314の死と再生の第4話 全10話で完結
314の死と再生 4 妹の不気味
作者 moba 得点 : 0 投稿日時:
僕はもう一口、妹が注いでくれたシリアルを食べた。
「それでお兄ちゃんは、勉強マシンになるチョコを食べちゃったんだね?」
「ああ。断ったけど、油断してたんだ。放課後に振り向いたら、パクっと口に……そうだ、芙蓉寺さんは?」
壁から妹に目を戻すと――なぜか僕は寒気を感じた。
スプーンを持つ右手が震えている。
馬鹿げている。
まったくもって、馬鹿げたアイデアだ。だが。
こんなに綺麗な、愛しい自慢の妹を――兄であるこの僕が――恐れている?
「ふふ……ふふふ……あの女が、私から3年もお兄を奪ったんだ……」
「明……?」
「ふふ……お兄ちゃん、あーん♡」
明が、僕の手を取った。びっくりするくらい冷たい手で、僕の関心は一気に移った。明のもう片方の手が僕の口までスプーンを運び、反対の手を僕の頬に優しく添えた。
明の慈愛の顔に見惚れながら、僕はがじがじとシリアルを噛んだ。
三年後と言えば、僕の主観では、妹は二歳年上の女の子だった。
僕がどきどきしたのはそういう理由だ。つまり、認識と現実のギャップに動揺したということで――
明がシリアルの入った食器をどけた。
彼女が僕に抱き着いた。
「もうどこにもいなくならないで」
「明……」
「もう二度と、私を一人にしないで」
すすり泣く妹を、僕は抱きしめた。妹の耳元で励ましの言葉を囁いた。ますます明は泣き始めてしまった。あやすように手で背を揺すると、妹の声が少し大きくなった。
僕のいない生活がどれだけ辛かったかを妹は語った。僕の目が覚めてどれだけ嬉しいかを妹は語った。自分の意思でなかったとはいえ、慕ってくれていた妹には、申し訳ないことをしてしまったと思う。
でも、結果としては悪くないと思った。僕は聖ヨハネに入れたはずなのだから。今も知識を検索すると、身に覚えのないものがヒットした。体感的には損が無い。
ただ一つ、気がかりなのは……
――私を一人にしないで
……まるで兄と自分しかこの世にはいない、というかのような口ぶりで……
「ゆっくり休んでね、お兄ちゃん」
「え?」
僕の首に抱き着いた妹が僕の左耳を甘噛みすると、急速に眠くなり――