灰空ときどき死神〜ぼくが生きた7日間〜の第4話 全4話で完結
最終話・灰空ときどき死神〜ぼくが生きた7日間〜の第4話・C
作者 玉子 得点 : 0 投稿日時:
――あの外科医を、どうにかしなければならない。
そうしなければ、少年が大変な目にあってしまう。
……そう思ってしまえば、もう取るべき道は一つしか無かった。
後日、その外科医を背後から付け狙い。
階段まで差し掛かったところで、思い切って襲いかかった!
「何だ君は! ……し、死神!?」
僕を見るなり、驚いて眼を剥く外科医。……そのあだ名、病院の職員にも広まり切っているのか。
そんな事実を知る中も、一進一退の攻防は続く。
しばらく動いて無かった身体で、暴れ続けるのは大分きつかった。それでも人間一人の抵抗、向こうも抑えきれずに、徐々に後ろへ下がっていく。
――外科医の踵が、階段のヘリに差し掛かった。
「死神、何でこんなことを……ッ! 死神ッ!」
迫る危機からか、やたらめったらに叫び出す外科医。
その言葉が不思議と、今はしっくるきてしまう。
「そうだ。僕は死神だ……だから連れて行く、お前を連れて行く!」
「……狂ってる……ッ!」
そんな戦慄の声に、にやりと笑ってしまう。
惚れた女性のために、こんな無茶に出るくらいには、もう狂ってしまっている。
……やがて階段の踊り場へと、二人とも身体を投げ出した時。
ふと、彼女が幸せで居て欲しいと、僕は思った。