小説のタイトル・プロローグ改善相談所『ノベル道場』

灼眼の魔女伯爵~辺境に飛ばされた14歳、たまに【内政チート】とケモみみ使い魔を使って、ワンマン領地改革!

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スレ主 ピロシ 投稿日時:

 偉大な魔法使いであるガリア皇帝が崩御した。しかし、崩御する直前、彼は人体召喚の儀式で間違って召喚してしまった魔女『マキ』に、皇太子(新皇帝)の補佐を頼み、彼女も了承する。

 召喚者の遺言に従って自由気ままに新皇帝の内政を陰で補佐しつつ、見事に国を立て直すことに成功したマキ。

 だが、一ヶ月を過ぎた頃、突然義兄である新皇帝に呼び出される。

「すまん! 東の国境がきな臭いから、明日から辺境伯爵として領地の防衛よろしくっ!」

「了解。その代わり、私のケモみみ従者(最強)を連れて行くからね」

 こうしてマキは、爆裂魔法を使う犬剣士(狼男)『ハンス』と、光と闇以外の全属性を操る猫格闘家(白虎)『ミーナ』を連れて、新しく任された東の辺境へと向かうことに。

 しかし、その辺境地は前領主のクソみたいな統治のせいでリアル世紀末状態に陥っていたのだった。

 ぼったくりギルドに、暗殺の機会をうかがう大商人、やる気がない酒浸りの指揮官やブラックな農園地主など。

「仕方ないわね、アイツとの約束だし」

 マキは山積する課題に、【チート級】の知力と不敵な笑みを巧みに使い、時には帝国最強のケモみみ従者たちも活用して、全力で解決していくのだった。

【1日1話以上更新】
⑴革命的内政編『第1章』連載中〜
⑵電撃防衛戦編『第2章』
⑶超外道外交編『第3章』
⑷帝国分裂編『第4章』
⑸生産突撃戦編『第5章』
⑹告白と救国編『最終章』

悩み)あらすじはライトな感じにして読者に来てもらって、プロローグ重いのはどうですか?

プロローグ

『偉大なる魔法使い ガリア皇帝が危篤!』

 この情報は瞬く間に、皇帝とその家族や一部の臣下たちが住まう城の中を駆け巡った。

 身の回りの世話をしていた使用人(メイド)たちや長く皇帝に仕えていた臣下たちは、涙を流しながら主君に別れの言葉を送っていく。
 
 特に深く悲しんだのは、皇帝の息子アルベルトだった。彼は、最後まで父のそばを離れることを拒み、ベッドにしがみついて嗚咽を漏らし続けた。

「出て……いけ。バカむす……こ」

 だが、皇帝が振り絞るように出した命令によって、皇太子は強引に手を引き剥がされて、使用人たちとともに部屋から出されてしまう。

 そして、皇太子アルベルトと入れ替わるように、若い男女の従者を引き連れた訪問者が寝室の前に姿を現した。

 訪問者は、引き連れていた従者たちに金銀宝石の装飾が施された扉を開けさせて、寝室へ一歩足を踏み入れる。

 続こうとする従者には、右腕を伸ばして「そこで待て」と指示を送り、寝室の扉を閉めさせた。

 こうして寝室には、ベッドの上で横になっている皇帝と、その訪問者の二人だけとなった。

「あらあら、お迎えの言葉も無し? せっかく来たのに」

 病床の皇帝の前に姿を見せたのは、活動的に短く切られた外はねした黒髪の少女。

 髪色と対称的な純白のドレスを着た少女は、まだ幼さが残る顔立ちをかき消すように、ふくらみの小さな胸を張ってヒールを鳴らす。

 それは、国母として国民から愛されていた今は亡き王妃を母に持たない、皇帝が領内視察の際に拾ってきたとされる灼眼(しゃくがん)の持ち主。

 当時赤ん坊だった彼女も、今や皇太子の義妹として立派に成長し、城内で人目につかないように質素な暮らしを送っていた。

 血縁の無い者が皇帝と二人っきりで会うことは、本当ならば許されない。

 だが、皇帝が強く希望したことから、有り得ないこの対面が実現したのだ。

「あら、まだくたばってなかったの? ウフフッ、往生際が悪いですこと。まぁ、その様子ならあと数分の命かしらね」

「マキ……来てくれた、の……だな」

 すでに途絶えかけていた皇帝の意識が、わずかに回復する。

 脈に合わせるように指先が弱々しく動くが、息をするので精一杯な様子。

 だが、出会って間もなく吐かれた暴言も気にする様子もない。むしろ、マキと呼んだ少女と見て嬉しそうに頬を緩めている。

 少女は冷たい目を病床の皇帝に向け、静かに口を開いた。

「えぇ、約束通り来てやったわよ。一応、アナタには世話になったわけだしね」

 皇帝に向けるものとは思えない言葉遣いだが、どこか気品と力強さを併せ持つ声色。

 それが死を迎える皇帝と、妾(めかけ)の子の秘密空間に反響する。

「あり……がと、う」

 枯れ木のようにくすんだ肌、すっかり輝きを失った瞳。

 生と死の狭間に立つ人間の特徴がありありと出ていた。

 マキは皇帝に合わせるように薄らと笑い、細く弱り切った皇帝の髪を優しく撫でる。

「あと数分で、アナタと出会ってちょうど十四年。きっと、あの世でも妃(きさき)様がアナタの迎える準備を終えているわ」

「ど、うだ……かな……」

「さっさと逝けばいいのに、そんなに私と二人っきりになりたかったの?」

 落ち着きの払われたマキの言葉に、皇帝も皮肉っぽく笑う。

 刹那、安らかだった皇帝の表情が苦悶で歪む。

 首を少し動かしただけで全身を駆け巡る激痛。

 それは、病魔がすでに全身を侵していることを示していた。

「……少しだけ楽にしてあげるわ」

 皇帝の苦痛を感じ取ったマキは、右手を皇帝の額に沿えた。

 直後、彼女の右手が温かみのある淡い光に包み込まれる。

 その光は、まるで皇帝に吸収されるように、額の中に吸い込まれていった。

 ほんのわずかだが、病床の皇帝の顔色に生気が戻る。

「今のは一時的だけど、痛みを和らげる魔法よ。どうかしら?」

「ありがとう」

 マキの質問に、皇帝は頷いて答えた。

 苦痛で歪んでいた表情も、再び落ち着きを取り戻している。

「ふぅ……すまんな。お前から与えられた余命十四年……あっという間だった。あの時の約束通り、アルベルトが成人するまで本当に命を狩るのを待ってくれるとはな」

 皇帝は遠い目で、ただ天井の一点を見つめる。

「あら、信じてなかったの? 私は約束を守る魔女なのよ」

 マキは小さな白い両手で、皇帝の右手を優しく包み込むように握る。

 魔法使いが治める帝国『ガリア』の皇帝にして、最強の魔法使いと称されたときの面影は、もうすっかり消え失せていた。

「普通魔女の言葉なんざ信じないだろうさ。女は男を騙して笑う。そんな生き物さ」

「フフッ、それは『死ぬときは一緒よ』と誓い合ったくせに、アナタを置いて先立った妃(きさき)様への皮肉かしら?」

「その文句はあの世で散々言ってやるつもりだ。だが、この世に残る者のことを考えていたら胸が苦しくなるわい」

「アルベルトのこと? あの子はアナタの後継者として立派に育ったわ。だから、あとは私に任せなさい。アナタが愛したこの国や息子、この私がしっかりと見届けてあげる」

「本当にお前には迷惑ばかりかけたな。ワシのせいなのに、妾の子として扱われ、蔑まれるような言葉を耳にするたびに心が痛んだ。本当にすまんかった」

「まぁ、その分特別扱いしてもらったし、人間の生活に飽きることも無かったわね。ただ、この未熟な身体と少し動きづらいときもあったかしら。次に禁忌の人体召喚の儀式をするなら、ちゃんと成長した身体を持つ魔女を召還するのよ」

「全てはワシが……ワシが死んだ妻の復活を願ったせいじゃ。お前を……すまん、許してくれ」

 皇帝は軋む身体に鞭を打って、上半身を持ち上げる。

 目に涙を浮かべ、マキの手の甲の上に空いていた左手を置き、申し訳なさそうに何度も謝った。「すまん」と言って頭を前後に振る度に大粒の涙がシーツの上に落ちていく。

 マキは皇帝が頭を揺らすたびに、何度も首を横に振った。

「別に謝ることないわ。アナタの愛する者を失った悲しみやその復活を願う気持ち、そして復活の代償に自分の寿命を差し出す覚悟。アナタが私を生んでくれたおかげで、私も楽しい生活を送れているし、こう見えて感謝しているのよ」

 マキは皇帝と出会ったことのことを思い出し、懐かしむように目を細める。

「……先祖代々続いたこの国(ガリア)も私の代でかなり大きくなった。だが、四方を大国に囲まれた国難の時、アルベルトに全てを背負わせてしまうのはやはり心苦しいわい」

「あら、『鉄血皇帝』と称されたアナタがそんな弱音を吐くなんて、やっぱり死は人を変えてしまうのは本当かしら。ハァ、残念だわ」

 マキはおどけるように、わざと語尾を伸ばす。

 だが、皇帝はマキの非礼について一切怒らなかった。

 弱冠十八歳で大陸中央部に位置する『ガリア帝国』の頂点に立ち、幾多の侵略を弾き返して領土を拡大させた功労者は、反対にマキの皮肉を鼻で笑い飛ばしてみせたのだった。

「お前もいつかその無駄に長い命を終える時が来たらわかるさ。この悲しみは……だけど、そんなお前だからこそ、アルベルトの妹という身分でアイツのことを頼みたい」

 ここで、一時的に皇帝の目力が強くなる。

 弱々しい懇願の目ではなく、強い意志を感じさせる目の色に、マキも表情を引き締めした。

「それは遺言と捉えて良いのかしら?」

「あぁ、そう考えてくれ。今まで通り、アルベルトの妹として振る舞いつつ、ヤツを支えてほしい。ヤツはしっかりと王の器を備えておる。だが、まだ経験がない。普段は妹として振る舞い、ヤツに手を差し伸ばしてやってほしい」

「その願い、聞き入れたわ。さぁ、思い残すことは?」

 マキは即答した。

 武勇に秀でた皇太子アルベルトの影の保佐人として、陰ながら支えてきたのは昔から変わらない。

 これまで通りと変わらない生活を送れということなら、断る理由はなかった。

「フンッ、思い残すことは無い。お前がいれば、この国もアルベルトも安泰だ」

「フフッ、任せなさい。アナタが愛したこの国、必ず守ってみせるわ」

 マキの了承を得て、ホッと安堵の色を顔に出す皇帝。

 喉を絞るような掠れた笑い声をあげて、大きく息を吐いた。

「だが……ワシの寿命はもうすぐ尽きる。それにお前を召還したときに二十年分の寿命をお前に差し出してしまった。もう代償はもう払えないぞ。良いのか?」

「ウフフッ、それぐらいはおまけするわよ。元々、アナタの『アルベルトが成人になるまで待ってくれ』っていう願いを聞き入れた私にも問題があるわけだし。さぁ、そろそろ死ぬ?」

 マキは、掴みどころのない笑みを浮かべて、愛おしそうに皇帝の顔や首筋に掌(てのひら)を滑らせる。

 ややあって、皇帝は覚悟を決めたように、そして、どこか残念そうに大きく息を吐いて首を縦に振った。

「……うむ。頼む」

「ねぇ、そんな顔しなくても大丈夫よ。楽しませてもらった分、痛みもなく安らかに逝けるようにしてあげるわ」

 皇帝の固い覚悟を感じ取ったマキは、左手で皇帝の瞼を下ろした。

 慎重に周囲の様子を確認し、椅子から腰を上げる。

「じゃ、おじゃましますわ」

 マキはベッドの上に這い出て、皇帝に覆いかぶさる様に上から首に腕を伸ばす。

「ありがとう」

 皇帝の最期の言葉は、マキに対する感謝の言葉だった。

 マキは微笑んだ。頬がほんのわずかに上気する。 

 マキは、静かに、刹那の間だけ、皇帝の顔を見つめた。

 目に焼き付けるようにして、別れを惜しんだ。

「こちらこそありがとう。さようなら」

 落ち着いた惜別の言葉。

 皇帝も静かに頷いて反応を見せる。

 マキは心を整えるために、大きく息を吸い、ゆっくりと吐いた。

 そして、意を決すると、真っ赤な自分の唇と、生気を失った薄紅色の唇とを重ねたのだった。

 マキは唇を重ねたまま、大きく息を吸った。

 皇帝の身体に眠っていた魔力やほんのわずかな生気が、身体の中からマキの口の中へ取り込まれていく。

 ややあって、皇帝の脈動が絶たれた。吸い込む生気も、魔力もなくなった。

 マキは重ねていた唇を離し、皇帝の亡骸に毛布を丁寧に被せる。

 次に、枕元のシーツのしわや服装を整え、皇帝の両手を手に取って胸元で指を組んであげた。

 最後に部屋を去る前、安らかな表情を浮かべる皇帝の顔をもう一度だけまじまじと見つめた。

「はぁ、最後まで面白い男だったわ……でも結局、私はアナタの妻の代わりにはなれなかったのね。そこだけが残念だわ。あの世でも元気に過ごすのよ」

 名残惜しそうに大きな独り言を漏らすマキ。

 反応してくれる人はもういない。

 マキは、諦めたように小さな溜息を吐いた。

「はぁ……人に情が湧くなんて思ってもいなかったわ」

 目を細めたまま俯いて、下唇を噛み締める。

 そして、熱くなった目頭を指で押さえながら、足早に皇帝の寝室を後にしたのだった。

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