不思議な雪の第2話 全5話で完結
第二話
作者 あすく 得点 : 2 投稿日時:
ほんの少しだけ、昔のお話です。
ここは、マミの住む町から、遠く離れた場所。
変わったところの無い、森の中です。
空が少しだけ、割れました。はじめは一すじ、そこから蜘蛛の巣のように広がります。
突然、空に走る亀裂から、真っ白な影が飛び出しました。
影は、マミのいる町に向かって、流れ星のように飛びました。
しばらくして、もう一つの影が、同じように空の割れ目から出てきました。
こちらは、先ほどの影と違って、真っ黒です。
黒い影は、白い影を追いかけるように、同じほうへ飛んでいきました。
やがて、マミの住む町の上で、二つの影が出会いました。
黒い影は、白い影に襲い掛かります。
白い影も必死に抵抗しましたが、次第に黒い影に押されていきます。
少しだけ距離が開くと、黒い影から一すじの黒い雷が放たれ、白い影を打ちました。
白い影は、苦しむように体を丸め、次の瞬間に、細かい欠片となって砕けてしまいました。
白い影の欠片は、一片、また一片と、町に落ちていきます。
光を反射して、雪のように輝きながら。
そして、今のお話です。
雪の欠片から立ち上がった、小さな男の子は、空を見上げています。
黒い影が来ないことを、見ているのです。
男の子は、雪の王様でした。
王様は、かつて人間の女の子と、小さな約束をしました。
その約束を果たすために、精霊の世界からやってきたのです。
しかし、その途中に、黒い影の魔物に見つかってしまいました。
雪の王様は、なんとか振り切ろうとしたのですが、逃げ切ることができなかったのです。
マミの手のひらに落ちた雪から、なんとか姿を取り戻しましたが、砕けた欠片からでは本来の王様の姿には、戻れませんでした。
王様は1人考え込みます。
そもそも、この町に来たのも、約束を果たしたいという思いからで、明確にその女の子がいるところを狙ったわけではありませんでした。
この先のことなど何も考えていなかったのです。