314の死と再生の第3話 全10話で完結
314の死と再生の第3話
作者 かえで 得点 : 0 投稿日時:
「僕がイジられてたのは……知ってるよね?」
芙蓉寺さんがチッと舌打ちする。
「あの猿共には我慢ならないわ……神聖な学舎でギャアギャアビイビイ……」
そう。そこだ。勉強オバケになったしまったのは、主に僕を苛めてたグループ。勉強などより遊びやスポーツに打ち込んでた人達。
「彼らに渡したチョコだけ……別のものだった」
僕は貰ったチョコレートの包み紙と、今や勉強オバケになった彼らが受け取ったチョコレートの包み紙を出した。
僕らのは緑、彼らの赤だ。
「僕のは、案の定盗られて食べられた。で、包み紙だけ"棄てとけよ"って押し付けられたんだ」
「なっ! そんな! 酷い!」
芙蓉寺さんが口元を抑え、数歩後ろに下がる。
「こんなの序の口だよ。一度トイレに入ってた時水を上から……」
「じゃぁ私のチョコ食べてくれなかったの!?」
あー……そっちか。うん、まぁそうなる。
「ごめん。僕も食べたかったんだけど」
「どうして!? どうして取られちゃったの!? 私が真心込めて作ったのに!!」
「四人がかりだったんだよ……いや、そんな話じゃなくて……」
「あいつら……こんな程度じゃ済ませないから……」
「もう自分で吐露してるよね? 」
すかさずツッコんだが、ぎりぎりと爪を噛んでて聞いてくれない。
「もしこれが恥ずかしい勘違いでないのなら……僕のため……と思っていい……のかな?」
でも勉強オバケになったのは苛めてた人物だけじゃないし、真意が酌みきれない。
芙蓉寺さんはポオッと頬を赤くしながら僕を見つめた。
「そうね……田中田くんとは絶対一緒の高校行きたいの……だから勉強の邪魔になる奴ら、みーんなチョコ食わせてやったの」
段々読めてきた。友達の多くもそうなってしまったのはそういう理由か。
「これで一緒に聖ヨハネに行けると思ったけど……まだ駄目みたい」
芙蓉寺さんが頬を赤くしながら眼を座らせる。雲行きが怪しくなってくる。
「田中田くんも一度勉強オバケになって貰った方が良さそうね……私の伴侶になるのだから、聖ヨハネくらいは出てないとね……」
「き、気持ちは嬉しいし僕も良ければ芙蓉寺さんと付き合えたらなぁ、なんて思って呼び出しをした訳だけど、伴侶て話が飛躍してないかなぁ……??」
今度は僕ろが後退る番だ。だがすぐさま屋上のフェンスに背中がぶつかる。僕が屋上に呼び出したのだ、当たり前だ。
芙蓉寺さんがポケットから取り出したのは赤の包み紙のチョコレートだった。
「ほら……これで一緒に合格して夫婦で高校生活送ろ……?」
じりしり、彼女寄ってきていた。