ホワイトルームの第2話 全10話で完結
ホワイトルームの第2話
作者 大倉 蛍 得点 : 0 投稿日時:
「蛇なんているのか?」
男は大きく頷く。
「ああ、いる。現に、俺は何匹も食べて生きている」
ーーーーーー
「いいから、そいつをこっちに渡せ」
男はそう言って私にナイフを向ける
「あ、あの私がこの人を渡したら、貴方はどうするつもりなの…?」
私はさっきのメールの内容を思い出す。
「さぁな、お前がそれを聞いてどうする?」
男は私を不気味に笑うような眼差しでナイフを向けてくる。
「…あのっ!」
そう私が言いかけた時
……ゴゴゴ
突如大きな揺れとその音が洞窟の中に響き渡る。
「なっ何!?」
女は揺れに耐えきれず崩れ落ちる。私もそして目の前にいるこの男も立っているのがやっとらしい。
ゴゴゴ…バキバキ……
そんな音が続いていると、我々の床にはヒビが入り始めて…
バコーーン!!!
そんな轟音と、共に当たりが割れ始めた…
そして、絵に描いたような割れ方を見せた。
「いやああああ!!」
そんな声と、
「うわああああ!!」
こんな声が聞こえて、私は何故か冷静にそしてまるで起きることを予想していたかのように、壁側によって男の手を掴む。
……とここまではメールにあったように私は動いた。一つを除いて。
私は女を見捨てる事ができなかったのだ。
「(……別にお人好しのつもりじゃないが聞きたいことがあるからな)」
訳の分からないメールだけでは些か心もとないと感じたのだ。
「おい、なんで助けたんだ…?」
男は私の目を見てそう言った。
私はその場は黙って引き上げた、その後女にとりあえず何もするなと、忠告して引き上げた。男は私の忠告をちゃんと聞いた、多分人に恩を売られたのでそれくらいは守ってくれたのだろう。
「あの……ありがとうございます…!」
女は少し照れたような顔でそう言った。
「また地割れがあっては適わないでしょう?場所を変えたいんですがこの洞窟について教えてください。」
すると、ひと間おいて女がこう言った。
「私、とりあえず座れる場所を知っています。こっちです。」
そう言って女が走ってきた方を指さした。
少し歩くと分かれ道、最初は右、そのあと左に曲がったあと、開けた場所に出た。
そこは少し明るく、何も無い場所。でも真ん中には1つ木の芽が咲いていた。
「こんな洞窟の中で芽が咲くのか?」
……そんな疑問がふと零れる
「ここがどんな場所なのか分からない以上何が起きるかなんか、未知数って訳だ。」
男はそう言って、座るにちょうどいい程の岩を見つけそこに腰掛けた。
「この場所が分からないって事はあんたはどこから来たんだよ。」
「そんなもんはお前と同じ所からじゃないのか?」
そう返された
……まぁわかりきった事だが。
「……じゃあ、貴方は私を襲う道理など無いはずなのに…なんで、なんで…貴方はナイフを私に向けたのですか!?」
女は男にそう声を上げて言った。
「お前が人殺しだからだ。」
男は静かにそう言った。
「お前がアイツを殺さなければ、俺は……俺は!血に染ったナイフをお前に向けなかったのに…」
男は悔しそうに頭を抱えた。
「お、おい!お前、俺と一緒に来い!そうすれば、とりあえずの安全は確保してやる!」
男はそう私に訴えかけた。
「何を言って…私はお前を信用したわけでは無い。いきなりそんなことを言われても困る。」
私はいきなり起こったこの全ての出来事を処理するのに精一杯なのに、誰を信じるか、身の拠り所にするのかを今決めることまで考えるのに時間が欲しかった。
「私と一緒に来てください。だってお兄さん、貴方は私の事を信じなければならない
んです。」
「なぜ私が男だと思った。」
私はそれが一番気になった。もちろん私の横にいる男は驚いた顔をしている。
確かに私は男だ。だが、容姿や声の関係上女だと間違えられるのが一般的だ。
ブブブ…
メールだ。
(なんでだ!なんで見捨てなかった!!
もういい!その場を離れろ!今すぐ!!その場を逃げろ!!)
「なんでって…私が…」
女が何かを言いかけた時。
……バコーーン!!!
いきなり壁が破壊されて蛇が私の前に現れた。
女は蛇に吹き飛ばされて倒れている。
男は案外と冷静で、私の手を掴み走り出す。
蛇は女にターゲットを絞ったのかこちらに見向きもしなかった。
私は男に引っ張られるまま、その場をあとにした。