「前栽に綻ぶ水仙風揺らす」の批評
添削した俳句: 前栽に綻ぶ水仙風揺らす
こんばんは。貴句、拝読いたしました。
冬の庭に咲き始めた水仙という題材はとても良いのですが、
結論から申し上げますと、以下の3点で作者コメントと句の内容に
少しズレが生じている様に私めには思われました。
① コメントと句が逆方向を向いてしまっている
② 「揺らす」の他動詞性が、水仙の静かな姿を壊してしまう
③ 庭での風は説明的になり易い
①、②について。
作者コメントに「冬の風の中に健気に佇む水仙」とございます。
これは、風に負けずにじっと佇んでいる水仙というニュアンスですよね。
ところが、句では他動詞「揺らす」によって、
「風揺らす」=風が水仙を揺らしているという意味の解釈になり、
「健気に佇む」との作者コメントと反対方向の描写になっております。
静かな「綻ぶ」と動きの強い「揺らす」がぶつかり、
句全体の調和が崩れてしまいます。
③について。
前栽という事は庭ですよね。
奈良県天理市に地名「前栽」(同名の急行停車駅も在る)がございますので、
念のための確認でございます。
前栽とは「庭に植えられた草木や植え込みの事」を意味する単語でございますので、
庭に風が吹くのは自明の理(当たり前の事)でございます。
風が吹けば水仙は揺れますので、「揺らす」とは書く必要がございません。
冬の風は強めに吹く事が多いですので。
上記を踏まえて、私めからの添削案は以下でございます。
・水仙や庭華やかに綻びぬ
上五で主題「水仙」をハッキリ明示させます。
前栽だと4音掛かりますので、庭の2音に節約。
白、黄、ピンクなど色が様々ありますので、「華やかに」で具体的描写が
分かりますし、「綻ぶ」も前を受けて「つぼみが咲いた事か」と
読者に伝わります。完了の助動詞「ぬ」でダメ押ししていますので。
難しい事なさろうとし過ぎている意識が先行している様な印象でございます。
もっとイージーにお考えになり、まとめますと良いのではないでしょうか。
イサクさん、おかえさきこさん、独楽さん、慈雨さん、頓さん、春の風花さん、
晩乃さん、めいさん(以上五十音順)他、多くの方から様々なご意見が
寄せられると事と思います。
それらから1つずつ学び取って、ご自身の作句・推敲の糧にしていかれると
良いのではないかと私めは思いますよ。
私めの意見・指摘もその中の一つとしてご参考いただければ幸いです。
以上でございます。お目通しいただき、感謝いたします。
点数: 1
