終末少年ジャンプ
作者 玉子 得点 : 4 投稿日時:
「ねえ君、この漫画の終わりってどうなると思うんだい?」
俺が部室で漫画をパラ見してる時、先輩は突然そんな話題を振ってきた。
面倒ながらも見やると、彼女が持っていたのは週刊誌。前に俺が買ってきて、適当に放り投げていたやつだ。それの大体真ん中ぐらいの漫画、その最後のページを開いて見せてくる。
そこまで確認してから、俺は視線を手元のコミックに戻し、
「知りませんよ、そんなの……」
「そうかい? いつも読んでいたものだから、てっきり毎回楽しみに予想していたものだと」
「単なる暇つぶしですよ」
そう簡単に返すけど、まだ喋りたりないらしい。そんな気配を感じる。
仕方が無いので、栞代わりに指を差し込み、閉じてから改めて見やった。
「……大体、それは読み飛ばしてますから」
「むっ?」
指摘してやると、『理解不能』という顔をしてくれる先輩。
ただ、そうなんだから納得するしかない。ラブコメは肌に合わないというか、好かん。
「勿体無いじゃないか、せっかく買ったのに。本からは、色々と知る事が出来るんだぞ。漫画でももちろん、小説なら尚更だ。さあ、君も小説を読むと良い」
「読みませんよ、事あるごとに振ってきても」
億劫な敬語でぞんざいに返事すると、先輩は小難しそうに眉をしかめ、
「不良め」
と、一言。
――そこで俺と先輩、二人の間の会話が途切れた。
二人きりの部室の中、静寂が流れる。
「……おお、ほう」
時節漏れ聞こえる唸り声。どうやら俺が普段見てるヤツにありつけたらしい。ずっと長期間連載しているから、飽きずに暇を潰せる漫画だ。
そんな先輩の様子に、俺はコミックを閉じ、一つ溜息をつく。
「……ただ、もう見れないんですがね、その最終回」
――ピクリ、と。
先輩のページを捲る指が止まった。
「そうだな……」
そして週刊誌を閉じた後、その視線は既に手元から離れている。
……静かに動く先輩は、窓の外を眺めていた。
「『知る』というのは、時に無情だ」
そうやって感傷に浸る姿を、俺も黙って見守ることにした。
――今週の土曜を最期に、人類は絶滅するらしい。
いちいち行くのも億劫だった学校や、付き合いの面倒臭かった人達も、何もかもが綺麗さっぱり消える状況の中で。
普段愛読していた連載漫画だけが、終わりを迎えないらしかった。