小説のタイトル・プロローグ改善相談所『ノベル道場』

精霊楽士のオトロギア

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スレ主 日叶 投稿日時:

あらすじです。
異世界×音楽×探偵。
物語と呼べる新たな楽譜を奏でよう。

雑音(ノイズ)を扱う技能者、それは精霊楽士。
その一人である言霊転寝は相棒の紅崎縁離と共に、探偵業を通じてさまざま依頼をこなしていく。

非なろう系の異世界転生もので、ミステリーローファンタジーを描いています。
不安だらけですが何かしらの意見が欲しいので何卒よろしくお願いします。

プロローグ

 ローレライは笑っていた。

 少女は絶歌を奏でる。そして背後には滅びゆく東京。
 今、まさに東京パンデミックの真最中である。のうのうと焼き尽くされた土地には、ながい首と背中に甲羅を覆い被せている巨大生物が居座っていて、小さな両手をバタつかせていた。
 その頭に乗って、使役する男がこう告げたのだ。

「何のために? そんなものは生者には求めていない」

 言葉を耳にした少女は悲しい顔をする。中立者の立場を維持する為ならば、存在する価値は無いかもしれない。そのように、少女は捉えるのも無理はない。

 実際、少女は中立者であるから。

 次の瞬間、少女の頭上を大きな影が空を切った。
 国際警察が保持している秘密兵器の起用。世界の終焉に歯向かう、最後の『救世主』とも言えそうなロボット。

 このロボットこそが「機神ロストギア」である。

 着地するだけで地割れが起きそうなくらい、スケールが大きかった。

 まるで映画のワンシーン如く、ロボットは瞬く間に巨大生物と対峙した。
 更に、それを匿うような体制で戦闘機が群れを成す。
 ――援軍。
 人間と巨大生物が再び激突する。

「さぁ、モノリウスよ。この世界の人間、全てを塗り替えるのだ」
 巨大生物が垂れ流した胃液。その胃液に触れた者は皆、モノリウスに豹変した。

「引け―。ヤツらの体液には一切触れるんじゃあねぇーぞぉ!」
 国際警察の司令官が命令を下した。その威圧感ある叫び声に答えるべく、体制を立て直す地上部隊たち。

 その頭上を飛行していた操縦士が、ロボットに搭載されているスピーカーで存在をアピールした。
 巨大生物を自身に引き付けようというのだ。

「ロストギア番号――零六、行きます」

 腰の部分に装着していた杖を取り出して、巨大生物に向けて構える。
 倒すべき、巨大生物。

 ネッシーを連想させる巨大生物は飛び跳ねた。そして、背中の部分から緑色の炎を散らしてあとを追うロボットの姿もそこにあった。

「まだ甘いな、ムーンサテライト。その程度では我ら――――」

 出力最大。先端が火炎放射器と化した杖を振り回して巨大生物にぶつけた。
 この攻撃を受けた巨大生物は口から白い光輪を吐き出して、ロボットに直撃させた。そして、体制を崩したロボットは地に落ちていく。

「やったぞ、我ら聖歌隊はついにっ、ふははっは!」

 巨大生物を使役する男は雄叫びをあげた。こちらも地に落ちていく。
 近辺の海に勢いよく着水すると、そのまま深く沈んでいった。水中で男のフードが揺れる。
 ここで、体制の立て直しを図った地上部隊が一気に切り込んでいく。

「モノリウスは群れをなしてない。今がチャンスだ。一気に攻めこめ!」

 国際警察の司令官は、少し離れた位置にそびえ立つ赤い電波塔に向かって指さした。
 巨大スケールを物語っていた両者の相打ち。誤算はつきもの。
 一気にケリをつけたかった所だった。しかし、戦争は常に残酷であるのだ。

 どれだけ切っても、モノリウスの数が減らない。それどころか――。

 ダスクウイルスと呼ばれる菌が脳に感染すると、人間を始めとした生物の身体を蝕み、その姿、モノリウスへと生態を書き換えられてしまう。
 加えて、そのモノリウス自身がダスクウイルスを生み出すという悪循環。

「人間にとっては脅威でしか無い存在に立ち向かうのは勇敢だけど、それって人間が生み出したものなのにね」
 ローレライは微笑んだ。手には包帯を握りしめている。
 時は近い、あとは……。

 ふと、二つの気配がローレライの元へ近づく。
 すぐに振り向いて歓迎した。

「転生おめでとうです。それはさておき、日本は片道切符の異世界転移中ですよ?」

 実体のない、丸い影ふたつに対して――こう告げたのだ。

 新しい世界は雑音まみれ。

 しかし、それは人間には聞こえない。
 所詮は精霊達の騒ぎ声に過ぎなかったのだ。

 そろそろ転移も完了する頃。
 精霊楽士さん、新たな楽譜を奏でましょう。

    *

 仰向けになっている少年。悪夢との通信が途絶えた。
 いや、正確には名も知らぬ医者からだと思うけど。――少年、言霊転寝が所有する携帯電話に直接かけてきては、薬を取りに来いという内容を伝えたのだった。

「……縁離、どこにいるの?」

 転寝はその場にいない人物に問いかけたが、もちろん返答なし。ベッドの上で銀色の髪がへこたれていた。
 時刻は午前十時一分。枕元にある、丸い目覚まし時計のアラームは既に止まっている。
 きっと、僕の目は死んでいる。この鬱病によって――

 天井はもう見飽きた。「何かが足りない」幻覚が頭を横切っては、転寝の頭に痛みが走る。
 痛みはたいしたことない。数少ない周囲の人達は心配してくれてはいるものの、放任主義な考えをもつ人ばっかりだ。

「仕方ない。自分の事で精一杯なのだから」

 転寝は頭を両手で抑え込み、布団の中でうずくまる。痛みをこらえた。
 頭の痛みが引くと、ベッドから起き上がっては周囲を見回した。やはり、誰の姿も確認できない。

 そして、下の部屋から聞こえる騒めき。
 よく耳をすませれば、秒針を刻む音が聞こえた。

 この家の主、針吉おじさんは時計屋を営んでいる。

 傍に設置してあるベッドの片隅にあったのは、木で造られた机。その上に、茶色い辞書のような厚い本が置いてある。転寝はその本の表面を軽くはたいた。
 タイトルなんて書いていない。そんなの、開く気にもなれないよ、針吉おじさん。

 つい昨日の出来事である。針吉おじさんが面白半分で、転寝がほぼ寝たきりの部屋にさりげなく置いていったのだった。
 どこからか借りてきた感じがするが、転寝自身は一切、手つかず。

「その上、さっきまで悪夢を見ていた感覚に襲われて――もういいや。喋るのも面倒くさくて、何もしたくない」

 素直な言葉。そんな転寝の言葉を誰一人と聞く者はこの家には居ない。どこか近くの公園とかで気分晴らしに出かけているかもしれない。

 考えるだけでも苦痛。

 また頭痛がしたので、布団の中でうずくまる。さっきと同じだ。
 痛みが引くと、転寝は仰向けになった。そして、左手を広げて天に掲げるのであった。
 そのまま天井をじっと見つめた転寝はふと感じた。

「そういえば着衣どうなっていた?」

 転寝は胸元を摘まむ。透き通る布生地の肌触り。
 当然のようにスーツの袖がだらけていたが、気分が悪いわけではない。

「……そうか、僕は通気性抜群の紺色スーツを着ていたのか」

 二年間、このままの服装で寝込んでいたかもしれない。いい加減、着替えないと。
 動く気力が戻ったので、転寝はベッドを離れて、襖窓から外を眺めた。
 桜吹雪が夜空を圧倒する。

 ――ここは夜桜街道。

 旅人が出逢いと別れを繰り返す街道。まるで商店街のように店が並び、地面には赤茶色のレンガが敷き詰められている。
 太陽が昇らないこの街道は「万年桜」という名の桜が植えられている。

 万年桜は、夜空をマゼンタ色に照らして年中無休に咲き乱れる独特な特徴をもつ。
 そんな神秘的な場所に、もう二年も滞在している。

 そして、あの時起きた災禍『東京パンデミック』は忘れない。
 もう二度と見たくない光景は思い出すだけで、めまいがしそうだ。

 少し黄ばんでいるシャツを脱いた転寝は、近くのタンスの中に入っていた真っ白なシャツに着替えた。
 そのまま残りの下着ごと取りかえた転寝は、椅子の上においてあった赤いナップサックを右肩にかけた。
 これは縁離のもの。だが、自由に使っていいのだと、鬱が発症した頃から言いつけられていた。

「さてと、そろそろ出かけないと。薬を取りに行くために」

 転寝は合鍵を使って、針吉おじさんですら、お留守にしていた時計屋を後にした。

 相変わらずの万年桜。風が靡けば、視界を遮る程にも達する。
 しかし、幸いな事に本日はそれほど深刻ではなかった。

 ぽつ……。
 転寝の頭部に小物が当たった。

 何か、足元に落下でもしたのだろうか。
 すぐさま見下ろした転寝の足元に、黒くて丸いのが一つ。ぽつ、落ちていた。

「この小さいの、眼帯だね」
 それを拾い上げる。すると、今度は女性の声が聞こえてきた。

「すまない。それを返してくれ」
 転寝は声のした方向へ目線をやると、一人の少女が立っていた。

 黒猫の形をした帽子に隠れた茶色の短髪。ふすま風でも透き通るような透明度で、うっすらと赤紫色が映り込む瞳。青みが掛かった袖が長いシャツとチェック柄のスカートを着ている。じっと、転寝の手元を見つめている。

「どうした、少年よ。その眼帯を早く返してくれないかっ」

 きしゃー。
 彼女の左眼には食虫植物が寄生していた。

「すまない……。その眼帯は一年ほど前、私に寄生したモノリウスの保護用でなっ」

 転寝は無言で彼女に渡した。もう何も考えたくない。
 今も尚、鬱病に苦しめられているからに決まっている。

「ありがとう少年よ。で、このノーツシンボルは何だろうなっ」
 転寝の手には、ノーツシンボルがあった。

 ポケットから無意味に取り出したのか?

 ノーツシンボルとは国際警察官又は正式な申請手続きを済まして探偵業を営んでいる者で行われる、いわゆる世界番付のようなものである。順位が上がるほど地位と名誉があるという、至って何処にでもありそうな単純なシステムとイメージをした方が理解しやすい。

 二年ほど前から始まって以来、半月毎にWNS(ワールドノーツ協会)から世界規模でランキングの通知が定期的に届けられる。但し、探偵業を営む者は事務所に所属することが絶対条件でもある。

 通知書は身分証明書の役割も果たすカードとして発行されるため、命の次に大切にしなければいけない財産ともいえる。

 この時にふと、とてつもない間違いが起きていたことに転寝はようやく気がついた。

 出かける前の記憶を探る。確か、ベッドの机にある引き出しの中に、財布があって、それで……うーん。そうか、診察券は財布の中に入っていたのではなく、その財布の上にポイっと置いたんだっけ。それから――

 転寝は空を眺めていた。とてもじゃないけど、桜色には見えない。

 あの後、僕は時計を見たのだっけ。で、午前中の診療時間が終わりそうなのを知ったはずだ。それから、慌ただしく家を出たハズだと思う。財布だけを取り出して、どさくさ紛れで漁っては、ポケットにカードを突っ込んだかも。

 そう、時計屋に診察券を置いてきたことを。
 転寝は探偵として大事な証明書と、個人病院の診察券を間違えたのだった。

「診察券、取りに帰らないと」
 俯きになっていた。間違いに失望した転寝はその場で廻れ右でもして、時計屋に出直す事だけを考えた。まさに無駄足を踏んだのだ。

「探偵業なんて休業中なのに……全て鬱病のせいで!」

 だが、お構いなしに彼女はある事を発言した。
「とある映像を入手したら、一時的に正式な探偵事務所として君を向かいいれよう。それが少年にとって一番かも。なんてなっ」

 この言葉で涙が流れだした。

 なぜ、僕は笑ってないんだろう。なぜ――?

 彼女はドルシュラ・R・グリムフォードと名乗った。そして、転寝に提示された条件とは、以下の事を示す。

 一、仮設立後、すぐに申請をして公式扱いとする。

 一、期間は行方不明のクランの居場所を突き止めるまで。

 一、若しくは、所属中にノーツシンボルの更新が三度行われるまでとする。

 この機会に、ノーツシンボルという言霊転寝の持ち腐れが復活すると考えるならば、非常にありがたいことである。この条件をのむ方針で考えようかどうするか。

 といっても、転寝は特別に名前が世界に知れ渡っていた訳でもなく、ノーツランキングは、現在十五万台。紛れもなく底辺だと断定できる。

 もし縁離なら、どうするか。
 何の前触れもなく転寝の頭に横切った。この道筋は吉なのか。

「縁離の立場から考えると、間違いなくその話に乗るだろう。僕、言霊転寝が鬱病から立ち上がるには、これしかない」
 音が聞こえた。パタパタ、パタッ。「 (――流石よね、解析者様は)」

 すぐに方向転換した少年は即座に走った。
 向かう場所は、当然、針吉おじさんの営む時計屋。

 この時の表情は誰にも分からない。転寝が一生懸命、走っては疲れて歩き、また走りだすその姿は、まるでメロスにも例えられそうである。門限は無いが。

 急ぎ足で針吉おじさんの時計屋へ帰宅した。家の中に飛び込むくらいの勢いがあった。
 鬱病? そんなのは知らない。周囲にそう知らしめる程の活動力に見えたと思う。

 そして、部屋まで引き返しては縁離の元へ駆け寄る。あれ?
 いつの間にか縁離が帰って来ていたのだった。手には小さなレジ袋を持っていた。

「転寝殿、薬ならさっき妾が秒速で――」
「そんなことはどうでも良い。早くあの少女、ドルシェラさんに詳細を聞かないといけないから」

 転寝は縁離を引っ張っていくのである。

「道標は立った。おだーいじにー」
 ――パタパタ、パタパタ。

 一瞬、窓の外に二つの影が映りこんだ気がした。

 ひとつ目の影。髪の長くて、シルクハットを被った手品師のような少女。
 もう一つは天輪と天使の翼がくっつき、浮遊する紙芝居の台と思われる何か。

 そんなのなんてお構いなしに時計屋を飛び出した転寝だった。

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