みつはち 投稿日時:
『青を厭うその国で、青の瞳に見下ろされる夢を見てダリアは目を覚ました。
見知らぬ男、女、そして鮮烈なまでのキトンブルー。繰り返し夢に登場する、少女の知らないなにもかも。異なる世界の記憶を持つダリアは学園への入学を契機に、様々な人間と出会い別れ、学び、そしてその全てはダリアすらも知らない記憶の糸を辿って自らの由来へと迫るために。』
あらすじは上記です。ノベル道場の利用自体が初めての人間ですので、もし何か誤ったことをしている場合などありましたらぜひお教えいただけると助かります。
相談したいのは正直全てなのですが、メインとしてはタイトルとあらすじについてを主にアドバイスいただけると嬉しいです。タイトルは既存の単語そのままという現在の仮題は避けたいと思っていますし、あらすじもいまいち特徴がなくどうにか修正できたらなと考えています。もちろん本文についても諸々拙いところばかりの作品ですので、遠慮なく感想・批評・改善案など何でもお待ちしています。
以下、タイトルあらすじを考えるにあたって必要かと思われますプロローグ後の展開、主軸についておおまかに。
・繰り返す夢は次第に輪郭を帯びていく。男と女は誰なのか、正夢か悪夢か。それとも?
・主人公は転生をする前の人生の記憶がなく、また これはお察しかもしれませんが、次第に揺るがない事実だと思っていた己が『転生者』という事実の真偽さえも朧になっていきます。
・自らの記憶と、また学園ものですので学園で起こる事件や騒動など、それらがひとつに収束するようプロットを立てています。
・キトンブルーがキーワードです
プロローグ
キトンブルーだ、と思った。
キトンブルー《子猫の青》だと、たしかに男が笑ったのだった。
けれども女はキトンを、子猫を愛していたから、その青さえもが嘘だと分かってなお、男を○○することをしなかった。
ぽろりと冷たい感触が落ちてダリアは目を覚ました。
泣いていたのかもしれないなんて寝起きの頭で考えて、すぐに素肌を滑る雫の出どころが違うことに気がつく。眼ではなく肌そのものだ、つまりは涙ではない、冷や汗である。考えれば当然かもしれない。夢の中の男…男?まあ男ではないのかもしれないが推定男であるそれの握った手にははっきりと刃物が握られていて、刃先が鈍く光っていた。刃物を向けられる夢を見れば誰だって冷や汗くらいかく。シーツがほんのり湿っている気がして居心地が悪い。あとは、一応の淑女としての体裁も。しかし女も随分酔狂なものだ。刃なんていう露骨なまでの殺意そのものを向けられてなお愛していると宣った。…それとももしかして、もしかすると男のそれは殺意ではなかったのだろうか?奇妙なくらいの明晰夢は未だ起きたばかりで鈍い動きをしたままのダリアの脳を動かすためのガソリンとなって、ぐるぐると思考を回転させる。
キトンブルー…子猫の、それも少しの間だけ許された青の瞳。偽りの瞳の色とも言えるのかもしれない。青といえばこの国で忌み嫌われている色だ。理由は昔の王家が青の瞳を継承の証としていて、その末代がとんでもない大馬鹿者だったというだけの話。いくら立派な大樹であっても枝を伸ばし続ければやがてその末端に生る果実は痩せ細る。腐敗する。私腹ばかりを肥やしては民に圧政を強いた愚かな政権すべてへの憎しみは当然その頂点に立つ一人に向かって、最終的にはその王家やら本人やらが誇りにし、象徴としていた青の瞳に収束した。国民としてもそれが感情の落としどころだったのだろう。青以外を持つ者を新たな王に据えることで積もり積もった、そしていつまでも続く可能性のあった怨恨をそこで終わりにしようとした。寛容にも、何もかもを許そうとした。年月の流れた今となっては、まあ少し不吉かな…?他の色だったらもっと良いですよね…?くらいのふわっとした認識ではあるが当時は凄まじい迫害の対象となったに違いない。親の敵、という言葉があるけれども文字通りそれにまつわる感情を向けていた人間もたくさんいたはずだ。いわゆる『魔女狩り』のようなものが行われたのかもしれない。いずれにせよ、王に向けられた青への悪感情が青色そのものへの嫌悪へと変化するまでにそう時間はかからなかった。そうしてそれが、長きに渡ってこの国に蔓延っていたのは確かに史実としても語られる事実なのだった。青の瞳なんて縁者以外にもいくらでも生まれてくるものだと、大した学のないダリアでさえも知っているのに。
大した学のないダリアは、大した学のないなりに新しい何かを学ぶことが好きだった。好奇心旺盛ともいう。もしかして妙な夢をみたのもそのあたりの本を昨晩読んだからかもしれない。学ぶことが好きなダリアはそれなりの期待を持って学園に通うことを心待ちにしていたし、それの始まりの日が今日だからこそ昨晩は中途半端なところで気になるその本の続きを読むのを、我慢して……今日?
ぴょん、と飛び起きたダリアがよろめくのもお構い無しに階下からダリアを呼ぶ声が追撃した。
「……ダリア!早く準備してしまいなさい!!」
「はあい!お母様、少しお待ちになっ」て、を音にする前によろめいた勢いのままに毛足の長いカーペットが滑る。朝から刃物を向けられる夢を見て、そのせいでベッドから落ちる。もう散々だった。ダリアが体勢を崩した時にそこそこ大きい音がしたが、母は気にしていないに違いない。ダリアの母はそういう人間で、そしてダリアももうすっかりそれに慣れたのだった。
ダリアという名前についてもそうだった。ダリアがダリアと呼ばれることに慣れてから、いつの間にやらもう数年が経っていた。
コルセットの締め付けにも、耳馴染みのないお母様なんていうフレーズを発するのに慣れてからも数年。中世の西洋じみた、けれどもそれともまたどこか違う世界の空気に慣れたのも数年。かつてダリアではなかったダリアの面影は、年のわりには達観した態度と、あとは魔女なんて存在しないはずの世界での『魔女狩り』や車のない世界での『ガソリン』なんかの言葉に宿って、そうしてダリアはすっかりダリアに″なった"のだ。
階段を駆け降りるダリアの銀の髪が慌ただしく揺れる。ダリル・スワローズが学園に入学する日の朝は、青一色の空の見下ろすひどく呑気な春日和だった。
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