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シャロン・ホームズの助手 (No: 1)

スレ主 十二田 明日 投稿日時:

小説投稿先URL(別タブが開きます)
https://kakuyomu.jp/works/16818622171889597252

また賞に送る予定の一作書けたので、改稿のため感想コメント等をいただけたらと思います。
ジャンルはスチームパンクの冒険活劇です。
全てを読む必要はありません、読んだ範囲での感想で構いません。
感想コメント等をいただけた方が作品を上げていれば、必ず目を通してコメントを返させていただきます。

あらすじ(プロット)

科学が異常な発達を遂げた十九世紀末のロンドンを舞台に、主人公のジャン・H・ワトソンと名探偵シャロン・ホームズが活躍するスチームパンク冒険活劇。

地方での仕事を終え、列車強盗事件を解決した二人がロンドンへ戻ると、街は切り裂きジャックの話題で持ち切りになっていた。謎解き狂いのホームズは早速捜査に乗り出すが、切り裂きジャックの連続バラバラ殺人の裏には、とある企みが隠されていて──

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シャロン・ホームズの助手の批評 (No: 2)

投稿者 大野知人 : 0 No: 1の返信

投稿日時:

 十二田さん、お久しぶりです。大野です。
 まず二つ謝っておくことがあって。最後まで読むつもりでいるんですが、コメ欄の字数制限に引っ掛かるので前後編に分かれます。後編は夕方までには送ります。
 不躾ではありますが、『読んでるときに思った事をそのまま描いたメモ』をコピペして貼るので、『のちのシーンでフォローされること』について突っ込んでしまっていたらごめんなさい。

 なお、先に4章まで読んでの感想を書くと『物語の流れや文章は読みやすいが、肝心の推理がかなりお粗末に感じる』というのと、『アクションシーンそのものは良いんだが、結果的に推理ではなくアクションですべて解決してしまっていて面白くはない』。
 結論として『推理要素のあるアクション』として書くなら推理要素をもっとちゃんとやってほしいし、『探偵ごっこがしたいけど探偵として中途半端な子たちが結局アクションで解決する話』として書くなら、地の文で『ダメな推理』としてこき下ろすべきと思うし、もっとアクションシーンに尺と描写を割くべきと思った。
 あくまで四章まで読んだ時点での意見なので、どんでん返しはあるかもと思いつつ、1~4章は概ねこの感想です。
 
第一章について。文章はとても読みやすいんですが、探偵ものの小説としてどうかなと思う点が結構ありました。
・文章は基本的にとても読みやすいです。文章・シーンもよどみなく流れていくので、違和感なく没入出来ました。
・ワトソンがシャロンの記憶力に驚くシーン、物語開始時点で知り合いなら『相変わらずだな』という方が自然では?
・ホームズが列車強盗の犯人をクランカーと気付かなかったのが不自然に思いました。
 そもそも、探偵事務所を構えて既に何件も事件を解決しているなら、当然犯人がクランカーであるケースも少なくないはず。なのに上から服を着ているだけで分からなくなるというのは『探偵』としては不自然では?
 後さらに言えば、そもそも子分は撃っておいて親分を放置して長々推理を披露しているのも謎に感じます。銃を撃つのが嫌な訳でもなく、腕が良いのになぜ?
 
・せっかく後ろに居て奇襲できたワトソンが、なぜしがみついたのかも謎です。武器がないのは良いんですが、頭部を殴るとかもっと手があったのでは?

・で、これが一番の問題点なんですが。ストーリー上、『シャロンの推理』と『事件の解決』が特に結びついてないんですよね。
 列車強盗の事件自体はホームズの銃撃による子分の無力化と、ワトソンの格闘戦によって解決されています。つまり、ホームズが推理をする意味がないんですよ。
 例えば機関室を制圧した後、親分が居ない事に気付いて『じゃあ親分がどこにいるのか』となり、その上で親分を探しに行くならまだ推理の必要があったでしょう。(もっとも、虱潰しがしやすい一本道の列車内でそれをやる意味は薄いですが)ですが、現実的に『犯人を一人でも逃がしたら乗客に被害が及ぶ』列車強盗に対して、端の車両から鎮圧して行った上で親分を制圧するという展開上、やってる事は『虱潰し』な訳です。
 出来れば、シャロンの推理が事件解決に対してもっと有効に働く展開にしてほしかったと強く思います。

・最後に歴史オタクとしての疑問を挟みますが、『科学技術で覇権に手を掛けた帝国』が、『技術の塊』である列車に警備員や軍人を配備していないのは不用心では?
 ストーリーとしては不自然ではないので、今のままでも良いとは思いますが、気になる人はいるかも。

第二章について。
・冒頭のエミリーの『どういたしまして』以降の地の文、『ある/である』が多すぎて若干読みづらいです。
・男根主義がマッチョイズムの和訳なのはよくわかっているんですが、すこし作品の雰囲気を壊している気もします。こだわりがなければわざわざ漢字表記しなくても良いと思う。
・特に貧乏な訳でもなく、『若干空気が読めない』『男性社会で育って女性との距離感がつかめない』などの設定もなく、普段のお礼で自宅に呼ぶ男は人としてかなりダメだと思う。少なくとも俺が見かけたら『お前それは無いって』って後で言います。
 ついでに言えば、もしワトソンがエミリーの好意を理解してやってるなら『同居相手の女性』が居る所に呼ぶのはなお一層マズいと思う。

・エミリーがワトソンにジャックの事件を伝えるシーン。エミリーの語りが淡々とし過ぎて居て、キャラ性が見えないため『言わされている』ように感じます。
 先述のナンパに遭いやすい・『癒し系』等の設定から気弱なキャラと思えば、エミリーはもう少し怖がりながら伝えるべきだと思う。
 あるいはワトソンと同じ医学部(推定)であるなら、『検死をやる人も気の毒に』とか『筋肉も骨も切り方が雑過ぎるよ!』くらいのズレた感想を出してもいいでしょう。――あるいは逆に『この切り方、明らかに内蔵の位置を把握して切ってるよね』でも良いですけど。
 いずれにせよ、『エミリーというキャラ』として非常に弱いと感じた。

・一章でも書いたが、ホームズが『犯人がクランカーである可能性』に備えていないのが謎ですね。一章とは異なり、明確に死体が出ているのだから『この斬り方は余程大掛かりな設備か、クランカーでなければ不自然』みたいな気付き方はしないのだろうかとすら思う(例えば、筋肉に包まれた骨は弾性と剛性が違う上に血でぬめるため、『音を立てずに使える程度の刃物』で骨ごとバラバラにした死体を作るのはとても困難)。

・列車強盗の時と異なり『事件は既に起こってしまった』以上、武装している犯人に真正面から仕掛けるのが謎。銃で無力化してから話聞くとか、尾行して家突き止めて警察呼ぶとか、尾行して武装解除させてから挑むとか、なんかないのか。 
 『とりあえず突撃』は冷静な探偵キャラのムーブではないと感じました。
 ついでに言うと、『そういう我慢が出来ないくらい、謎が好きで謎を解き明かしたい』というキャラなら、もっとそういう風に各シーンで描写すべきと思う。

・二章についても一章と同じ問題点があるんだが、結局シャロンの推理は『警察が居ない所をあたる』という場当たり的かつ、虱潰しと同程度の効果がない。しかも一章と同様、推理そのものは犯人の正体や用いている手段の解明・その後の戦闘に全く影響が出せていない。
 推理が虱潰し以上の効果を持っていないのが特に致命的で、二章時点での活躍だと『探偵』というより『よくしゃべるガンマン』の印象が強いです。

 例えば簡単な虱潰し脱却の手段としては『フム、実の所今夜被害が出る可能性がある現場の内、警察が張っていない場所はここ以外にも5つある。けれども私がここに来たのは他でもない、犯人が選べる逃走ルート上に警察が張っている現場が最も少ない――つまり用心深い犯人が選ぶであろう場所がここなのさ』とか、『まぁ、勘と言われればそうなのだがね、もし犯人がここに現れるとすれば被害者に共通する「ある特徴」に確信が持てるのサ』みたいな、ただ『警察が居ないところに来ました』っていうのはやめてほしいです。
 戦闘面への推理の活用について言うならせめてクランカーであることを想定した上で、トリモチ弾などの機械制御を阻害する道具を持ち込むとか……。

三章について。
・前半はまぁいいと思います。個人的には、別に刑事に頼まずとも『前に奥方の浮気調査を受けたことがあってね、この辺りの配管工とは知り合いなのさ』とするすると地下空間の地図をコネで手に入れて『探偵としての業績』を示してくれても良かったかなぁ。

・イヴが登場して、ワトソンを組み倒すまで大分あるのに『とりあえず鎮圧しておこう』とならないシャロンの心理が謎。もし無警戒と不用心が売りのキャラならもう少しそういう描写をしてほしい。
・目を話していた隙にジェイコブが外骨格を装備していたというのは展開として弱いように感じる。凶悪な殺人犯の確保は癇癪ジジイの相手より優先すべきだろうと思うし、『無能な警察』として書くならそういう揶揄や描写が足りないと感じた。無論、シャロンが言及しても良いと思う。

・人造人間という研究にシャロンが気付くシーン。推理の根拠が特に描写されていないので、推理として面白くない。
 例えば『ここに来るまでに見た電算系の機械部品、タンパク質を樹脂化するための部品に防腐剤まで……ただの強化外骨格の研究だけじゃなさそうだ』なんていう風に、シャロンの推理そのものに対して読者が読み解ける情報があればいいんだけど、それなしに『キミは気付いたようだね』『残念ながら悪い予感が当たったようだ』『そう……実は!』って言われても、読者は置いてきぼりで面白くない。

・『ジェイコブが切裂きジャックとして活動していたのは、自分の芸術を理解できる人間を探すため』という推理。推理そのものに穴はないのだが、『他の動機』が薄すぎる上にこれ以前の部分でジェイコブの動機をミスリードする物がまったく登場しないため、推理として純粋に面白くない。

長所。良かった点

色々あるんだけど、後編でまとめて書きますね。

良かった要素

文章

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シャロン・ホームズの助手の批評 (No: 3)

投稿者 大野知人 : 0 No: 1の返信

投稿日時:

後編。字数ないので総評はまた別に送ります。

四章
・冒頭のワトソンの『ホームズなら事件を解決した自分の名前が公表されてほしい、というだろう』という疑問について。作品を通して、ホームズは『好奇心が強く、周りの目を気にしない』キャラに思える。ワトソンがホームズを理解しているならこの疑問は出てこないし、『ワトソンがホームズを理解していない』という描写なら声に出した上でホームズに否定させた方がよかったと感じます。

・エミリーの訪問。ワトソンがすでに誘ってるんだから、そこを理由にしてよかったのでは?

・ホームズがワトソンに紅茶の銘柄を問うシーン。こだわりがあるなら『アールグレイの方が良いに決まっている』とか言ってもいいだろうし、特に意味のない会話なら削除しても構わないと思う。折角エミリーとホームズの初対面のシーンなので、キャラ性を掘り下げる訳でもない会話なら話の流れを妨げるだけだと思います。

・レストレード警部がホームズの推理を褒めるシーン。何度も述べたように、読者視点では現状のホームズの推理には不満を感じる所が多いため、ピンとこない。

・脱獄が雑。悪い意味で雑。まず第一に、クランカーの存在を理解していてその程度の装備で突破できる建物を用意している警察側の問題だよねコレ。
 でもって、クランカーを認知していて対機械装備(例えばEMP弾)とかを用意していないのもなぜ? もし無能な警察として書くなら、直接的にちゃんとそう描写して欲しい。

・ジェイコブ没後のシャロンの推理について。この時点で読者は『尺的に絶対にもう一波乱ある』と予想がつくわけだが、その上で「ちょっと違和感あるけど現状だと仲間割れにしか見えないよね」と言ってしまうのは、探偵役としてあまりにもつまらない。ついでに言うと、死体が新鮮な内なら結構色々わかる事もあるはずなのに、『死体解剖について行かせろ』とすら言わないのは不自然と感じる。たとえ警部に断られるとしても。
 探偵として主体的に動くなら、例えば『人造人間の技術を思えば、一部の臓器を持ち出したってこともあるかも知れない。医者志望のワトソン君? 足りない臓器はあるように見えるかな?』と言ってくれても良いし、逆に違和感がなさ過ぎる方向の描写にした上で『意図的に証拠を消されたような気すらするな』と言っても良い。とにかく、探偵を登場させたのに『なんかわからんがちょっと変』とだけ言わせて推理の方向性すら描写しないのはやめてほしいです。

・エミリーがワトソンと別れてから、誘拐されるまでの間が短すぎる。理由としては二つあり、一つ目は『エミリーが一人でいるシーン』に読者が慣れる前に攫われてしまい話の流れが早すぎてわかりづらいです。
二つ目は前提が少し長くなるのですが、エミリーの今までの登場シーンは2章冒頭では事件への誘導とキャラ紹介でほぼ終わり、4章冒頭でも『エミリーに嫉妬を向けるホームズ』を書いたせいで、ここまで『エミリーが一人で自身を語るシーン』が全くなく、折角『ワトソンとの別れを名残惜しく思う』シーンなのですから、エミリーの感情をもう少し掘り下げて描写してから誘拐されても良いと思います。

・『地下の貯水槽の存在をうっかり忘れる』のは行政的には大変マズい。大雨が降った時って、要するに氾濫防止用ですよね。それを忘れるってのは整備されないってことで、『都市の地下にそこそこ大きな空洞が在る』事になると何かの拍子に大規模陥没&水道断線が起きかねないでしょ。
 というわけで『大半は封鎖されたが設備の関係で一部は空洞のまま残ってる』とかにしません?
 正直、ここまでの警察のやらかしと合わせて『実は大英帝国は滅びる寸前であった』と言われても信じるくらいのガバガバ行政ですよコレ。
 あとこれが出てきたんで突っ込むんですが、基本的に『使われていない下水道』にはネズミ等の野生動物が棲みついて疫病の原因になるので普通は埋めるんです。なので出来れば『現役だけどあまり水の通らない下水道』の方が良いかもなぁ……。

五章
・俺の性格が悪いだけかもしれないんだけど。『ロクに管理されてない地下水道(主と各地にアクセス可能)』と『首都直下の巨大空間(陥没したら大事故+大停電+大規模断水)』をおさえてる時点で既に行政的には負けてる気がします。
 俺が首都陥落狙うなら素直に地下水道の基盤部分破壊させて首都各地で液状化現象と建築物陥没引き起こした後、毒ガスか疫病を地下水道経由でばら撒くなぁ。そっちの方がコスパ良いし。

・小型気球で突っ込むシーン、最終的に賭けに出るってのは探偵として面白くない。べつに『男爵家から押収した帳簿を見ると、そんな量の火薬は購入してないみたい』とか適当な根拠出すんじゃだめですかね?

・結果的にワトソンがエミリーを殺してしまう展開に納得がいかないです。理由は大体三つなんですが。
 ①単純に、エミリーにもワトソンにもそんなに感情移入できない。4章の項でも触れましたが、シンプルにエミリーの心情に対する描写が少なく、『なんかワトソンに惚れてる同級生』に過ぎない上に、ここまでのワトソンも多くが『ホームズに振り回される』とか『ホームズに言及する』シーンばかりでエミリーへの言及が少なく、『エミリーの死』が読者にとってとても軽くなってしまっています。
 で、そうなると『ああ、この子はこのシーンで殺されるために登場したんだな』と思ってしまい、物語の没入感が一気に損なわれるし『あんまりよく知らないキャラの死を主人公たちが悼んだり、怒っている』ことでワトソンやシャロンにより一層共感しづらいです。

 ②ずっと言ってる事なんですが、頼むから『改造生物や機械人間を捕縛するための装備』を用意して欲しいです。そもそも、シャロンもワトソンも基本的には『出来れば犯人にも生きて罪を償って欲しい』という性格ですよね? で、対策もせず『人間じゃないなら急所撃っちゃっても良いか』と人造人間に至っては脳を狙う始末。
 せめて、麻酔弾とか、鎮静剤とか、捕縛用ネットとか、対関節粘着弾とか用意しろと思うし、そもそもワトソン君も医者志望かつ格闘技術が高いんだから柔術の応用と包帯を利用して捕縛できても良いのでは?

 重い設備は気球に積めないというならロープや網だけでも用意しとけば回避できたと思うし、そもそもロープもナシにどうやってジェイコブを殺さず捕縛する気だったのか純粋に疑問。
 逆に、突入時点でジェイコブを殺すことを覚悟できていたのだとしたら、『たとえ獣に堕ちてでもお前は止める』なり『人間をやめたお前を殺すことに何のためらいがあるか!』方向の激情を見せてくれた方が、エミリーを殺すより共感できた気がするなぁ。
 もしそういう書き方するんだったら、一層エミリーの死は余計に感じる。

 行き当たりばったりのせいでエミリーを殺した挙句『エミリーを殺したのは君じゃない、ジェイコブだ』とか言われても、『事前に対策できただろうが!』と思ってしまいます。

 あとね、頸椎折ろうとする前に気道をおさえて気絶を狙うべきだと思うよワトソン君。殺す覚悟が早すぎない? 動物とのキメラ化を考えると、脳の負担が増大しているはずだから、多分平静状態の人間を気絶させるより遥かに簡単に失神すると思うんですよね。医者志望的にそこはどうなんだろう。
 さらに突っ込むと、根本的に『リーチの長さ』は『懐に飛び込まれると何もできない』と同義です。格闘経験者にとっては逃げるより突っ込んで締め技に回した方が多分戦いやすい気がするんですがどうでしょうか。

 ③これが一番の問題なんですが、何を言い訳しようが『自分の命が危ないと思い、とっさの判断で友人を殺そうとした/助手の安全を急いで助手の友人の急所を狙った』訳ですよね。これ、正にジェイコブの狙い通りになってません? エミリーが正気を取り戻して自死とか、友人の尊厳を守るためとかなら良いんですけど、『殺した理由』の部分が自身の安全の為である時点で、正に利己的に命を奪う人物というワトソンが最初に言った『獣』では。
 で、しかもこの後『怒りのままにジェイコブを殺しに行く』なら、更に利己的な殺人の方向性が高まるし、『それでも怒りを抑えて、犯人には生きて償わせる』というなら今度はワトソンへの共感しづらさが出てきます。
 前者なら『ジェイコブの思想に負ける』という意味で、後者なら『読者がワトソンの感情に納得しづらい』という意味で不自然に感じます。

 以上三つの理由から、ワトソンとホームズがエミリーを殺すことにはストーリー上の妥当な意味が感じられません。

最終章
・冒頭の会話シーン。ごく自然にワトソンが『ジャックがホームズを気に掛ける件』を聞きますが、読者としては『お前にとってエミリーはその程度の存在だったのか?』と思うし、より没入感がそがれます。

・最終戦のセリフ『お前は身体の性能任せに暴れてるだけだ。武術や格闘技を修練した人間の動きじゃないから無駄が多い』って、エミリーには適応されなかった理由は何?
 ジェイコブの性格から考えて、エミリーを自身より高性能に改造することはないと思うんだけど、なんで友人の救助に本気出さずにラスボス煽るのに本気出すの?

・ここまでさんざんジェイコブはシャロンに拘って来たのに、最後の最後で『それで加勢のつもりか?』『観客』というのがわからない。シャロンへのこだわりがあるからこそ、彼女が大事にしているワトソンを嬲り殺してやろうという悪意とか『ただの人間ではこうも容易く死んでしまう、キミもこちら側へきたまえ!』みたいな傲慢さとか、そういう悪役っぽさが欲しいです。
 小悪党ならともかく、一巻のラスボスがちょっとワトソンにボコられただけでシャロンへのこだわりを捨てるのは面白くない。

・ジェイコブはワトソンの獣呼びが気に入らなくて、わざわざ友人を拉致・改造までしたのに最終決戦のシーンではワトソンに対して煽らなくてよかったのだろうか。『僕を殺しに来るのかい? 自分が獣だって認める覚悟はできたようだね』みたいな。わざわざ面倒な手術をしてまでやった割に『趣味』の一言で片づけるのは、不自然に感じます。少なくとも、ワトソンが気球に乗り込んできた時点ではちゃんと煽ってたんだから、そこまでは『ワトソンへの嫌がらせ』に一定の執着を持ってたはずですよね? なのにラストバトルでは特に嫌がらせの結果を気にするでもなく、雑に戦ってたなぁ。
 これで、一個前で触れたシャロンへの執着部分がちゃんと書かれればまだ納得いくんですが、ほぼ『ぐぬぬ』してるだけで終わってしまって、最終決戦の悪役としてまるで面白みがなかったです。

良かった要素

文章

シャロン・ホームズの助手の批評 (No: 4)

投稿者 大野知人 : 0 No: 1の返信

投稿日時:

*十二田さんへ、御作とは関係ないですが私の現在の最新作は大分前の作品なので、お礼に感想を下さらなくて構いません。もし、それでもと思っていただけるなら次に私の作品を見かけた時にお願いします。

総評編。
まずは執筆お疲れさまでした。色々書かせて頂きましたが、『複数の人物のかんがえや感情が交わる事件』を整理しつつ、各キャラの感情の動きや見せ場を盛り込みながら作品を書き上げるのは大変だったと思います。

その上で、ではありますが。読者としての意見で言うと『アクションシーンは良いしとても読みやすいが、舞台とキャラと推理要素が活かしきれていないと思う』というのが総合的な感想になります。

 まず文章。基本的にとても読みやすかったですが、数か所文法的な問題がありました。例えば、エミリーが誘拐されるところでは使役系の用法がおかしいです。
 ただ、数は少ないのでこのまま賞に送っても文法ミスで撥ねられることは絶対にないと思います。

 一方で、台詞・地の文共に分かりやすさを重視しすぎて、大分軽いというかあっさりしていたように感じます。
 読みやすさの点では問題はないのですが、地の文にはもう少し形容詞などの描写要素を盛り込めると良かったように思います。
 台詞についても同じく文量を増やした方が良いと思います。こちらはもう少し深刻な問題で、『台詞だけだとキャラの感情が読み取れない』『台詞の特徴が弱く会話だけではキャラの識別ができない』シーンがいくらかありました。
 また、折角英国が舞台なのでもう少し皮肉や嫌味などの要素を強く会話に取り入れても良かったように感じます。

 次にストーリー性ですが、全体の流れとしては非常に良かったと思います。細かい事件が徐々にラスボスの計画に繋がっていき、一度解決したと思って油断した所で、最終段が一気に牙を剥いて来る、という流れは素晴らしかったです。
 また、随所でアクションを中心とした見せ場が盛り込まれていた点や、推理パートからアクションへのシーン転換の素早さも良かったと思います。

 一方の問題点としては、まず要所要所で指摘させて頂いた通り、『シャロンの推理』ではなく『アクションシーン』が直接的な問題解決になってしまっていた点が挙げられます。
 また、第二の問題として『プラス方向の人間関係の変化』と『キャラの成長』要素がほぼなかった点が『物語』としては低評価な点です。
 関係性の変化というのは何も恋愛でなくても良いのですが、ライバルを認めるとか、誰かと友情を築くとか、相棒の問題点を指摘してぎくしゃくするとか。そういう要素があんまりない(強いて言うなら警部の態度が少し軟化しましたが)。
 その上で、ジャックとの死闘を通じてシャロンとワトソンが何か新しい技を身に着けた訳でもなく、覚悟を決めた訳でも、『たとえ友人の仇でも人殺しはできない』みたいな信念を得た訳でもなく、『なんとなくジャックを倒した』で終わってしまった。
 個人的にはこの点にかなり物足りなさを感じています。

 次に推理要素について。
 先に言っておくと、僕は推理モノがちゃんとかける腕がないので自分に出来ない事をやれと言っている無責任野郎なんですが。その上で言うがもう少し何とかして欲しいです。
 詳しくは個別の指摘を見てほしいんですが、シャロンの推理は『虱潰しの下位互換』になってしまう場合と『読者が全然知らない情報をいきなり持ち出して結論だけ言う』というパターンの大きく二つしかないのがすごくダメです。
 推理モノの読者の中に一定程度『自分でも犯人を予想しながら読む』という人が居るのはご存じと思いますが、シャロンのやり方だと作中に描写できるモノがなさ過ぎて、読者に推理する余地がないんです。
 しかもその上、第一の事件に至っては推理の結果が事件の解決に一切影響してないんですよ。

 具体的な改善案としては
①『ミスリード要素』を入れて描写する。
②背景描写だったり、警察に調書の読み上げとかをさせた後、後で『あれがヒントだったんだよ!』っていう。
③そもそもシャロンを『推理がへっぽこで最後は県下で片付ける自称名探偵』にしてしまって、地の文で散々こき下ろす。

 の三つの案があります。三つ目はやりたくないと思いますが。

 台詞回し。根本的に各台詞が短すぎて『状況はよくわかるけど、台詞からキャラの感情や個性が読み取れない』。
 状況説明だけになっちゃってる台詞もかなり多く、更に言えばそれがシャロンやワトソンの発言であることも多いから、主人公とヒロインのはずなのに喋っていても個性が出なくてキャラが見えない。

 次にキャラクターについて。
 描写が少ない上に活かせてない。ハッキリ言って大問題。
 先述の通りシャロンはまず推理が死んでいる。その上で、四章でようやくワトソンとエミリーに関して嫉妬みたいな感情を見せるけど、そこまでのシーンはそもそもほとんどが事件関係の物がレストレードを煽っているか、ワトソンとの雑談。些細なことで起こったり楽しそうにするけど、ワトソンを中心に『他キャラが絡んだ時の感情の動き』の描写が絶望的に少なくて、共感しづらいし、ヒロインとしても面白くない。

 エミリーについては個別評価で触れたけど、『描写が少なすぎて感情移入しづらい』レベルで性格がわかんない。もっと描写して。
 最後にワトソンだけど、活躍シーンが十割アクションで、特にエミリーが死んだ後の感情の流れが理解し難く、折角『医者志望の大学生』なのに医学知識を生かすシーンもないし大学の伝手で情報を集める訳でもない。つまり設定が無意味になってる。
 その上アクションシーン以外だと、『シャロンに浅い質問をする』か『シャロンを宥める』以外の動きをしていることがほとんどないから、コイツも共感しづらいし主人公として見ると主体性が薄くて面白くない。
 

 舞台設定について。
 『機械義肢技術が発達している』部分さえ成立していればイギリスにこだわる必要も時代にこだわる必要も感じなかった。もう少し言うと『世界の四割を支配した覇権国家』も作中では特に意味をなさない死に設定になってる。
 イギリスに拘るなら、キャラのセリフの嫌味や皮肉をもっと増やすとか、ラストシーンでジェイコブが『ちょうどティータイム中なんだ。一緒に飲むかい?』って言ってくるような冗長性が欲しい。
 時代性にこだわるならそもそも通信機やスクリーンは出すのが早かったと思うし。
 世界の四割を支配した覇権国家なのに、異国から入って来た人間が首都に居る訳でも無ければ、なんか外国人差別とかの描写がある訳でもなく、『ただのイギリス』との差別点が特に見えない。
 

 アクションについて。
 これは全体通してかなり良かった。良い意味で漫画的に『現場全体を俯瞰しつつ、注目すべき細かいアクションに時折ズームインする』ような表現がされていて、静止画の連続をベースに動きが描き出されて、読みやすく面白かった。
 改善点を言うなら、においや背景の変化に関する描写はもう少し掘り下げて良いかも。作中銃撃シーンはかなり多いから硝煙の匂いに触れてみるとか。
 あとはまぁ、鉄砲以外の武器のアクションを見たい感じはあるよね。ジェイコブの武器が実質的には爪だから、動きの上ではワトソンの徒手格闘の延長みたいな描写になっていて、『動きの差別化』という意味ではバラエティーに欠けるように感じます。

以上で、大野知人の批評を締めたいと思います。
かなり掘り下げて問題点を説明したので、十二田さんにはかなり辛いものにもなるとは思いますが、十二田さんが『これは納得できる』と思うものだけで構わないので次に生かして頂ければと思います。
 最後にもう一度書きますが、執筆お疲れさまでした。

長所。良かった点

文章。基本的にとても読みやすく、物語の流れを掴みやすい軽さがありました。

ストーリー性ですが、全体の流れとしては非常に良かったと思います。細かい事件が徐々にラスボスの計画に繋がっていき、一度解決したと思って油断した所で、最終段が一気に牙を剥いて来る、という流れは素晴らしかったです。
 また、随所でアクションを中心とした見せ場が盛り込まれていた点や、推理パートからアクションへのシーン転換の素早さも良かったと思います。

アクションについて。
 これは全体通してかなり良かった。良い意味で漫画的に『現場全体を俯瞰しつつ、注目すべき細かいアクションに時折ズームインする』ような表現がされていて、静止画の連続をベースに動きが描き出されて、読みやすく面白かった。

良かった要素

文章

シャロン・ホームズの助手の批評の返信 (No: 5)

スレ主 十二田 明日 : 0 No: 4の返信

投稿日時:

詳細なコメントいただきありがとうございます。
いただいたコメントを精査し、作品の改善に活かさせていただきます。

さて、大野様の『魔術探偵は嘘吐きだ!』ですが、このサイトの投稿室が生きていた時に一度拝見した作品なのですが、また目を通して再度コメントをお送りした方が良いでしょうか?
それとも別に新しい作品があるようでしたら、そちらを読ませていただこうかと思います。
お手数ですがご返信いただければ幸いです。

シャロン・ホームズの助手の批評の返信の返信 (No: 6)

投稿者 大野知人 : 0 No: 5の返信

投稿日時:

ご指摘の通り、大分古い作品ですし以前にご意見いただいているので結構ですよ。
今書いている原稿が遠からず書き上がる(はず)なので、もしそのとき十二田さんがお手隙であれば、そちらにコメント下さるとうれしいです。

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タイトル:シャロン・ホームズの助手 投稿者: 十二田 明日

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特に が良くて、 ました!

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