私がアイツでアイツが私での第3話 全10話で完結
私がアイツでアイツが私での第3話
作者 労働会議 得点 : 1 投稿日時:
私が倒すべき魔王!
その仮説は受け入れがたく、現実逃避をすることにした。
「あっ。食べ物いっただき~~!」
目の前を通り過ぎようとした食材を素手でつかんで口の名に放り込む。
勇者心得その123
迷ったら、とりあえず何か口に入れよう!
バリバリ。ごっくん。何かすごく苦くて、変な味が味がして、ねっとりするが気にしない。気にしない。
何故なら、私は大業を成す勇者だからだ!
「しかし、驚いた。こんなに素早かったっけ?」
この世界でカサカサ動くあれを素手で捕らえられる域に達するのは十五人と数えるほどしかいない。無論、勇者歴一週間の私はまだその域に達していない。
空腹がわずかに満たされ、考え込む。
「それにしても、この状況は何だろう?」
目の前の光景に今更ながら、気づく。昨日、私をとらえたはずの人相の悪い山賊たちが上半身裸。腰みのをつけて踊っている。
しかも、両脇では翼をはやした悪魔たちがヤジを飛ばしている。
悪魔の一人が私のほうへ駆け寄る。
こいつ、早速勇者である私を排除しようと動いたな。
けれど、そいつは
「魔王様。ご指示通り、あの人間どもに裸踊りさせています」
「魔王の指示だと?魔王はどこだ??勇者はここにいるぞ」
「何をご冗談を。魔王様は貴方様の事でしょう」
「私を魔王と呼ぶな!」
気に食わないその悪魔にビンタを食らわす。勇者が、この偉大な勇者があの極悪非道な魔王と呼ばれてなるものか!この勇者には夢があるんだ!
魔王を倒して、その財産を奪って、王様から財産をゆすって、そのお姫様を手籠めにするというなっ!
ビンタされた悪魔は部屋の端まですっころぶ。周囲のものは騒然とする。
ビンタされた悪魔は向くりと起き上がる。感激で目をウルウルさせている。
「ようやく。ようやく。ヒッキーから目覚めたのですね」
それを境に、周囲の悪魔たちはさめざめと泣く。
「長年の苦労が報われたぁあ~~」
「本当に長かった。人間たちの目をそらすのも一苦労だったな」
こいつら、何を言ってやがる。
「おい。クズども。お前ら、何者だ?」
すると、悪魔たちは一斉に頭を下げる。
「私どもは貴方様の忠実な臣下で御座います」
プライドが非常に高く、人族に一切媚びない悪魔どもから臣下と呼ばれるのはこの世で魔王しかありえない。
つまり、私は魔王になったのだ。どうしてこうなった?
———直前の記憶を探る。あれは山賊に捕らわれ、恐怖のあまりちびっていた時だ。武器を奪われ、大のほうを漏らしてしまいそうな絶体絶命の時。ポケットから、先ほど助けた村から献上されたものが目に入る。