あなたの、本当に、欲しいもの。の第2話 全5話で完結
楽しまなくちゃ、ね
作者 迷える狼 得点 : 2 投稿日時:
「ツンデレの方でお願いします」
僕はそう答えた。
「ほう……」
女神は、それを聞くと唇の端を少しだけ吊り上げて、愉快そうに微笑んだ。
「無論、それは叶えてやるが、あえて問おう。少年よ、なぜそちらを選んだ?」
女神にそう尋ねられて、僕は答えた。
「ツンデレの方が、『面白そうだから』です」
「面白い?」
女神が僕に聞き返す。
「はい。無条件で常に好意を寄せてくれる子よりも、そちらの方が面白いと思ったので」
僕がそう答えると、
「なる程、な……」
女神はそう言った。
「確かに、全てが思い通りに行くのは、逆につまらないだろう。人生も恋愛も、困難があるから面白いのだ。駆け引きがあるから、退屈しない。あい解った。お前のその願い、叶えてやろう。だが、後悔するでないぞ?」
そう言うと、女神の姿が突如眩しい光に包まれた。
「うわっ」
僕は思わず、顔の前で両手の平を女神の方に向けて、光から顔を背けた。
「もう平気であるぞ」
そう声がするので、僕は手を下ろすと前を見た。するとそこには、青い髪の毛を頭の後ろで左右に分けた、美しい少女が立っていた。
身長は、僕より微妙に低い。目は少し目尻が吊り上がっていて、気の強そうな顔をしている。
「あれ?女神様は……?」
僕がつぶやくと、
「何言ってんの。あんたの前に立ってるでしょ」
両手を腰に当てると、「馬鹿じゃないの?」という顔をして、その少女が言った。
「もしかして……女神様?」
僕が聞くと、
「決まってるでしょ、他に誰が居るって言うのよ?」
「でも、その姿とその喋り方は……?」
「あんたの希望通りにしただけよ!何よ、文句ある訳?」
ジト目でそう言われた。
「い、いえ、ありません!」
思わず上ずった声で、首を左右にぶんぶん振りながら、僕はそう言った。
「あたしはね、恋の女神でもあるのよ。まだ、本当の恋を知らないあんたに、恋を教えてあげるのが、あたしの仕事でもある訳。解ったら、さっさとあたしに惚れなさいよね!」
ビシっと人差し指を向けながら、少女の姿をした女神が言った。
「は、はあ……」
僕は、どことなく気の抜けた返事をした。外見だけで言うなら、確かに文句無しの美少女だ。しかし、正体が解っている相手に本気で惚れる事が出来るだろうか。仮にも相手は女神なんだし……。
「それと、もう1つ。今のあたしに対して、敬語は無用だから」
女神様はそう言うと、
「はい、解ったらあたしの名前を呼んでみて」
言われて僕は、
「イ、イスチヨ……」
と、おっかなびっくりで言った。
「あんた、馬鹿じゃないの?自分の彼女に、そんなにびびって話しかけてどうすんのよ!」
イスチヨは、あきれながら言った。
「……まあ、いいわ」
彼女が、(やれやれ……)といった表情をした。
「それじゃ、次はあたしね」
「う、うん……」
僕が頷くと、
「それじゃ、あんたの名前を教えなさい」
イスチヨはそう言った。
「あ、うん。そうだね……」
僕はそう言うと、自分の名前を彼女に告げた。