桜がまた咲く頃、私はきっと消えている。の第2話 全10話で完結
桜がまた咲く頃、私はきっと消えている。の第2話
作者 労働会議 得点 : 0 投稿日時:
「ねえ、私が死んだら悲しんでくれる?」
白川は突然にそう言う。
「はっ?」
白川はすぐに首を横に振る。
「ううん。やっぱり何でもない」
何なんだ?白川の奴。死んだら悲しむ?そりゃあ、悲しむだろうが!だって、お前のことをよ……ずっと前から……
「そういえば、サッカーの調子どう?もうすぐ大会なんでしょ?」
サッカーと聞き、目の奥に灯がともる。
「調子?愚問だな。いいか。よく見とけよ。あの無能な部長がいない今、部の勝利は確実だぜ。なんて言っても、この天才が部長なんだからな!」
「そうだよね。樹は天才だもんね」
「当たり前だ。今に見てろよ!紅蓮学園の奴ら。全大会の雪辱、目にもの見せてやる」
「練習頑張ってね」
「ああ!」
この頃、白川との時間が格段に減った。すべては因縁の紅蓮学園に勝つためだ。勝つために、あらゆる犠牲を払った。醜聞を流して部長を失ったし、審判を買収するためにお金も失った。反感を抱く部員の多くも失った。そして、白川との時間も。
だから、気づかなかった。白川の笑顔が減っていることに。白川がやせ細っていることに。白川の家が小さなアパートに引っ越したことに。入学以来一度も欠席しなかった白川が休みがちになっていることに。
それでも、白川はいつも笑って見送ってくれた。