314の死と再生の第2話 全10話で完結
告白開始
作者 家節アヲイ 得点 : 0 投稿日時:
___2015/3/14/AM11:25
春休みということもあってか、普段はカップルで賑わっている学校の屋上も今はひっそりと静まり返っていた。
そんな状況とは裏腹に、俺の心臓はうるさいくらいに脈打っている。
そろそろ待ち合わせの11:30。真面目で几帳面な芙蓉寺さんなら時間に遅れることはまずないと思った方が良いだろう。
間もなく、屋上に繋がる唯一の鉄扉がギィと開く。
姿を現したのは、想像通りの待ち人だった。
「あら、おはよう田中田くん。もう来ていたのね」
「おはよう芙蓉寺さん、春休み中だっていうのに呼び出してごめん」
「別に構わないわ、私も田中田くんに用事があったの」
屋上に吹く春風が、芙蓉寺さんの黒曜石のように煌めく髪をさらう。強めに吹いた風になびく髪をおさえながらにこりとほほ笑む芙蓉寺さんの顔を見ると、心臓が、血管が、熱くなる。
「それで、大事な話って何?」
「あのさ……」
言うことは決めてきた。あとはこの考えを、目の前の彼女に告白するだけ。
決戦の時だ。
「……クラスの男子がおかしくなった原因、芙蓉寺さんが原因だよね?」
「……。急にどうしたのかしら? 話がつかめないのだけれど」
「とぼけないでよ。一ヶ月前、バレンタインの日から、クラスの男子の様子がおかしくなったでしょ」
一か月前のバレンタインの日を境に、クラスメイトから感情……人間味のようなものが希薄になった。
それに加え、授業中どころか休み時間に至るまで一心不乱に勉強を続けていた。
俺が仲の良かったクラスメイトに話しかけても、
「今勉強で忙しいから」
の一点張りで、各々が一切誰とも交流をしようとしない。
この一ヶ月、そんな勉強マシーンと化したクラスメイトと同じ教室にいて、気が狂いそうになった。
「確かに急にみんな勉強に熱心になったけれど、受験も近いことだし、焦ってるんじゃないかしら」
「それだけで、野球部キャプテンが! 女子バレー部のエースが!
部活を放り出して放課後にまで勉強するわけないじゃないか!」
勉強マシーンになっていたのは何も時間割の合間だけではなかった。
放課後、部活動の時間になっても椅子に張り付いてしまったかのように、席を立つことなく勉強を続けていた。
異常以外の、何物でもなかった。
「……まあ、確かにクラスメイトのみんなの様子が少しおかしいかなとは思っていたけれど……どうして私のせいだと言うの?」
「チョコレート」
「え?」
「芙蓉寺さん、バレンタインの日、クラスみんなにチョコを渡したよね。俺はあれが原因だと思ってる」
「チョコが原因? でも、クラスのみんなにチョコをあげた子は私以外にもいるし、勉強ばっかりじゃない子も他にいるじゃない」
「ああ、それはね……」
一ヶ月間の情報収集の成果、秘めた情報の告白の時だ。