重度のシスコン兄の扱い方に困っています
作者 祈矢暁月 得点 : 0 投稿日時:
「唯奈は可愛いねえ」
「は?っていうか早くしないと遅刻するから。マジで今日こそは置いていくよ」
朝からなんてことを言うんだろう、と私はため息を吐く。
私は大原唯奈。とある高校の一年生だ。兄がどうしてもというので、仕方なく一緒に登校しているが、重度のシスコンである兄の扱いには全く困るものなのだ。
「早くいくよ、唯奈♡♡((おい」
待ってたのはこっちなんだよ、と思いながらも、黙って兄である大原唯斗の後ろについていく。ほんと朝から何なんだろうと思う。
うちのお兄ちゃんは、いわゆるシスコンってやつだ。しかも重度。
うちの親は死んだから、お兄ちゃんだけが唯一の家族なんだけど、いくらお互いにとってたった一人の家族だったとしたって、あのキモさはマジで論外。
しかも何か趣味にドはまりして何徹かしてるみたいだし。
はぁー、とため息をつきながら道を歩くと、学校が見えてきた。
今だ、と思って、私は兄の横を走って通り抜けていく。
「HAHA☆捕まえてみろよっ!」
いきなり走り出した私にびっくりしながらもお兄ちゃんはこの勝負に乗った。
「望むところだよ!」
「あの~…。」
私は結局捕まった。捕まったんだけど…。
「降ろせよ。ここ学校だぞ。」
校舎の中で姫抱っこはなくないか!?
「やだよ。転んだら危ないじゃん」
「はぁー…。抱っこしたいだけだろ…。」
私は周りを見た。
「何あの人たち。付き合ってんの?」
「校舎の中で姫抱っこはヤバい。」
あー…。悔しいけど、お兄ちゃんって見栄えだけはいいんだよな…。
私は改めてお兄ちゃんに訴えた。
「ねえ、ほんとに勘違いされてるから。降ろせ。」
「意味なくない?だってもう唯奈の教室の前じゃん。」
ほんとなんだこいつ…。
すると、教室の中から一人の女子が出てきた。
小柄で、長い髪をハーフアップにした女の子だ。その子は、
「はひ!?先輩!?あわわ……あれ?唯斗さん?あー、唯奈ちゃん、おはよう!」
とパ二クりながら言ってきた。
「ん、おはよう、杏ちゃん。」
そう、あの子の名前は杏ちゃん。私の友達だ。
「ね、お兄ちゃん、もういいでしょ?いい加減降ろせよ」
お兄ちゃんはしょぼんとしながらも、
「…分かった。」
と言って私を降ろした。と思うと、
「今日の下校も一緒だからー!」
と大声で叫んで二年生フロアのほうへ逃げていった。
今日委員会あるんだっつうの!まったく…。
え?私の悩み??
―重度のシスコン兄の扱い方に困っています!