ボクの転生物語の第4話 全4話で完結
最終話・ボクの転生物語の第4話
作者 松本ゲカイ 得点 : 0 投稿日時:
交差点は、騒然としていた。
光の女神を殺す武器を与えられたボクと、渦中のルミナス。
「いいの? せっかく助かった、あなたの命」
崇めるはずの女神を、この手で殺す。その意味するところに、ボクは気付いている。
それでも、地球だってもう以前の状態では無いはずだ。
「女神様、あなたにも戦う理由があったんでしょう。でもボクの元にも、こういった牙が現れた」
街に広がったルミナスへの憎しみ、ボクがそれに同調した瞬間、手にしていた矛。
周囲の風景を鏡のように反射する切っ先を、彼女の白い首筋へと向ける。
「もう、終わらせましょう」
ルミナスは、ボクにだけ聞こえるように、そっと囁く。その時に気付いた。ボクに矛を与えたのは、彼女自身だったと。
全てが。地球で死ぬはずだったボクを生き返らせたところから、その筋書き通りだったのだろう。
人の目が集まったここでボクに討たれれば、彼らの気持ちも少しは晴れる。元々死ぬはずだったボクも、復讐を遂げてから死ぬ。
「ごめんなさい」
彼女の口が、そんな形に動いたのが見えた。
「……ルミナス、覚悟するんだ!!」
ボクは彼女の肩に掴みかかり、同時に矛を突き刺した。
二人の立つ、間の地面へ。
「いいの? せっかく助かった、あなたの命」
ルミナスは、ボクにまた聞いてくる。
女神を殺せる矛。その強大な力は、ボクらを見知らぬ荒野まで吹き飛ばした。
「一度、いや二度死んだようなものだから。今更気にしても」
言いながら矛を適当に投擲すると、遠くの猛獣を仕留めた。
それは、生き返る際にルミナスがボクに与えた能力。荒野でも労なく食料調達が可能で、解体時の切れ味も抜群、何より錆びない優れものだ。
ボクは結局生きることを選んだ。そのためにはルミナスも生かしておかなければいけないし、また誰かに殺されようとしないか、見張っておかなければいけない。
だから、誰もいない荒野での共同生活。本当にそのためだけか、と問われれば、答えに詰まるが。
二人で獲物を担いで、小さな家へと向かう。
「私また、殺されそこなってしまったのね」
また、というのは気になるところだが、そう呟いたルミナスは、微笑んでいる。
「前も結局、誰かに甘やかされてたのか? ボクはあなたのだらしなさ、絶対改善させるんで!」
「えーめんどーい」
「そう言って、家の中も既にごちゃごちゃだろ! 夕食前はまず片付けだな」
そういえば、長い時を生きた彼女の過去については、まだ何も知らない。
こんな晴れ渡った日の星空の下で、聞いてみるのも悪くないと、ボクは思った。