重度のシスコン兄の扱い方に困っていますの第2話 全10話で完結
重度のシスコン兄の扱い方に困っていますの第2話
作者 祈矢暁月 得点 : 0 投稿日時:
「ねえ、唯斗と唯奈ちゃんって、昔っから仲いいの?」
私の幼馴染である久保紗里奈に聞かれ、思わずびくっとしてしまった。
「うーん、そんなこともないんだよね…。」
「えぇ??」
紗里奈ちゃんが知りたそうにしているので私は仕方なく話した。
唯斗side
「ヘクシュン」
「どっかでお前の噂してんじゃねえの??」
「え、司、マジで??」
「え、う、うん…?」
唯奈side
これは私が中学生の頃の話。
このころ、兄とはそこまで仲が良くなかった。
洗面所で出くわしても、「おはよう」と一言かわすだけ。
同じ学校だったけど、校舎内で会っても知らんぷり。
そんな感じで兄とはぎこちない兄妹関係だった。
そのころの私はいわゆる屋上ぼっち勢?ってやつで。
よく授業をサボっては屋上に行っていた。
その日も、いつもと変わらず屋上に向かったら、先客がいた。
「は?」
それが、杏ちゃんだった。
当時の杏ちゃんは、髪はふわふわに巻いてきていて、眼鏡もコンタクトだった。
口調も、今とは違っていた。
そんな杏ちゃんを無視して、私は傍らに座った。
ガチャ
ドアの開く音がした。
「―!!」
そこには、兄が立っていた。
「唯奈…どうしてここに?」
「それはこっちのセリフなんだけど」
「!?あんた、唯斗と知り合い?」
「…兄」
「え!?唯斗が!?!?」
いつもと変わらず嫌悪な雰囲気を流してた私たちを止めに入ったのは、杏ちゃんだった。
「まあまあ、喧嘩しないでね??」
そこにいるのもうんざりした私は、屋上から出ていこうとした。が、
「逃がさないよ?ちゃんと和解しなきゃダメ」
杏ちゃんに腕をつかまれて、逃げられなくなってしまった。
仕方なく、兄と握手をかわそうとしたとき。
「―!」
兄と杏ちゃんの二人が、同時に息をのんだ。
私は、
「どうしたの??」
と杏ちゃんに聞いた。すると、
「どうしたもこうしたもないよ!どうしたの?その腕のあざ。まさか唯斗??」
「…やってない」
「本当に?本当の本当に??」
「ねえ、ちょっと…。」
「お、お兄ちゃんはっ…やってない」
いきなり「お兄ちゃん」と呼んだ私にびっくりしたのだろうか。兄は、しばらくぼーっとしていた。
「じゃあ…誰に??」
杏ちゃんが聞く。私は、
「…クラスの子……」
と消え入りそうな声で答えた。
「え!?それっていじめじゃ…」
困惑する杏ちゃんを落ち着かせるために、
「大丈夫だから。気にしないで。」
と私は声をかけた。
「あの…な、何かあったら…言ってよ?」
兄は心配してくれた。嬉しかった。
「うん」
「和解できたかな??」
『少し』
杏ちゃんの問いに、私たちは同じタイミングで、同じ答えを返した。