ボクの転生物語の第2話 全4話で完結
ボクの転生物語の第2話
作者 花太郎 得点 : 1 投稿日時:
気がつくと、そこは見慣れぬ街だった。
「あ、そうそう言い忘れてたけど」
不意に声が聞こえる。女神ルミナスだ。突如、僕を手違いで殺してくれた悪魔のような女神だ。
「どっから声かけてるんですか? というか、ここはどこなんですか?」
イライラしながら僕がそう尋ねると、ルミナスは僕のことを小馬鹿にしたように鼻で笑いながら僕の質問を一切無視して言った。
「まぁまぁ、落ち着いて。君にどうしても伝えなくてはならないというか、伝え忘れていたことがあるのよ」
「は?」
「君に、あらゆる者(生物、非生物を問わず)が無条件に惚れる呪いをかけたから」
「は......ハァ!?」
これは喜んでいいのか、文句を言うべきなのか。今まで生きてきて異性に惚れられたことなんて一度もない。いわゆるモテ期というものを僕は経験したことが無かったのだ。しかし、ルミナスの言っていた『あらゆる者』という部分が気になる。呪いという響きに、嫌な予感が止まらない。
「あと、告白されたら即死する呪いもかけたから」
「な、なにやってんだアンタァ!」
やはり、嫌な予感は的中した。何が目的でこんなことをするのか、僕には全くわからないが、彼女が人でなしだということはハッキリと分かった。
「だって、普通に生き返ったらつまんないじゃん」
「僕はあんたの手違いで殺された挙句、あんなの都合でこんな呪いを受けることになっっているんだぞ! つまんないってなんだよ! 僕をなんだと思っているんだ!」
「ただの人間」
「ぐっ......!?」
僕がいくら文句を言っても、姿の見えない女神には何も響かず、ましてや僕はただの人間。英雄であれば別かもしれないが、ただの人が神相手に何ができるというのか。何もできない。ただ、この理不尽を受け入れることしかできないのだ。
「それじゃ、頑張ってね!」
「あ、おい待て! 女神ルミナス! ルミナスさん? ルミナス様ぁぁぁ!」
このあと、僕がどれだけ叫んでも女神が再び現れることは無かった。
「ど、どうすれば......いや、悩んでも仕方がない。前に進もう」
意を決して僕は異世界の町の中を進む。この先何が僕に待ち受けるのか、それは全くもって想像できない。しかし、僕にはある決意があった。あの女神ルミナスをギャフンと言わせてやる。絶対にこの世界で生き残ってやる! そう心に誓ったのだ。
「あの、すいません」
猫耳の小柄な少女が僕に話しかけてきた。やはり、現実とはいえ、未だに実感のわかない感覚だ。ここは本当に異世界なんだなと、痛感した。
とはいえ、僕に話しかけて切ったこの女の子は、青い澄んだ大きな瞳で僕を見つめ、頬を少し赤らめながら何かを言いたそうにしている。
まさか......な。
「私と付き合ってください!」
「グハァ!?」
突如、僕は口から噴水のように血を吐いた。そして、血を吐いた勢いで僕は背中から仰向けに倒れた。僕は死んだ。
「は!?」
気がつくと、そこは見慣れた光景。というか、さっきまで僕がいたスタート地点に戻っているではないか。何が起きたんだ? まさか、僕はさっき本当に死んだのか? そしてリスポーンして最初に僕がいた、この場所に戻ってきてしまったのか?
無限ループ......しているのか?
自分の顔がみるみる青ざめていくのが分かった。僕は告白されると死んで、また何もかも最初からやり直す羽目になる。これが、女神ルミナスが僕にかけた呪い。
「負けられるかよ......あの性悪女神なんかに負けてたまるかよ! 僕は必ずこの地獄を乗り越えてみせる。そして、生き返って元の世界で平和に暮らすんだ!」
僕の孤独な戦いが、今幕をあける。