私がアイツでアイツが私で
作者 なっしー 得点 : 2 投稿日時:
ギャアギャア鳴き喚くカラスがうるさい。
勇者が目を覚ましたのは、異様なまでに大きくてふかふかしたベッドの上だった。立派な窓の向こうでは落雷が幾度となく光っている。薄暗闇を見渡せば、禍々しくも豪華な屋敷が広がっていた。
「起きよっと...」
バキャ。
勇者歴まだ一週間。昨日は山賊に捕まって金目の物を盗まれ、このあと彼等が飼育しているモンスターのエサとして儚く人生を終えるところだった。
その自分が、軽い気持ちで跳ね起きたらベッドに大穴を開けていた。目の前の姿鏡を見て、勇者は固まる。
そこに映っているのは、足を突っ込んで抜け出せなくなっている、あまりにも間抜けな魔王の姿だったーー