小説のタイトル・プロローグ改善相談所『ノベル道場』

アームドモンスター

スレ主 和田慶彦 投稿日時:

https://www.raitonoveru.jp/counsel/novels/thread/15830で相談したもののプロローグです。
3案の人気が高いようなので3案にしました。
この出だしだけで1万字近く使ってしまいました。
こんなもので良かったのでしょうか?

プロローグ

 2体の怪物が戦っている。
 1体は巨大で、異形である。棘と鉤爪の付いた、鎖のような巨大な触手が生えている。体表には無機質な外殻を纏っている。虫のような透明な羽が生えていて、そこから出す「力場」で宙に浮いている。
 もう1体は人型である。しかしその頭は獣の様であった。左手に大太刀を持っている。腰から大砲が生えている。その様と、鎧武者のように全身を覆う装甲から人工物であることはわかる。
 異形の方は、この星の王であった。人間など煮ようと焼こうと好きにできる、強大な力を持っているはずだった。
 しかし今はこの、人工の怪物に圧倒されている。
 無数の触手を向かわせると、避けるか刀で切り払われる。
 体格で勝っているはずなのに、力比べではなぜか押される。
 距離をとって魔術を撃とうとすれば大砲を正確正確な狙いでぶち込んでくる。
 王はこいつらの呼び名を知っている。人間どもが、あの矮小な生き物たちがアームドモンスターとか呼んでいる奴だ。
 人間に飼いならされた裏切り者のモンスター。中には人間が入っているはずだ。引きずり出して地獄ですら生ぬるい苦痛を与えてやろうと思っていた。
 しかし今はそんな余裕すら無く、このアームドモンスターをただ倒すことだけを考えていた。
 王が雄叫びを上げる。近くに生身の人間がいれば、その叫びだけで精神が発狂し、肉体が変質していただろう。その様な、超常的な力を持つ叫びだ。
 アームドモンスターも、グオオオ、と、叫び返すように大出力のエンジン音を響かせる。
 迫りくる無数の触手を、アームドモンスターは「前に避けた」。その勢いのままタックルをぶちかます。王がバランスを崩し、そこに太刀による一撃を加える。王の強固な外殻があっさりと切り裂かれ、中身に食い込む。
 そこに触手が絡まるが、それがどうしたとばかりに刀を振りかぶり、強力な一撃を食らわせようとするアームドモンスター。
 王はそのまま触手に生えた棘を食い込ませ、超常的な力をもってアームドモンスターに「仕掛け」を施した。
 こうすれば──
(篝火、どうした、動きが悪いぞ)
 アームドモンスターを操っていたのは子供だ。この様な子供にも強大な力を与えるのがアームドモンスターという物だった。
 篝火と呼ばれたアームドモンスターは、さっきまで子どもの「思い」通りに動いていた怪物は、急に言うことを聞かなくなった。
(制御系をやられた?暴走してる?)
 子供は歳に似合わず冷静に状況を分析する。
 急に動きの悪くなった篝火を見て、王は心の中でニヤリと笑った。
 こいつらはこうすれば中の人間の言うことを聞かなくなるのだ。
 さあ、他のアームドモンスターのように怖気づいて逃げろ。もしかすれば中の人間を殺すかもしれない。これは見ものだ。
 しかし、篝火はそのまま王に刀を打ち込んだ。
(!?)
 ケンカをふっかけてきて、散々こちらに攻撃してきていた王に篝火自身もイラついていたのだろう。篝火は力任せな動きながらも、王に猛攻を仕掛ける。
(・・・・・・!!)
 王は逃げた。敗走した。王はこの様な状況でまだ足掻くほど愚かではなかった。
 王が逃げたので気が済んだのか、全力で逃げられたら自分の足では追いつけないことをわかっているのか、篝火の怒りの矛先はさっきまで自分を好きなように動かしていたガキに向かった。
 篝火の剛腕が操縦席に向かう。ベリベリと装甲を引き千切る。中からガキが飛び出してくる。手には刀を持っている。
 それを見て、篝火は握り潰そうとするのではなく、全力で振りほどいた。子供がたまらず離れる。
 距離をとった子供を篝火は睨みつける。
 近づいたら怖いぞ、強いぞ、と威嚇する猫のようだった。
 それを全高25メートルの篝火が、人間の子供相手にやっているのだから滑稽である。
 子供は暴走した篝火から離れる。人間が走っているとは思えない速さで駆ける。
 それを「自分はあのガキに勝ったのだ」とし、篝火もまたその場を後にした。

 長い金髪は上等な蜂蜜のように甘く輝いていた。
 ぱっちりと開いた目には翠色の瞳が宝石のように煌めき、髪と同じ色の長いまつ毛が縁を彩っていた。
 愛らしい顔立ちは子猫のようである。
 ステラ・サントラナは宝石のような少女だった。
 家はこの星の小さな領地を持つ、宇宙全体で見ればあまり裕福でない方に入る郷士である。
 教養は家柄に比して大変にある。
 将来はこんな開拓中の田舎星ではなく、どこか大国の大家にでも貰われて、何不自由無く暮らせたであろう。
 彼女がある狂気に魅入られなければ。
 ステラは昔から恋愛物語ではなく、ハンター達の英雄譚に胸踊らせてきた。
 「皇国」から1年遅れで発信されるマンガやアニメを見て、興奮しては居ても立ってもいられず、VRMMOに接続して本名でプレイしている。勿論典型的な勇者プレイである。顔バレまでしている。
 剣術や銃の扱い、果ては初歩的な魔法まで習った。
 初めのうちはただの子供心だと、そういう習い事をしても良いと思っていた思っていた両親も、ステラが小遣いを貯めて旧式のシミュレーターを買ったあたりで些かよろしく無いのではと思い始めた。
 領地にはハンター達が時々やってきた。ステラは彼らの話を聞いてみたいと思ったが何も話してはくれなかった。どうやら両親が口を利かぬように言い含めていたらしい。
 ステラは英雄譚に憧れるあまり、自らが英雄になろうとしていたのである。
 そしてハンターギルドへの入会の最低年齢である15歳の誕生日の前日、ステラが家から出ないようにと見張っていた父の目を掻い潜って家を出て、街まで来たのである。
 家から持ち出した旧式の、デカイ割に出力の低いレーザーガンを持って、鳴り響く携帯端末をマナーモードにして、服がボロボロになるまで歩いて。
 さあハンターギルドに入るぞ、という所でハンターギルドの前で「100ボル」と書かれた看板を背負った子供が立っているのを見つけた。
 帽子を被り、薄汚れたコートを羽織り、手には棒を持っている。
 ハンター相手に小間使いの仕事でもしているのか、と思い近づいてみる。
「ねえ、君」
 呼びかけられた子供がこちらを向き、帽子で隠れていた顔があらわになる。
 美しい少女だった。
 つややかな黒髪は絹糸のようである。
 肌は白く、陶器のようだ。
 眼差し、というか表情全体がキリッとしている。
 家で飼っていた利口な猫を思い出した。
 これを男が見たら放っておかないだろう。
「何でしょう」
 少女が声を出す。少し低いが、発声の問題だろう。女の子らしく話せば可愛らしい声であろう事がうかがえる。
 何より発音がキビキビしている。聞いていてなんだか頼もしい気分になった。
「君、どんな仕事してるの?まさか売春とかじゃないよね?」
 ステラは少女に聞いた。この器量ならそういう事を頼むやつが大半だろう。
 少女は少し思案してから、
「頼まれたことはありませんが、なんでやると言った以上、お望みならば」
 と、ステラの方をじっと見た。
「ダメだよそんな事しちゃ!!そうだ、生活に困ってるんなら、私が施してあげる」
 英雄は、こんな事をしている子供を放っておかないのだ。
「私はステラ。ステラ・サントラナ。君は?」
「ほりい、です」
「Holy?いい名前だね。この看板は捨てなさい。ちょっと待っててね、今ハンターに登録してくるから!」
 そう言ってホーリーの看板を捨て置かせる。
 ハンターギルドに入るステラだが、すぐ戻ってきて、
「君も一緒に入りなよ。私の手伝いとでも名乗って」
 と言った。

 ハンターギルドの中に入った瞬間、ホーリーはステラが一緒に来いと言った理由がすぐにわかった。
 ハンターギルドの中の連中、どう見てもカタギではない。
 見るからに荒くれ者と言った風情の連中が、「この建物の中で」身を守るための最低限の、それでも一般の方々が見ればひっくり返るような武装をして談笑していた。
 談笑と言っても「談」は下卑たジョークや物騒な仕事の相談で、「笑」は大抵が下卑た笑いだったが。
 ほら、今も入ってきた美しい少女を見つけて品定めをするような目でこちらを見ている。
 ハンター達の喧騒が聞こえる。
 ハンター達の体臭と芳香剤の匂いがケンカして、なんとも言えない臭いになっている。
「屋内は禁酒禁煙です」と書かれた看板が立っていたが、酒とタバコの臭いがした。
 お世辞にもガラの良いところとは言えない。
 ハンターギルド。宇宙の荒くれ共をまとめ上げる巨大組織。
 かつて、人類は別の宇宙に居たとされる。
 そして「何か」が起こり、この宇宙にやってきた。
 それは単なる冒険心からとも、強大な外敵の襲来から逃げるためとも、宇宙レベルの災害から避難するためとも、教会の言う通り神々から使わされたのだとも言われている。
 しかしやってきたこの宇宙もまた危険に満ちていた。
 凶暴で強力な原生生物。
 星を食う化け物。
 意志を持った自然現象。
 物理攻撃の効かない、力ある悪霊。
 神の如き万能の力を振るう邪神。
 それら人類の脅威を人々はまとめて「モンスター」と呼んだ。
 モンスター達は強大で、人類の科学を上回る力をもって人類を殺戮した。
 文明は崩壊し、生き残るために同じ人類に手をかけるならず者たちも居た。
 それに抗い、モンスターやならず者を狩る者を、人々は「ハンター」と呼んだ。
 彼らが協力するために寄り集まったのがハンターギルドである。
 その歴史は星間国家より古く、その影響は宇宙中に行き渡っており、「7大国家」でさえハンターギルドに表立って敵対は出来ない。
 今日もハンター達は、個人が持つには強力すぎる力を持って、宇宙を駆け巡っている。
 隣を歩くホーリーの手をぎゅ、と握った。
 ホーリーは彼らの視線をどこ吹く風で流している。
(この子にはわからないのね、この恐ろしい空気が・・・!!わたしにはわかる。でも負けない、だって私は英雄になる女だもの・・・!!)
 そう盛り上がりながら、ステラは受付に行った。
「はい、なんでしょう?」
 受付では気品のある女性が柔和な笑顔を浮かべていた。英雄譚の通りだ。受付嬢は美しく皆の人気者で、しかし主人公だけに心を許すのだ。しかし彼女の恋は実らない。なぜなら英雄には共に戦い恋に落ちる相棒がいるのだから・・・・・・!決して自分が女だからではない。女性同士の恋を否定するほどステラは狭量ではない。LGBTに配慮せよ!!
 ステラは受付嬢が自分に恋をするという前提で盛り上がった。
「あの、いかがされました?」
 一人で盛り上がってニヤニヤしているステラに受付嬢が声を掛ける。ステラはハッと我に返って、
「あ、ハ、ハンターに、えっと、なりたいんですけど」
 急に現実に引き戻されて言葉がうまく出なかった。
「入会試験ですね。身分証明はありますか?」
 ステラとは対照的に、受付嬢はハキハキとした口調で話す。
「あ、はい、これですね」
 赤面しながらステラが身分証を出す。
 それをシークレットモードの立体映像でピコピコと確認し、称号が終わると、
「では、入会試験を行うのでこちらに来てください」
 と言ってカウンターから出てきて、通路に案内する。
 ステラは背負った大きな銃をホーリーに渡し、
「これ預かってて。もし変な人に絡まれたら、ぶっ放していいからね」
 と言って、受付嬢に付いて行った。
 カウンターからはわからなかったが、腰にゴツい銃をぶら下げている。
 やはりこの女性も荒くれ者共を
(こ、これがハンターの試験・・・?)
 試験の内容はバカにしているのかというくらいに簡単だった。
 この星の公用語を読み書きできるかの筆記試験。
 簡単な四則演算。
 子供に話しかけているかのような面接。
 レーザーサイト付きの射撃試験。
 こんなものが満足にできなかったら、満足な生活が送れないんじゃないのか。
 それらが終わって少し待つと、
「合格です。では、これがハンターの証明証になります」
 と言って受付嬢はステラにカードを渡した。
 そこに刻印されたDランクという表示に、ステラは憤慨した。
「Dランク?」
「はい、新人は一律Dランクです」
「あんな試験じゃ私の能力は測れないわ。Bランクの試験を受けさせなさい」
 不満を漏らすステラに受付嬢は全く臆せず、
「時々いるんですよ、貴方みたいに自分の実力はもっと上のはずだ、と言う新人が」
 と言った。
「ランクには権限が付きます。いくら強くても、ギルドに協力的かどうかもわからない人に、権限は与えられないということです。高ランクになりたかったらギルドに『貢献』してください。つまり叩き上げになってください」
 この手の輩の御しかたを、受付嬢は心得ている。
 叩き上げ、というロマン溢れる言葉に、ステラは満足し、納得した。
 広間に戻ると、ホーリーがビーフジャーキーを噛みながら待っていた。
「お前、いつもギルドの前に立ってるだろ」
「こんなかわいい子があんなとこにいちゃダメだぜぇ~?」
「さらわれちゃうよー」
「これも食うか?」
 ホーリーの周りにハンター達が群がっている。
 ホーリーの膝いっぱいに酒のつまみのようなものや保存食のパックに付いているキャンディやチョコが積まれている。
「こらアンタ達!!この子をいやらしい目で見てるんじゃないの!!」
「お、仲間か?こっちも上玉だな」
 ヒューヒューと囃し立てる声が聞こえる。
「可愛いなんて言われ慣れてるからなんとも思わないよ。ホーリー、こっちに来なさい!!」
 そう言ってホーリーの手を引くと、菓子を懐にしまいながら付いてくる。
「よろしくな、新入り!!」
 去っていくステラに、後ろから声がかかる。
 どうやらステラは歓迎されたようだ。
 ステラは去りながら、そんなに悪い奴らじゃなかったのかな、と思った。

 ハンター達の集まる大衆食堂に行くと、食事の量にビビった。
 「Aセット」を注文したステラの席には、ステラの肩幅より広いお盆いっぱいに詰め込まれるように、鳥の丸焼きと、1本でお腹いっぱいになりそうな肉と野菜の串焼きが3つと、これまた一杯でお腹いっぱいになりそうな具沢山のスープが並んでいる。
 向かいの席のホーリーの席には1皿、魚が丸ごと一匹、ホイル焼きにされて乗っていた。
 ホーリーは遠慮して安い単品メニューを頼んだのだ。
(こ、これがハンターの食事・・・!!)
 肉体労働であるハンターは大喰らいである。それが集まるこの店も、当然量が多い。
「ホ、ホーリー。足りなかったら私の分も少し分けてあげるね」
 ホーリーはステラの皿を一瞥すると、
「はい」
 と答えた。
「じゃ、じゃあ、食べようか・・・」
 皇国のマンガの主人公だって大概が大食いなのだ。私だってこれくらい、と自分に言い聞かせながら、ステラは食事の前の祈りをはじめた。
「天におられる私達の父よ。皆が聖とされますように・・・」
「いただきます」
 ステラが祈りを捧げていると、ホーリーが「イタダキマス」とだけ言って食べ始めた。
 漫画でよくやるやつだ。ヒーローは「イタダキマス」とだけ言って食べ始めるのだ。
「い、イタダキマス」
 ステラもそう言って食べ始める。
 目の前の鳥の丸焼きのモモにナイフを入れる。口に運ぶと、養殖鳥特有の、柔らかい代わりに旨味のの少ない肉だった。
 串焼きを食べる。うん、これも養殖のベヒモス肉だ。
 串焼きを半分くらい食べた所で、スープに手を出す。クリーミーで、濃厚で、具沢山で、シチューだこれ。
 どれも味付けが濃くて胸焼けしそうになる。
 完食は諦めて、せめて一矢報いようと串焼き一本とスープと名乗るシチューを片付け、腹が限界になるまで丸焼きに齧りついた。
 ホーリーは食べ終わってこちらをじっと見ている。皿の上には魚の骨がきれいに残っていた。
 魚ってあんなに綺麗に食べられるんだ、と思った。
「ホーリー、こっちのも食べても良いんだよ?」
「いえ、私は・・・」
「いいんだよ?」
「・・・では、失礼いたします」
 と言って、ホーリーは串焼きに手を伸ばす。
 ホーリーは魚を丸ごと一匹食べた割にパクパクと食べる。
 食が細そうな外見をして、よく食べる。
 結局串焼きを2本と鳥の丸焼きのほとんどをホーリーは腹に収めた。
 鶏の軟骨にまでかぶりついている。
 コイツ腹に虫かガキでもいるんじゃないかとステラは思った。

 2人分の宿を取って、ホーリーを泊まらせた。
「良いのですか?こんなにお金使って」
 ホーリーがステラの懐の心配をする。
 実際、今日の飯と宿だけで、今日の日のために溜め込んだ小遣いの半分を使っている。
「大丈夫!明日からハンターの仕事をして、どんどん稼ぐから。ホーリーは勉強とか家事をしなさい」
「ありがとうございます」
「今まではどんな所で寝てたの?」
「ベッドがあるところは久しぶりです」
 ホーリーはベッドに転がり込む。
「とりあえずシャワー浴びるね」
「はい」
 そう言って風呂場で服を脱ぎはじめた時、シャワーを浴びている間に財布を盗まれて逃げられる、という話を思い出した。
 いやいやそんな、あんな可憐な少女がそんな事をするはずがない。
 はずがない。
 いやいやまさか。
 ・・・・・。
「ホーリー」
「はい」
 ホーリーを呼ぶと、返事が返ってきた。
「一緒に入ろ?」
「え・・・?」
 ドア越しにホーリーの困惑する声が聞こえた。
「今日から私達は一蓮托生。お互いをさらけ出すことも必要よ」
「しかし・・・」
「・・・それとも一緒に入れない理由があるの?」
 ステラがホーリーに問う。
「だって私、男ですよ?」
「は?」
 それを聞いた瞬間、ステラは下着姿で風呂場から出て、ホーリーのコートを脱がせた。
 コートに隠れてわからなかったが、その下の体はよく鍛え上げられていた。
「・・・・・・!」
 ステラは絶句する。股間に手を伸ばす。何かがある。触っているうちに少し硬くなってきた。
「い」
 ステラが声を上げる。
 いきなり服を脱がされ、股間を触られたホーリーが困った顔をする。
「いやああああああああああああああああああああああああああ!!」
 ステラは絶叫した。

「お、男だって隠して近づいたの?」
 服を着ながら、ステラが言う。
「最初から男ですが。女だと思っていたんですか?失礼な」
「だって顔だけ見たら女じゃない!詐欺!気持ち悪い!勃起してた!」
「貴方が撫でたからでしょう。しかも半裸で。」
「~~~~~~~~!!」
 ステラが反論できずに絶句する。
「あと、気持ち悪いってなんですか」
 ホーリーが不機嫌そうに言った。
「と、とにかく、一緒に寝ることは出来ないよ。これで安宿でもとって頂戴」
 そう言って小銭を渡す。
 少し輝いていたホーリーの表情が曇った。
「食事だけで十分です。ごちそうさまでした」
 と、ホーリーはステラの金を受け取らずに出ていった。
 体を洗い、2つあるベッドのうちの一つで寝る。
 体も洗っていない、洗濯もしていないであろうホーリーの体臭が残っている。
 ベッドを楽しみにしていたホーリーの笑顔と、その笑顔が失われた瞬間を思い出す。
 ホーリーの体を見た時、怖いと感じた。
 あの筋肉で襲われれば、ステラなど簡単にねじ伏せられてしまうだろう。
 勘違いで親切にして、相手が男だとわかった途端に手のひらを変えて、あんな子供にビビって追い出した。
 そういえば、約束を違えたことに「ごめんなさい」すら言ってない。
 これは英雄的行動ではない。

 翌日、ハンターギルドの前に行くと、ホーリーがまた看板を抱えて座っていた。
 今度は周りのハンター達が放っておかず、話しかけていた。
「100ボルはちょっと高いよ~」
「せめて一仕事50ボルが相場だぜえ~」
 確かに100ボルはちょっと高い。
 この星では5ボルもあれば飯付きの安宿をとっても余裕がある。
「ちょっといいかしら」
 ホーリーが値切りされてるところに割り込む。
「なんです?」
 ホーリーの声色がちょっと不機嫌そうだった。
「昨日はごめんなさい。未来の英雄として恥ずかしい態度を取ってしまったわ」
 ホーリーがぶすっとした顔でこちらを見る。
「今日こそ貴方に施しを与えるわ。その、いやらしいことを考えなければ、だけど」
「結構です。あといやらしいことをしてきたのは貴方の方です」
「お、なんだ?レズか?」
「俺達は政治的正義に基づいて同性愛者とトランスジェンダーと黒人とその他諸々を支持するぜぇ~」
「ヴィーガンだけは支持できねえけどな」
 周りの男達が囃し立てる。
「私は!!男です!!」
 レズと言われたホーリーが激怒する。
「ん?男?」
「なんだ男かよ」
「俺は男でも良いぜぇ~。LGBTに配慮せよ」
「ふん!」
 ホーリーがどこかへ行こうとする。
「ちょ、ちょっと待って!!」
 ステラがそれを引き止める。
「ヒーローにはサイドキックがいてもいいと思うの」
「なんですかそれ。キックの仕方がしたいなら100ボルで基礎的な格闘技を教えますけど」
「ヒーローを手伝う、助手のようなものよ。貴方私のサイドキックになりなさい」
「小姓のようなものですか」
「まあ、そんなものね」
「私を雇うのですか」
「一回100ボルはちょっと払えないけど、その代わりこれから私の報酬で貴方を養ってあげる。だからそんな看板は捨てなさい」
 ホーリーはステラの懐をチラリと見て、
「では、契約金として100ボルいただきます」
「何契約金って!お金取るの!?私そんなに持ってないよ!大体、普通は貴方の方から私を尊敬してお願いするもなんだよ!?」
「わかりました。昨日ご馳走してもらったこととお声がけしてくださったことを踏まえて、33ボルと4モーケルで手を打ちましょう」
「急に半額以下に値下がった!!でも、やっぱりお金は取るんだ・・・」
「その値段なら俺が買うぜぇ~。本当になんでもやってくれるのか?」
 先ほど男でもいいと言った野郎が声をかけてきた。
「ま、待って!!」
 ステラは自分の財布を取り出して、中身を確認した。
 33ボルと4モーケル。
「私の財布の中身ちょうどじゃない!!君、やっぱり昨日盗み見たでしょ!?」
 ホーリーは黙って首をゆっくり横に振る。
「ダメだと言うなら仕方ありません。私は貴方に見捨てられ、こちらの方に菊文を捧げることになります」
「う、うへへ。処女だけじゃなく童貞も貰ってやるからなあ」
「うう~~」
 ステラは考える。
 流石に財布の中身全部はいただけない。が、そこに、
「ハンターのお仕事で稼ぐのではないのですか?私の尊敬する様な英雄ならそうします」
 とホーリーが言った。
 そうだ、これから稼げば良いのだ。
 ハンターの仕事なら、1仕事で100万ボルも夢ではない。
「わかったよ、これでいいんでしょ?」
 そう言って財布の中身を丸ごと出す。
「じゃあこっちは50ボルだ!!」
 ホモ野郎が食い下がってくる。
 ホーリーはステラの金を受け取り、ホモに向かって首をゆっくりと横に振った。
「ほら、行くよ」
「はい」
 ステラに呼ばれて、ホーリーはハンターギルドの中に入っていった。
「すみません、Dランクの方が受けられる仕事は今日はもう無いんですよ」
 ギルドの受付嬢に仕事はないかと聞くと、その様な返事が返ってきた。
「え、え?」
「明日なら希少植物の採取がありますが、前日までに予約して、朝早くからの仕事になりますね」
「そういうのじゃなくて、モンスター討伐とかの仕事はありませんか?」
「モンスターの討伐も前日からの予約でないと、打ち合わせなどがありますから」
「じゃあ、今から予約します。一番高い奴をお願いします」
「Dクラスで一番高いのは、これですけど、3日後ですよ」
「お願いします、いま有り金全部使って、今日中にお金が必要なんです」
「お困りのご様子ですね」
 横からホーリーが割って入った。
「そうだよ。主に君に払ったお金のせいで」
「では、この小姓めにお任せください!!」
 ホーリーがドヤ顔を決める。
「なにか考えがあるの?」
「私は今、懐に若干の余裕があるので、今日の分のご飯と宿は私持ちということにしましょう」
「は?」
「いえ気にすることはありません。たとえステラさんが昨日私を見捨てた鬼畜生だとしても、今は私の主人ですから」
「いやちょっと待ってその懐の余裕って元は私の・・・」
「今日は私が施してあ・げ・ま・す♪」
 してやったりという顔で、ホーリーはフフ、と笑った。
(こ、こ、コイツ・・・・・・!!)
 どうやら自分は、とんでもない奴をサイドキックにしてしまったようだ、とステラは思った。

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