桜がまた咲く頃、私はきっと消えている。
作者 なっしー 得点 : 1 投稿日時:
きらきらと夕日を映して輝く川沿いを、二人乗りの自転車が通り過ぎる。顔にかかった髪を払いながら、深く染まったオレンジ色の空を見上げていた。
「あー腹減ったな。帰り何か食ってこうぜ」
「お、いいね!もちろん君の奢りでしょ?」
自転車をこいでいた相手がジト目で振り返る。
「はあ?誰がお前のコネになんか…」
「…だめ?」
「……っわ、わかったわかった!奢ればいいんだろこん畜生!」
「わーいやった、ありがとう!」
しゅんとしたのを一転して喜ぶと、いつものように呆れため息をつかれた。こちらが明るく笑い飛ばす。
「まあまあ、親しいからこそ言えるんだよ」
「なるほどな、じゃあお前と距離とるわ」
「もーそんな事言って~!照れるなよー」
「いやどんな解釈したらそうなるんだよ」
「あはは。……ねえ」
「…ん?」
再び、空を見上げる。
舞っていた桜の花びらが、空に消えてゆく。
ーーああ。
こんな何でもない日常が、ずっと続けば良かったのに。
「…桜、もうじき終わっちゃうね」
ーーもっと、君と一緒にいたかったな。