小説のタイトル・プロローグ改善相談所『ノベル道場』

記憶喪失の俺が、メイドになってお嬢様に仕えるワケ

スレ主 かもめし 投稿日時:

こんにちは、度々お世話になっているかもめしと申します。
皆様の回答を頂いて新しくプロローグを推敲してみました。
設定説明が多すぎるということで、それらを省いてキャラの特徴やその魅力を盛り込んでみましたが……正直自信がありません。
ヒロインの魅力が皆様に伝わるかどうか……ものすごく不安です。自分でも、あれ?これって魅力、なのか?状態です。
世界観は、魔法とドラゴンを盛り込んだファンタジーです。皆様のご意見やご感想を頂ければ、幸いです。

(あらすじ)
「それで? 殺害方法は考えついていて?」
クーヤの主人――セレス嬢には殺害したい相手がいるらしい。
らしい、という曖昧な表現なのには理由がある。それはクーヤが、殺害相手の名前もろとも過去の記憶を喪失してしまったのだ。
彼女が殺害したい相手は誰か? 

「お前が思い出したらすべて教えてあげるわ。えぇ……すべて」

喪失した過去を取り戻した時、世界は戦乱の波に包まれる。

プロローグ

プロローグ

放課後のサロンの利用者は多い。サロンはアールヌーヴォー調の内装に瀟洒《しょうしゃ》な調度品が余裕を持って配置されている。学校内でももっとも上等な空間なのは間違いない。
 故に、利用者は学院に対して多額の寄付を行った名家のみに限られるため、平民からの成り上がりは利用できない不文律がある。
 そんな中、ひときわきらびやかな存在感を放つ女子生徒が、サロンのテラス席でアフタヌーンティーを楽しんでいた。
 腰まで届く艶やかな髪の毛は匂い立つ薔薇のように紅く、切れ長のまつげに縁取られた瞳は青玉をはめ込んだようだ。
髪に劣らず華やかで美しく整った顔には高貴な面差しがあるが、焼き菓子をゆっくり味あうその表情はだいぶ幼く見える。
「このふわふわ……まるで雲みたい。噛めば噛むほどチーズの酸味と甘みが口いっぱいに……あら? あららら?」
「セレスお嬢様、いくら人払いをしているかといって此処はパブリックスペースです。痛々しい奇行はお控えください」
 とろけそうなほど甘い笑顔を浮かべるセレスにすかさず苦言をていしたのは、鼻筋までを銀仮面で覆い隠す、彼女の傍付きのクーヤだ。
「一瞬ね。やっぱり一瞬で消えちゃったわ。残念……もう少しチーズの余韻に浸りたかったのに」
 そんなクーヤの苦言も何のその。マイペースに感想を述べた後、彼女は本日三度目のおかわりを要求してから、
「それで? 殺害方法は考えついていて?」
 ちゃぷん――と。
ポットのお湯がこぼれ落ちる音が妙に大きくクーヤの耳朶を打った。
「……それが俺《・》に女装をさせる理由ですか? セレスティアお嬢様」
 クーヤは金色の縁取りが入ったグリーンのカップをテーブルに置いてから、醒めた口調で問い返す。
 メイドとしては無礼極まりないが、セレスは何故か嬉しそうに頬を緩め、ナナメ下方からコケティッシュな流し目を乗せて、
「さぁ? どうだと思う?」
 それがあなたち冗談でもない、とにおわせるセレスはその可憐な唇に小悪魔的な微笑を浮かべた。稀有な美女のルックス、女性らしい抜群のスタイルと相まって、男を狂わせずにはいられない蠱惑的な雰囲気を醸すが、クーヤは眉間に皺を寄せて険しい表情を浮かべる。
「それがただの戯言であることを切に願います。お互いの将来のためにも」
「将来……ねぇ」
 セレスは紅茶をふっくらした唇に含み、ゆっくり味あうように目を閉じた後、「おいしい」と満足そうに呟く。
 綺麗に反り返った長いまつげを持ち上げて、口元をほころばせるだけで紅い薔薇が咲き匂うような華やかさが増す。
「……お気持ちはお察ししますが、あまり目くじらを立てない方がよろしいのでは? そんなことよりも今は間近に迫った野外実習に集中した方がよっぽど建設的です」
 来月に迫る野外実習の話題を持ちだすが、セレスはすでに追加の焼き菓子に夢中だ。
 そんなやる気のない主人に苛立ちが募り、クーヤは素早く彼女から焼き菓子を取り上げた。
「ちょ、やだ。なにするの!? わたくしの数少ない癒しを邪魔する気!?」
「少しは真剣に考えて下さい。まだ野外実習の内容すら決めていないでしょう!」
 彼女から焼き菓子を遠ざけ、野外実習に関する書類の束を差し出す。すると彼女は弱々し気に呻いたかと思うと、もごもごと口ごもりながら、
「まったく。今も昔も……お前は口うるさいわ」
 昔の話を持ちだされ、クーヤの小言が止む。
 不意打ちを受けたような彼の表情を、セレスは切なそうに見やる。
「……俺の過去を教えてくれる気は?」
「まったくないわ。出直してらっしゃい」
 ぐぅ、と悔しそうに呻くクーヤをセレスはくすくす笑った。
「そんなことよりもお前の方はどうなの? 魔具師の店主はうまくいっていて?」
「露骨に話題を挿げ替えないでください。まったく……ご心配には及びませんよ。親方の腕は天下一品ですからね。今では親方の魔具を求めて行列ができるほどです」
「まぁそうなの。さすがクーヤの先生ね」
 称賛するポイントがどこかずれている気がするが、それをあえて指摘するほどクーヤは無粋じゃない。そうですとも、と相槌を打つ。
「これもお嬢様の慈悲のお蔭です。親方たちもお嬢様に感謝申し上げておりました。嗚呼、そういえばお嬢様の護符が少し痛んでいましたね。実習も迫っていることですし新調なさってはいかがでしょうか?」
 セレスはきょとんとしたが、すぐに内容を理解すると「まぁ!」と目を輝かせて食いついた。
 釘は刺したつもりが、どうやら彼女の脳内で実習という単語は除外されたようだ。それでも挿げ替えられそうになった話題をそれとなく修正できたことにクーヤは満足する。
「楽しそう。もちろん見繕ってくれるのでしょう?」
「えぇ、もちろん」
 間髪入れずにクーヤが了承すると、セレスはふっくらした唇をほころばせ、弾んだ声で「絶対よ」と上目遣いで念押ししてくる。
 そんな年相応の無邪気なセレスの仕草はとても子供っぽく見える。主人なのに、まるで年下の我儘な妹を相手にしているかのような微笑ましさを覚え、クーヤの頬が自然と弛んだ。
(――あれ?)
 ふと、クーヤの脳裏に誰かの面影が浮上した気がした。
 けれど、その面影は猛禽を思わせる太い雄叫びによって掻き消された。
 二人は揃って空を仰ぎ見る。
 遥か高みの、切なげに染まりかけた夕雲を黒い影が突き破ってくる。それはみるみるうちに、対の翼、長い尻尾、鉤爪を備えた四肢までが見て取れるようになった。
「お嬢様!」
「えぇ。すぐに準備を」
 セレスの指示を受け、クーヤは足早に飛竜《ドラゴン》を迎え撃つ準備に走った。
「おっ飛竜《ドラゴン》だ!」
「ひゅー。我らが飛竜《ドラゴン》使い様方のご帰還か?」 
「まぁ! 新しい飛竜《ドラゴン》使いのおツレ様なの? わたくしまだお目にかかったことがないのよ」
 周囲から和気藹々としたざわめきが起こる。しかし、その背中に誰も騎乗していないことが判明するや否や、未熟な生徒たちは然るべき反応を見せた。
「おい! 待て待て待て! あれは自由な飛竜《ドラゴン》じゃないか!?」
「嘘だろ!? 我らが飛竜《ドラゴン》使いたちは何してんだよ!」
「お、落ち着きなさいませ! わたくしたちは誉れ高き準騎士《エクスワイア》の地位を預かる者なのですのよ! 例え天敵が襲って来ようとも冷静に」
 怒号に悲鳴。これが騎士の最高位――【竜騎士】を目指す者の態度か、と逃げ惑う生徒たちを冷めた目で一瞥し、クーヤが重そうにワゴンを押してセレスの元に投擲物を運び込んだ。
「お待たせしました!」
「……クーヤ、それは一体なんの真似事かしら?」
 セレスが胡乱な眼差しで、矢筒と弓を装備するクーヤを見た。
「微力ながらも援護します」
「そんなこと望んでいないわ。ただの見習《ペイジ》は準騎士《エクスワイア》に守られていなさいな」
「ご冗談を。俺は見習《ペイジ》ですが、お嬢様の傍付きですよ。主人が戦うのに傍付きがそれを補佐しないで何が傍付きですか」
 矢筒から抜いた矢を地面に突き刺し、手近にあった燭台を持ちだしてろうそくの火をその矢じりに移す。
 事前に矢じり部分に油でも仕込んでいたのか、矢じりは勢いよく燃え上がる。
「弓術の心得はあります。ただなにぶん我流でありますので、お嬢様のような洗練さは欠片もございませんが」
「洗練? おかしなことを言うのね。この非常時に洗練なんて……」
 クーヤが用意した投擲物は中身がぱんぱんに詰まった皮袋だ。運搬しやすいようについた持ち手を、セレスがおもむろに両手で握る。
「コカトリスの餌にもなりませんわ!」
 人、一人入りかねない袋を、セレスはいとも容易く持ち上げて投擲した。
 まるで小石を投げるように軽々と。その細腕からは信じられない腕力だ。
 クーヤの放った火矢がそれに追従する。狙いは誤らず投擲物に着弾した直後、ドォンッと爆発が起こった。
『くさっ!? げぼっ!!』
 そんな悲痛な叫びがクーヤの耳朶を打ったが、彼は都合よく聞こえないふりをした。
「……クーヤ、あれに一体何を仕込んだの?」
「油と粉末ですが……何か問題でも? お嬢様、飛竜の動きが鈍っています! 今ならこれで狙い撃ちし放題ですよ!」
 目に見えて弱った飛竜《ドラゴン》の姿に、セレスは訝しんだが一理あるクーヤの進言に表情を引き締め、彼が差し出す投擲物を次々に投げ込んだ。
弱った飛竜《ドラゴン》は最早ただのカカシだ。滅多打ちにされ、そのうちの一つが急所に命中した。
ギャオ、と痛みで大きく吠えた飛竜《ドラゴン》の巨体が大きく傾ぐ。
飛竜《ドラゴン》はその衝撃に思わず身を引き、嫌がるように空中で向きを変えて逃亡した。
『くっさああぁぁああい!!』
 クーヤはまた都合よく聞こえなかったふりをして、主人の勇姿を拍手でもって称賛した。
 しかしセレスの表情は険しく、素知らぬ顔で称賛するクーヤをじろりと睨みつけた。
「ねぇ、クーヤ」
「さすがお嬢様です」」
「ねぇ、ちょっと」
「投擲スキルと強化魔術だけなら、あの飛竜《ドラゴン》使いの弟君にも勝りますね」
「わたくしが厳選した粉チーズとハードチーズをどこへやったのかしら?」
「いやー、ですがやはり飛竜《ドラゴン》は頑丈ですね。あの凶器を食らってもよろけるだけですものね。人間ならまず間違いなく即死ですけど……ですが、さすがに今回はその鋭い臭覚が仇になりましたね。はは……いたっ!?」
 不意にセレスが振りかぶった扇子がクーヤの頭部を強かに打った。
「このうつけ! 主人の好物を投擲物に扱うなんて」
「いたいっ。ちょっ、致し方ないでしょう!? そう都合よく飛竜《ドラゴン》を撃退できる凶器なんて用意できませんし! いたっ、つかそれらを調理するこっちの身にもなってくださいよ! 毎度毎度重くて臭いったらありゃしな……いたっ!」
 その後、遅れて到着した竜騎士が止めに入るまで、彼らの攻防は続いたのだった。

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