ボクの転生物語の第3話 全4話で完結
ボクの転生物語の第3話
作者 松本ゲカイ 得点 : 0 投稿日時:
一体、どうなっているんだ。
異世界の公園のベンチに座り、ボクは考えていた。
ルミナスが、邪神扱いされている。まあ、地球の反対側にいるボクがうっかり殺されるほどの攻撃、確かにシャレにならない事態だ。
そしてそれ以前に、ボクはどうすればいい。
地球は大変な大災害だが、そもそもここは地球ですらない。帰る家がない。
「あなた、もしかして……人間?」
そこに声をかけてきたのは、犬耳で鼻や口も犬っぽい女性警察官。いぬのおまわりさんというやつか。艶のあるダークブラウンの髪が、そのまま犬を連想させながらも凛々しく美しい。
「実は、そうなんです。地球にいたはずが、気付いたらここに……」
行き場もないため、ルミナスのことには触れずにそう答えると、彼女は驚く。
「! それじゃあ、まさか……いえ、とにかくあなたを保護します。来てくれますか?」
犬のおまわりさんに連れてこられたのは、警察署。ではなく、広い体育館だった。
そこには大勢の人間が、集団生活をしている。
「これは……」
「見ての通り、人間のための避難所です。邪神ルミナスが起こした大災害に伴い、地球から多くの人がこの世界に迷い込んでしまいました」
彼女にうながされるまま、ボクはそこで漂流転移民としての登録をする。
「光を司るルミナスはこの世界や地球において、唯一エイリアンへの対抗手段となる光子ビーム砲を操れる。……ただどうしても周囲に被害が及んでしまうため、助けているはずの人々からも恨まれているんです」
「そうなのか……」
もしかしたら彼女は、それが原因であんなだらしない態度をするようになったのか。先ほどの交差点での光景も浮かび、そう思うと、少しだけ同情する。
しかしそれなら、自分は彼女から直接生き返らせてもらえたのか。
「あなたも、ルミナスに会ったんでしょ?」
そんな思考を見透かすように、おまわりさんは言った
「ど、どうしてそれを」
「ここに来た方は、みんなそうですよ。光子ビームが全身に直撃した人間であれば、彼女の光子デバッグで復元できるけれど、建物の倒壊や火災で間接的に失われた命は、元に戻せないの」
そのとき、大声が響いた。
「俺たち、いつになったら帰れるんだ!」
「何が生き返らせるだ、ふざけんじゃねえ!」
転移民たちの声が向かった先は、体育館に現れたルミナス。
周囲をSPに囲まれながらも、あのだらしない恰好、うなだれた様子で前方に立ち、話し始めた。
「地球のみなさん、この度は大変ご迷惑をおかけしました。改めて直接お詫びを……」
「声が聞こえねーぞ!」
「そうだそうだ!」
ヒートアップする怒号に、ルミナスはみるみる涙目になる。
犬のおまわりさんは同情するような表情をしていたが、地球人たちはさらに直接の非難をぶつけ続ける。ボクだって、境遇は彼らと同じだ。
それでも。
「ちょっと……待ってください!」
気付けばボクはそう叫んでいた。
周囲の視線が一気に集まる中、ルミナスのいる前方に向かって、駆けだした。