小説のタイトル・プロローグ改善相談所『ノベル道場』

魔王の馬鹿息子(六歳)が高等学校に入学するそうです

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スレ主 何てかこうか? 投稿日時:

 お久しぶりです。何てかこうか? です。早速ですがリンク先は前作となっています。本作はまだ未投稿です。空欄のままっていうのも味気ないと思って入れています。なので本編を期待した方にはすみませんがまだ執筆中です。
 これが仕上がるのもだいぶ先になりそうです。
 それにしてもタイトルに年齢を入れるアイディアをくれた人、年齢が入り一連の作品とわかるつくりができて、更に新作タイトルとしても扱える。素晴らしいアイディアです。

力を入れた部分
 主人公の成長、紳士属性を手に入れて大迷惑するヒロインという話のつかみです。

不安な点・およびコメント
 二作目になりますが、一作目がわかってないとわからないところがあるんだろうなと思っています。そこをどうしたらいいか教えて欲しいです。どうしても一作目を踏まえた話になりがちになって、この文やネタがわからないと言うところを教えて下さい。説明をいれるよりは削った方がいいのですかね?
 また、悪役が中盤以降(ほぼ終盤)にしか出てきません。物語的には最初の頃からちょこちょこ出すべきとは思うのですが……終盤で出てくる都合の良い悪役になってしまった。

 投稿時には三分割を目安に分割します。大体一万字ぐらいなので三千字ぐらいにします。現状の執筆量は三分の一ぐらいで四万字ぐらいになってます。

プロローグの狙い
 主人公のおバカ具合を前面に出して読者に”面白い馬鹿”がいるぞと思わせること

本作のあらすじ
 魔法帝国に魔王の子供のカテイナ(主人公)が訪れる。自尊心の塊の彼は「魔法技術を身につけるのだ!」と意気揚々とオリギナ魔法学校に入学しようとする。
 ところがどっこいそうはいかない。魔法の素質だけは学校始まって以来なのだが、年齢が足らない! 知力が足らない! 協調性がない! と落第点をつけられてしまう。
 納得のいかない彼は裏口入学を試し、極悪非道の三者面談(親(現・魔王)を呼んでの逆圧迫面接)まで到達するが、それでも落第してしまう。
 魔王シヲウルが呆れて帰ってしまう最中、特別臨時講師補佐という、よくわからない称号を得て潜り込むことに成功する。
 召喚術の授業でやらかし(強暴なドラゴン(シャッカ)を召喚する)、魔法攻撃における実技でもやらかし(競技場の一角が消滅する)、座学でもやらかし(魔力結晶の大爆発を起こす)、わずか一日で“死人が出なかったのが奇跡”と言われ、即日で無期限出勤停止をくらう。
 無期限出勤停止を解くためにカテイナは能力制限を受ける。
 平凡な授業しかできなくなったカテイナ。しかし日常はそのまま進んでいく。
 そんな時、現皇帝の統治十五周年祭が開かれる。
 魔法学校の生徒、教員も祭日の警備のため町中に駆り出される。
 カテイナの目の前を各国の贈り物が通り過ぎ、当然の様に彼はこれを欲しいと思う。
 夜、単身で皇帝居城に潜り込み、贈呈物保管庫にたどり着く。
 プレゼントに耳を当てて盗むものを品定めし、唯一音が出ているプレゼントを外に持ち出す。
 喜び勇んでプレゼントを開封するカテイナ。そして大爆発を起こしてしまう。
 それは皇帝暗殺をたくらんだものの時限爆弾だったのだ。しかしそこは次期魔界王、爆心点で爆風に耐えきる。そのうえフラフラになりながらも現場から逃げ出してしまう。
 現場検証が進む中、犯人はカテイナと特定され、オリギナ中で指名手配される。
 そして、カテイナは捕まることなく騒ぎが大きくなる。そのため魔王シヲウルがそのことをかぎつける。
 シヲウルがカテイナ捕獲に参戦し、速攻で捕まるカテイナだが……状況証拠と本人の証言により爆発の元はカテイナでないことが判明。主犯をとらえてシヲウルが滅殺しめでたしめでたし。

登場人物
 カテイナ 次期魔界王 六歳。見た目は子供、自尊心は思春期、行動はガキという作中の最強馬鹿、知力自体は六歳児にしては悪くない。目の前にある時限爆弾を加速させて爆発させるという大ポカをやらかした。ジブリルに対しては全幅の信頼を置いている。

 クラウディア・ニアフロント 引き続きヒロイン枠。十六歳に見合った行動をするし、頭もいい。カテイナから解放されたと思いきや、さらに深く巻き込まれる。学校におけるカテイナの監視役に大抜擢されて胃がよじれたとかなんとか。歳はカテイナの方が誕生月が早いため。

 シヲウル カテイナの母、バカ息子に頭を痛めている。作中実力ナンバーワン。名前の由来は“死を売る”より。オリギナ皇帝相手に仕掛けられた時限爆弾をカテイナが加速させて爆発させたと聞いたとき、般若の形相をしていた。真相が明らかになった後、すっきりした顔で国を一つ地図上から消した。

 シュンカ・シュウトー 魔法学校校長、名前は春夏秋冬より。常識人ではなく、魔法学における狂人。知識欲に目がくらんでしまうことが多々ある。六十越えのおばあさんだが、あと十年は校長の座に居座る気でいる。魔法の技量はオリギナでの上位0.001%の内に入る。

 オン・スコア クリミナ王国の王子様、傲慢である。ノー・スコア王の命令でオリギナ皇帝の贈り物に時限爆弾を仕掛けた人。まさかカテイナが盗み出して加速させるとか思わない。そしてシヲウルが出てくるとか予想外だった。本来では皇帝暗殺を成功させて故郷に凱旋するつもりだった。シヲウルの大魔法「EATING」により親子ともども亜空間に消える。

 以下は六歳以降のおおまかなプロット、カテイナの人生です。もし興味があれば読んでください。

 七歳 アテナ襲来 母の大ピンチ。クリミナ王国を消した責任を問うためにアテナが襲来する。母を圧倒するアテナにビビりまくるカテイナ、現魔王と次期魔界王の二人がかりで何とか追い返すことに成功する。

 八歳 初めての魔王 姫(エル・オリギナ)をさらって大イベント 世界に宣戦布告する。
 オリギナの皇女(八歳)をさらって俺の力を示すのだ。一都市を丸々改造してダンジョンを作り人類を待ち構える。姫は姫で日ごろの殺人的なレッスンに嫌気がさしていたため、カテイナの自分をさらうと言うのは渡りに船であった。意気結託した二人は大人に対して反旗を翻したというのが事の真相である。しかし、大誤算はブチ切れしたシヲウルが襲撃したことである。カテイナが魔法で作ったホーククイーン、ビーフキング、スライムマスターの三大幹部はシヲウルに瞬殺されてしまった。その上、本人達は逃亡に失敗した。さあここからが地獄の始まり。微笑む般若面の母シヲウルを相手にエルが卒倒し、カテイナはスライディング土下座をする。

 九歳 人間の国を諸国漫遊。いろんな国があるなぁ。
 商業国家マネー(都市名はエン、ダラーズ、フラン、ウォン、ユーロ、ポンド等)訪問。一応のカテイナたちの通貨単位は金貨(王族~貴族用)、銀貨(貴族~庶民用)、銅貨(庶民用)、鉄貨(奴隷専用通貨)である。(鉄貨十枚=銅貨一枚、銅貨百枚=銀貨一枚、銀貨百枚=金貨一枚、金貨一枚分の鉄貨はほぼ一トンに到達する。もはやいじめである。それでも奴隷身分は鉄貨しか使えない)合成人間レオボルトや人に売買されていた魔族のハルなどが登場する。後半でレオボルトとカテイナの一騎打ちイベントを行う。
 このうちダラーズは魔界の所有になる。商業国家とは首都カレンシーを中心に円周上を囲うように各国家に最も近い都市が交易都市となっておりオリギナに近い都市がエン、コンプレット王国に近い都市がポンド等。

 十歳 最後のしり叩き! “好きにしろ”ってどういう意味?
 十一歳 修行開始(主に料理の)! 夢のステーキを焼けるまで!
 十二歳 アテナ襲来再び もう子供じゃない! 
 十三歳 不治の病、厨二病発症! 恐らく死ぬまで治りません!
 十四歳 魔界最強の座、シャッカとのプライドをかけた戦い

 十五歳 魔法学校再入学 とらえた姫(エル・オリギナ)は今、同級生!?
 再びオリギナの学校に入ったカテイナ。まあ今回はトラブルを起こさないかなと思っていた矢先にトラブルがやってきた。エルと再会する。過去のやらかしを人質に取られてエルの尻の下に敷かれる。

 十六歳 世界料理人選手権大会 俺の力を見せてやる。初めての挫折。十一歳から五年かけて学んだ料理の腕を試す時が来た。鼻良し! 舌良し! 技量良し! ふはははは、俺が負けるわけがない! 決勝戦で天才料理人の前に敗れ去る。敗因は傲慢な料理を作ったこと。相手を殴りつけて屈服させるような料理を出したことで、天才料理人の優しい家庭料理(いつでも支えてくれる思い出の原点の味)を前に敗北する。カテイナは母の手料理を全く知らずに育ったことが敗因であった。(ついでに彼は負けた理由が理解できなかった)

 十七歳 異世界転生の勇者が来た! チート能力なら負けねぇよ! 大勇者排除の巻

 十八歳 カテイナ、魔王になる。 シヲウルの大魔王引退(そして超魔王へ)
 コンプレット王国王子ルドルフと決戦を行う。魔法技術と剣技を併せ持つルドルフに人の希望を見る。エルが敵にまわり、魔法道具でパワーアップしたルドルフを相手にぞくぞくするほどの危機を覚える。ああ楽しい! この強敵を粉砕し、エルを奪い取る! 俺は俺こそが魔王なのだ!! 興奮の最中、痛烈な横槍が入り。ついにブチギレする。この戦いを人類の未来のためとかいうくだらない理由でじゃまされたのだ! 人前では決して見せることのなかった大魔王としての顔を見せる。それはいつぞやのブチ切れした母の顔だった。
 最後の戦いにおいて大暴れをし、オリギナ帝国全近衛兵による大結界により力を封じられ、ルドルフの閃光石火により腹をぶち抜かれ、オリギナ皇帝の超重力魔法により動きを封鎖されて、エルの零点凍結により、ついにカテイナが沈黙。氷柱に封印されてEND
 後日、シヲウルにより拘束を解かれて出てくるが、全く反省していない態度だったという。

プロローグ

 朝、黒髪の少女が窓を開けて部屋に風を入れている。初夏だがまだ朝の風は心地よい。一つ深呼吸して、振り返る。部屋は小さいがベッドに机、タンスに本棚、寝泊まりするには十分な設備が備えられている。
 ここはオリギナ魔法学校の女子寮の一室である。
 彼女は振り返って部屋を一瞥し、ため息をつく。
 部屋の隅で聖なる光をダダ漏れさせている剣が有るのだ。どこをどうに隠しても光がダダ漏れする。日の光を浴びてさらに光が増したようにも見える。
 彼女はその剣を若干引きつった顔で見ている。少し思い返しただけでもすさまじいインターンの経験だったのだ。学校の優秀生徒を集めて行われたそれは、名誉あるオリギナ皇帝居城での衛兵勤務である。
 選抜されたときには積み重ねた努力が評価されたと内心ガッツポーズしていた。初日は支給された衛士の服に興奮して、荘厳な城で勤務することに誇らしさを感じていたものだ。
 それが三日目、インターンのど真ん中でとんでもない目にあった。
 次期魔界王の襲撃があったのだ。己の欲望のみに行動する次期魔界王によりさんざんな目にあった。人の皮を被った化け物女に喧嘩を売られるわ、ドラゴンにつかまれるわ、狼に狙われるわで大変だったのだ。極めつけは勇者のセクハラと次期魔界王の横暴である。
 思い出したくないのに剣を見るたびに次期魔界王・カテイナのことを思い出す。あのガキは最後のどさくさに紛れて私にセクハラ親父の聖剣を押しつけてきやがったのだ。
 曰く「これなら無くさないよな」と、聖剣と私を結びつけてくれたのである。
 自分の手首を見る。聖剣と同じ白い色のリストバンドががっちり手首に固定されている。
 スキマが無いわけではない。リストバンドと手首の間に指を入れて洗うことも出来る。むしろ見た目は金属なのに柔らかくすらある。
 しかし、外れない。指を引っかけて顔が真っ赤になるほどに引っ張っても外れない。手首からある程度ずらすとそれ以上動かなくなるのだ。
 オリギナの誇る魔法研究所でも調べてもらったが結論は”呪い”とのことだった。しかも次期魔界王の呪いである。人間には外せないとの最終結論は私には受け入れ難いものだった。
 ため息をついて着替えを始める。始業時間までに着替えと食事と授業の準備をしないといけない。いつまでもへこんでいられないのだ。
 寮の共同炊事場を利用して軽い朝食を作って食べる。
 部屋に戻り一通りの準備を終えて、聖剣を身につけて部屋を出る。
 自分の意識は一連の日常のルーティンで普通に戻した。だがしかし、最悪は向こうの方からやってきたのである。開けたドアの正面にクソガキが、次期魔界王が、カテイナが待っていたのである。
 
「おはようだな! クラウディア!」

 この一言で、クラウディアの胃は聞いたことのない音を立てて痛み出したのである。

……

 クラウディアの様子がおかしい。折角俺が来たというのに、感激で涙を流すでもなく、再会を喜ぶわけでも無い。ドアを無表情で閉めたのだ。
 俺は首をかしげてドアを叩く。
 この俺、次期魔界王から姿を隠すとはいかなる了見なのか? もしかして、会うにふさわしい格好では無かったとでもいうのか? 今から化粧でもする気か?
 う~ん、俺は六歳になった。紳士になったのだ。挨拶もなしにいきなり女の部屋に土足で上がるほど無礼はしないつもりだが……女の化粧は時間がかかる。軽く一、二時間は待たされるかもしれない。
 ……そうだな、ここは紳士になった俺の実力を見せるべきであろう。

「クラウディア、化粧なら待ってやるぞ。その間、ちょっとその辺を見てくる」
 
 何かを引っかけて転んだ音がした後、あっという間にドアが開いた。
 ? 化粧はどうしたんだ? はは~ん、なるほど、めかし込むより、俺から離れたくなかったんだな? 俺の魅力も罪なものだ。

「クラウディア、慌てる必要は無いぞ。ゆっくりメイクでもするがいい。俺は紳士だ。待ってやるぞ」
 
 優雅に自分の金髪をいじる。赤い瞳を柔らかく好意的に向けてクラウディアに笑ってやる。
 うむ、俺は素晴らしい紳士になった。母が監視用の首輪を外してくれるほどだ。
 しかし、クラウディアの視線は不安げに揺れていて、周りを伺っている。
 そして一瞬だ。まるで獣のような速さ、胸ぐらをつかまれた。一気に部屋の中に引きずり込まれる。
 この無礼に声をかけるより早くクラウディアは壁に向かってサイレンスやドアにロックの魔法をかけている。俺に振り返ったのは窓を閉めてカーテンを閉めた後だ。

「カ、カテイナちゃん。なんでここに来たの?」

 俺はそのクラウディアの言葉に応えない。クラウディアが男を部屋に引きずり込んで部屋を暗くするような女だとは思わなかったからだ。全く、あきれさせてくれる。それは、魔王城の女メイドのフランシスカが言っていた悪い女の典型例だ。それをそのまま口に出して指摘してやる。これは紳士一流の暗喩と言うやつだ。

「全く、女は油断できないな。まさかいきなり部屋に引きずり込まれて出入り口をふさがれるとは思わなかったぞ。ふふん、俺も年をとって魅力が増したか?」
 
 暗くなった部屋で自信に満ちあふれて胸を張る。クラウディアは目を覆っている。
 よしよし、反省できるところがお前のいいところだ。クラウディアは顔を覆ったまま、力なくベッドに腰を下ろしている。
 ようやく落ち着いたみたいだな。これでようやく俺の本題に入れる。

「気は収まったか? 今日来たのは他でもない。オリギナの魔法学校の入学に関してだ。クラウディア、お前の学校に入ってみたくてな」
「……それで何で私の部屋に来たの? 入学願書なら持って帰ったでしょ?」
「そう、それだ。どこに出すんだ? この学校には部屋がいっぱいあってな。どこに出したらいいかわからなかったんだ。そこでだ。探し回るよりお前に聞いた方が早くてな」

 ? クラウディアの眉間にしわが寄った。相変わらず女はいつ怒り出すかわからない。今のやり取りのどこでクラウディアの怒りのスイッチを押したのか……わからないなぁ。

「そう怒るな。ちゃんと言ってくれればたどり着ける。どこにこれを出せばいいんだ?」
 
 俺の直筆の、一生懸命書いた願書を見せる。黒々としたそれをクラウディアは目を点にして見ていた。

「ちょっと願書を見せてくれる? ちゃんと読むからさ」
「いいぞ。ただし俺の直筆だ。金貨と同じ価値があるから注意して扱うんだぞ」

 クラウディアが必死に俺の入学願書を見ている。何しろ白いところが無くなるまで一生懸命書いた。これで俺は晴れて魔法学校の一員になれるのだ。気合いが入ろうというものである。
 
「どうだ? 俺の直筆は?」
「……ちょっと黙ってて……、六歳、クヮティナ? ……名前か。……出身地……魔界・カミエ……親、”死を売る”……」
 
 クラウディアが眉間に指を当てている。時折目をほぐしながら、必死に真剣に俺の文字を追っている。
 まあ、次期魔界王の直筆の書類だ。あまりの歴史的価値に恐れおののいて、一字一句漏らさず真剣に見るのは不思議で無い。
 クラウディアはたっぷり時間をかけて隅々まで目を通している。
 俺はそれをどきどきしながら待った。どんな風に絶賛されるのか俺には皆目見当も付かない。

「……これ本当に出す気?」
「もちろんだとも、そうで無ければ入学できないぞ」
「……ごめん。あんまり言いたくないけど、字が汚くて凄く読みづらい」
「な、何? 何だって?」

 この一言で、雷に打たれたようなショックが全身を走った。クラウディアの一言は本当に予想すらしていないものだったのだ。必死に書いた事実に比べれば字がちょっと曲がったぐらい大したことじゃないじゃないか。

「な、なんで? 俺は必死に書いたんだぞ? このために難しい字だって覚えたんだぞ?」
「……」

 クラウディアが真剣に俺を見る。もう一度書類に目を落とす。

「……年は六歳だっけ? この間まで五歳だったよね?」
「そうだ! 先週まで俺は五歳だった! お前が入学に年齢が必要だと言うから、ちょっと待っていたんだ。それにその待つ間に俺は勉強したのだ!」
「うん、君の年齢を考えたら、凄いと思うよ。六歳になりたてでこれだけ書ければ天才の類いだよ。でも、それでもまだこの学校には足らないと思う」
「だ、大丈夫だ! ほんのちょっと足らなくても俺の成長力なら一ヶ月でお前達にも追いつけるぞ! も、文字だってもっと綺麗に書けるようになる! 俺なら出来る!」
「……あながち嘘に聞こえないのが怖いけど……、本気で入学手続きする?」
「もちろんだ!」
「君は逃げないし、退かないよね?」
「応とも!」
 
 クラウディアが真剣な目で俺をみる。俺はその視線をドンと受けて堂々と立っている。俺の自信はくずれないのだ。
 根負けしたのか「ふぅっ」とクラウディアがため息をついて覚悟を決めたような表情で立ち上がった。

「じゃあ、一緒に入学願書を出しに行こうか」
「ああ。絶対に入学してみせる!」

 そうと決まればクラウディアはクラスメイトに今日の一時限目を欠席する旨を伝えている。
 しばらくクラウディアの部屋で身だしなみを整えて、一時限目のチャイムの音を聞いてから部屋を出た。

「クラウディア、どこに行くんだ?」
「校長室だよ。この学校で一番偉い人のところに行くの。
 だけどいい? 私は連れて行くだけで手助けは出来ないからね?
 入学出来るかどうかは君一人の戦いだからね?」
「応、任せておけ! この俺ならどんな戦いでも勝てるぞ」

 その言葉に頷いてくれたクラウディアと一緒に寮を出る。クラウディアは学校の人気の無いタイミングを選んでくれた。学校の中庭を抜けてひときわでかい建物を目指す。レンガで構成されたその人工物は七階建て、人を収容すると考えただけでも相当な人数がこの学校に入るようだ。
 その中を勝手知りたる我が家の如くクラウディアが歩いて行く。
 
「校長室は七階だよ。最初に私が校長先生を紹介するから君はもうそこから試験が始まっていると思って慎重にね」
「わかったぞ」

 クラウディアの説明では一階は食堂や休憩所、検診室などが有るそうだ。二階から四階がそれぞれ在籍一年目~三年目の授業用の教室となっている。五階は図書館、音楽室、実験室、及び教官の物置などが有る。そしていよいよ気配の変わった六階から上が教授陣の住処になっている。
 建物の六階は内装が今までの階と一気に変わっている。通路には赤絨毯が惹かれており、ほこり一つ落ちていない。加えて異色のドアが並んでいる。ほとんどが黒壇のドアだが、石製や鉄製などが有る。極めつけは異空間が有るだけの穴がおいてあるのだ。
 それらのドアの前を横切っていく。目指す七階だけはアクセスする階段が一箇所しか無い。それも六階まで上れる階段とは異なる位置にずれて設置されているのだ。
 
「なあ、クラウディア。校長ってどんな奴だ?」
「あまり詳しくは知らないけど、優しくていい人だよ」
「そうか。……そういえば名前は?」
「シュンカ・シュウトー、白髪のおばあさんで、いつもニコニコしてる人だよ。でもね魔法の知識は凄いよ。間違いなくこの学校で最高。このオリギナでも上から十指に入るよ」
「ふ~ん……お前やあのウィンズとどのくらい違うんだ?」
「……比較できないかな。知識量をどう表したらいいかわからないけど、私を本棚ぐらいとすれば校長は……この建物全部を図書館にしたぐらいって思えばいいかもね」
「おおっ!? そんなに凄いのか?」
「そうだよ。だから粗相の無いようにね」

 少しだけクラウディアが頬を赤くしていた。何だろう? 校長にあこがれているのかな? それとも知識に敬服しているのかな? どちらにしろ、生半可な相手ではないことはこいつの態度からも推定できる。
 魔法の技術戦においてクラウディアに俺は勝てない。
 そんな奴があこがれている相手なら技術で比べられたら負けるな。だがしかし、話は単純な事だ。技術戦に持ち込まれなければ良いのだ。魔力の強さとか、総量なら絶対の自信がある。
 つまりは、戦いになったら有無を言わせぬ速攻! 長引かせて技術を使われだしたらそれだけで負ける可能性がある。
 ふふ、プランは決まった。あの扉を開けたら速攻で魔力全開にして圧倒する。
 にやりと笑って魔力をためる。
 扉を開けろとクラウディアに視線を送る。

「何を考えているの?」
「俺の勝利のプランだ」
「二年生のクラウディアさんですね。隣の子はどなたですか? 紹介していただけますね?」

 !! おい待て! まだ扉は開けてないぞ! 先手を打つ前に打たれた! 扉越しに声が聞こえる。テレヴォイスだなっ!? くそっ、最初から監視されていたのか!? 
 クラウディアはいきなり背筋が伸びて「失礼します」と扉を開けてしまった。
 ちっ! 圧倒するには不意打ちが最も効果があるのに! ここで魔力を暴発させたら俺が馬鹿にされてしまう。適切なタイミングで力を使うことができないなんてアピールにすらならない。
 開け放たれた扉の向こう側で黒檀の机の奥に老女が座っている。大きな丸縁の眼鏡、細身で白いローブに青いベストを身に付けている。顔や手に刻まれたしわは深いが弛みはない。髪も顔も年を感じさせるが瞳は違う。好奇心の塊と言ったところか、きらきらしている。
 チッと舌打ちして前に出る。もしも最初にこいつを圧倒できたなら入学は成ったも同然だったのだが。

「校長先生、こちらはカテイナ君です。
 カテイナ君、目の前の人がオリギナ魔法学校の校長先生 シュンカ校長です」
「ふふん。俺はカテイナだぞ。よろしくな」

 奇襲は失敗したが態度は忘れてはいけない。俺は次期魔界王なのだ。偉さで言えば世界一……今はまだ母がいるから世界二だが……今、この国に限れば皇帝よりも偉いのだ。
 腕組みしながら鼻息も荒く胸を張る。? なぜかクラウディアが目を覆っている。まあいい、今の目的はこの学校への入学なのだから、目標はクラウディアでは無い。今の標的はシュンカ、お前なのだよ。

「初めまして、カテイナ君。今日は何のご用でしょうか?」

 にっこり笑って、シュンカは俺に問いかける。この問いにはどう答えてやるのが良いか? 入学試験は始まっているのだ。

「こちらのカテイナ君がどうしても、このオリギナ魔法学校に入りたいとのことでして」
「コラッ、クラウディア、お前は口を出すなよ! ここから先は俺の戦いだ。口出しはさせないぞ! 黙ってろよ!」
 
 俺が少し考えていた隙にクラウディアがしゃべってしまう。邪魔しないでもらいたい。俺は男だからな。戦いが好きなんだ。
 クラウディアをにらみつけて黙らせるとさらに一歩前に出る。
 堂々と俺の入学願書を出すのだ。

「これは俺の入学願書だ。光栄に思えよ。この俺がここに入ってやるんだぞ」

 できうる限り尊大に、偉く堂々と願書を渡す。
 校長は相変わらずきらきらした目で俺を見ていた。

「え~っと、名前は”カテイナ”ね。ほう、六歳? 魔界……魔界出身ねぇ」

 願書を見ながら俺を見るというのを繰り返す。見られるたびに俺は胸を張った。そろそろひっくり返りそうだ。

「クラウディアさん、カテイナ君はもしかして報告書の彼ですか?」
「はい。そうです」
「……おやまあ」
「おい! 俺を無視するなよ! なんだ報告書って!」
「この間、一緒にドラフトにいったときのことを私が報告書にしたの」
「な、何だと! 当然それは俺を格好よく書いたんだろうな!」
「……見たとおりのことを書いたよ」
「魔王シヲウルさんのご子息で、一人でウルフキングを追い払ったと書いてありましたよ」
「その通りだ! 俺は強いんだぞ!」

 鼻息も荒く俺は威張った。なんだわかっているじゃないか。ついでに気前よく魔力を解放する。わかってないなら脅すに的確なタイミングを見る必要がある。但し、俺の力をわかっているなら隠した分だけ誠意が欠けたと思われるだろう。

「折角だ。俺の力を見せてやる」

 一気に魔力を上げたりしない。相手の顔色の変化を観察しながら驚いた瞬間にさらに大きく膨らませる。ふふ、さあどのくらいで驚くかな?

「ちょ、ちょっと、か、カテイナ君! それやめて!」
「口出しするな! 俺の戦いだぞ! 別段、叩いたりしないから安心してろ!」
「あらあら、これは凄い」

 魔力を解放していくのは気持ちいい。ちょっと解放しただけでクラウディアは悲鳴を上げている。だが校長には脅威が伝わっていない。
 にやつきながら校長に視線を送る。校長はにっこり笑って頷いた。……ほほう。ならば全部解放するまでだな。
 校長室の窓枠がきしみを上げる。解放された衝撃だけでクラウディアが転がって、校長室の書類が舞い上がる。

「……素晴らしい」
「ああ? 何だって?」
「カテイナちゃん、もうやめてよ!」

 吹き荒れる暴風のような魔力にさらされてクラウディアは恐怖で顔が引きつっている。だが、逆に校長は笑っている。出会ったときより目が輝いているように見える。

「へえ、驚かないんだな」
「いいえ、十分驚かせていただきました。それではこのまま入学試験の面接をしましょうか? それとも一度休憩しますか?」
「休憩はいらないぞ」
「そうですか。ではクラウディアさん、奥の部屋から彼のために椅子を持ってきて下さい。その後は、副校長に事情を話してから授業に出るように、言伝は”いつも通り授業を進めるように”と、お願いしますね」
「だ、大丈夫ですか? 私もいた方がよいのでは?」
「大丈夫です。それにこんな面白い事、独り占めしたいじゃないですか」

 校長が笑っている。クラウディアはため息ついて椅子を持ってきて俺を座らせると「絶対に攻撃しないで」と言ってきた。「あいつが攻撃しなきゃしないさ」と答えて座って足を組む。
 クラウディアは「はぁ……それでは失礼します」と頭を下げて退出していった。
 校長と二人っきりになっていよいよ本番だ。

「それではカテイナ君、この学校の志望動機は?」
「クラウディアだ! あいつの魔法技術が凄かったからだ。俺だってあの技術が欲しい! 銀貨に魔力をしみこませるのは出来た! 魔法の百連発だって出来る! だがな、四種同時魔法は出来なかった! ここに居ればその技術が身につくんだろう? 俺はあれが欲しい!」
「貴方の才能なら他の誰もが出来ないことが出来るでしょう? 例えば超遠距離のゲート魔法、大河を逆流させる、嵐を作ること。どれも人間にはとても出来ない事ですよ?」
「そんな出来ることはどうでもいい! 俺は出来ないことが悔しい! 技術が欲しいんだ。俺の知らない技術が欲しい! 俺は魔王になるんだ。何でも出来なきゃいけない。他人にたった一歩だって後れを取るわけにはいかない。お前達の技術をよこせよ! 俺は全てを身につけて尊敬を集めるんだ。偉くなるんだ。だから出来ないことがあってはいけないんだ!」

 前のめりになって説明する。俺が技術をほしがる理由、そこに一欠片の嘘も無い。

「なるほど。素晴らしい知識欲と向上心です。ですが、貴方ほどの才能があればその程度の技術は身につけられるのではないですか?」
「元オリギナの魔道士の奴がもっと凄いことをしていたんだ。魔界一の耐久力を誇るフランシスカをたった十秒で倒したんだぞ! きっとお前らはこれだけじゃ無いはずだ。もっと、いっぱい、俺の知らない技術を持っているはずだ! その技術を全部、俺のものにしたいんだ!」
「私も初耳です。それは何でしょう?」
「俺もクラウディアに目をふさがれたから見ていない。知っているのはクラウディアとウィンズって奴だけだ。フランシスカに聞いても教えてくれないし」
「後で私も聞いてみます。何でしょうドキドキしますね。未知の技術を聞くと」
「わかったら俺にも教えろよ。っとそう、これが俺の志望動機だ。この学校で技術を身につけて俺は全てのものから憧れられるぞ」

 シュンカがさもありなんと頷いている。

「なるほど、志望動機は申し分なし、才能もあるでしょう。技術を悪用されそうなのが難点ですが……、カテイナ君、この学校で身につけた技術は何に使いますか?」

 俺は「尊敬を集めるために決まっている!」と答えた。悪用しても尊敬は集まらないだろうし、俺は羨望のまなざしを集めるためだけに技術が欲しいのだ。
 
「うふふ、なるほど。悪事に使うかどうかはこれからの貴方次第のようですね」
「お、俺はそんなことには使わないぞ」
「それで結構。今使う意思がない。それで十分です。これで面接は終わりにしましょう。次は知力の試験ね」

 シュンカが立ち上がって、「少し休憩にしましょう」と続ける。俺は深呼吸だ。ふふ、勝ったぞ、知力であれば問題ない。全世界の六歳児を集めても俺以上の天才はいまい。全く知力は問題ないはずだ。

「お手洗いは一番奥に有ります。七階から出なければいいですよ。そうね、この砂時計で十五分後に知力の試験をしましょうか」
「クラウディアに面接試験に受かったことを伝えてくる」
「ダメですよ。これは試験です。”七階から出ない”こういう約束を守れるかも私は見ていますからね」

 ”ぐっ”と言葉に詰まる。こ、こいつ、俺を拘束する気か? 

「俺は俺の自由にするぞ」
「ええどうぞ。自由を束縛する気はありません。私が貴方をどのように評価しても自由なように、貴方にも自由があります」

 こ、この女! クラウディアの遙か上か! 口八丁が上手すぎる。下手に舌戦をすると俺が負ける。
 舌打ちしてお手洗いを済ませて元の席に戻る。
 シュンカはその間、机で知力試験の問題を作成しているようだ。

「では、時間ですのでこの問題を解いて下さい。時間はこの砂時計の二時間です」
「ふっ、こんな物十分で解いてやるぞ」

 二時間用の砂時計をひっくり返して試験開始だ。
 問題用紙に目を落とす。
 ??? な、なんだこの問題? お、俺の知っている問題じゃ無いぞ!?
 算数はまだいい。オリギナ第五代皇帝の名前なんて俺、知らないぞ!? レモンに刺すべき金属は?? な、何じゃこりゃ!?

「まずはわかるところを埋めて下さい」

 とりあえず計算だけは埋める。その後は手が止まった。
 文書読解であれば、ある程度はわかる。だが慣用句はわからないし、人間の気持ちが理解できているかと言われたら答えはノーだ。
 砂時計を見る。回答欄はほとんど真っ白なのに時間は半分過ぎている。
 シュンカは自分の席に座って他の書類に目を通している。
 ならば、テレヴォイスでクラウディアに答えを教えてもらおう。クラウディアの気配を探る。俺にとっては簡単だ。聖剣の気配を探れば良いのだから。意識を絞ってクラウディアの居場所を探す。
 パタッとシュンカが書類を置いた。

「カテイナ君、それはカンニングに相当します。せめてバレないようにやって下さい」
「……っぐっ、どこで気が付いた?」
「カテイナ君、君は一人で戦うと宣言しましたね? 嘘はつかないように」
「……だって、俺は歴代オリギナ皇帝の名前なんて知らない」
「別に恥ずかしい事じゃ有りません。貴方は魔界の人です。私だって歴代魔王を全員上げろと言われたら知りません。この知力の試験はね。貴方の得意分野を知るためのものです。私たちが貴方にどこを教えなくてはいけないのかを知らなくてはいけないのですよ。それが歴史の知識なのか、人の心なのか、それとも数学の知識なのかは知りませんがね」
「……くそっ」
 
 俺はもう解ける問題は解いてしまった。あと一時間、こんな時間に耐えなくてはいけないのか。手が止まったまま問題をただ眺める時間が過ぎていく。

「良く耐えました。解答用紙を渡して下さい」

 無言でシュンカに解答用紙を渡す。算数以外はほとんどわからなかった。オリギナの歴史、魔道科学、オリギナ文学、ほとんど空欄だ。
 シュンカは俺の解答用紙を見て笑っている。

「流石に次期魔界王ですね。六歳ながらにこの数学の理解は天才以外の何物でも無い。但しオリギナの事はあまりわかってもらえていない様です。我々は決して魔法技術だけの国では無いのですよ」
「お、俺は、この国の最も優れていたところだと思って」
「ええ、もちろん。この国の国民として魔法技術に関しては世界有数を自負しています。ですが、他にも優れたる分野がある。もっともっと、オリギナについて知って、調べて、大好きになったらもう一度来て下さい」
「な、何?」
「カテイナ君、辛いでしょうが、このままではオリギナのことを知らなすぎます。皆と一緒に進むのは難しいでしょう。オリギナについて知っているべき基礎分野を教えるのはこの学校の役割ではありません」
「不合格って事か!!?」

 一挙に感情が爆発する。別に攻撃って分けじゃ無い。最初に見せつけた以上に魔力が急激に上がっただけだ。
 校長室に爆風が吹き荒れる。設置されている窓ガラスが残らず吹っ飛び、柱には亀裂が走り校舎が揺れた。これが攻撃魔法という形で意思を絞っていない状態の感情の爆発なのだ。
 その暴風を涼しい顔で吹き流してシュンカが立っている。

「カテイナ君、貴方の才能は嫉妬してしまうほどです。流石に次期魔界王、正直、貴方にオリギナの魔法技術をつぎ込んだらどうなるか私も見てみたい」
「だったら入れろよ! この学校に! 俺なら、俺の才能ならクラウディアにだって追いつけるぞ」
「貴方にはまだ、オリギナがわかっていない。加えてその幼い感情の爆発、なによりその暴風を全ての学生が防げるわけでは有りません。皆が怪我をしてしまうのですよ」
「……っ! お、お前は平気だろう」
「これは年の功です。暴発した魔力風を受け流す方法を身につけている人はこの国でも少ないのですよ。私自身使ったのは今日が初めてです。これほどの魔力風を起こせる人がいなかったのでね」

 そういえばクラウディアは吹っ飛ばされていた。クラウディアができなきゃ他の奴らも出来ないだろう。俺がちょっと怒っただけでぎゃあぎゃあ言われるのか……クソッ。

「私としても残念ですよ。己の知識欲からしても貴方を入学させたいのです。ですが、貴方の入る準備も、こちらが受け入れる準備もまだ整っていません。本当に残念です」
「俺は、俺はな、……あきらめないからな! 今に見てろよ!」
「ええ、その熱意、お待ちしております」

 シュンカが頭を下げて、それを上げるのを待たずに俺はゲートを使って暴風を吹き散らしながら魔界へ帰還した。

……

「で? この私にたってのお願いってのは何だ?」
「お、俺……ぼ、僕をオリギナ魔法学校に推薦して下さい。お母様」

 この俺が緊張で震えながら母の前に立っている。母の名前はシヲウル。文字通りの”死を売る”大魔王だ。機嫌を損ねただけで尻叩き百発は軽い。しかしそれでも学校に入ってみたかったのだ。
 魔界に戻った後、すぐさま母の部屋に直行した。部屋で椅子に座ったままの母に向かって直立不動で直談判しているのだ。

「何でだ?」
「ぼ、僕は学校に入学して――」
「お前の入学目的じゃ無い。私がお前を推薦する理由だ。なぜ私がお前の入学を推薦しなくてはならないんだ?」
「お、お母様は、昔ジブリルを推薦したって聞いたことがあって、そ、それで僕を推薦してくれたらと思って」

 母が肩眉を上げる。それだけで背中に滝のような汗を掻く。だがこの緊張と引き替えても入学してみたい。

「ジブリルは優秀だった。この魔界で最高レベルの部類に入る。お前の乳母を務めたぐらいだからな。対してお前は? 自分で自分の面倒をみきれない様な、極低レベルを推薦するのか? 私が推薦しなくていけないのか? よく考えてからおねだりしろ」

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