ボクの転生物語の第2話 全4話で完結
ボクの転生物語の第2話
作者 松本ゲカイ 得点 : 0 投稿日時:
ボクは目を開く。
「ここは……」
見覚えのある、片耳の欠け朽ちかけたパンダの遊具。見慣れた近所の公園だ。
「あの女神、意外とやるんだな」
思わず声に出してしまうほど、安堵する。何だかんだ、多少座標がずれた程度で、元の場所に送り返してくれたようだ。
すぐさまボクは立ち上がろうとする。身体は思った通りに動くし、地面に手を付くと砂の感触がするので、間違いなく生き返ったのだと実感する。
「さ、帰って飯でも食うか」
ここから家まで徒歩1分。死んで生き返るという奇妙な出来事に思いをはせ、女神の残念さ以外に何か忘れているような気がしながらも、歩き出したそのとき。
「きゃあああああああっ!!」
少女の悲鳴。
前方を見ると、可愛らしい女子高生がどす黒い触手にぬめぬめと巻き付かれている。
「えっ?!」
「た、助けて……」
「あら可哀そうに。でもね、私もとーっても可哀そうな目にあったばかりで、補給が必要なの」
その触手を、手先からぐいぐい操る女。その主の顔は、女神ルミナスのそれだった。
「どうして……?!」
ボクは動揺したが、よく見ると違う。何が違うって、まずこの女は触手と似たような色と照りをしたダークのドレスを、豊満な胸の下側だけ隠すようにぴっちり着こなしている。言動もそうだ。あのだらしなくてテキトーな女神のはずがない。
「そこのお前、待てっ!」
真偽はともあれ、ボクは女の方に駆け寄る。
さっきルミナスにトンデモな殺され方をした自分として、ルミナス似の女に苦しめられる、可愛い女子高生は見捨てられない。言っておくけど、可愛いからじゃない、多分。
「おやおや、そこの男も生贄希望かしら? 今はこの子の番だけど、席はまだある。順番待ちしなくていいのよ?」
女はそう言って、もう片方の手からも触手を射出してくる。
「ちょ、ちょおっ? 速いし太いっ?!」
首と腰にそれがぐるぐると巻き付き、逃げる間もなく動きを封じられる。
ヤバい。ボクを見て何の反応も無いということは、こいつやっぱりルミナスではないし、そうなれば交渉の予知とかはなく、要するに触手のエジキになるしかないのだ。
「ぐぐっ……」
触手は単に締め付けるだけでなく、そのぬめぬめした表面が触れた部分から、体力が奪われてゆくのが分かる。
せっかく生き返ったのに、不運に不運が重なる。
これだったら、ルミナスの転送失敗で荒野に放たれた方がマシだったかもしれない。
「マジで……恨むぜ女神様……」
そのとき、脳裏に声が響いた。
―手から打ち出すの、あなたの力を、えっと、こう、ざすーっと!!―
ルミナスの声。この適当な物言いは、本物の彼女だ。
ボクはその幻聴ともつかない声に従って、かろうじて自由な手から、それを解き放った。
「ぎゃっ……何! 何なの?!」
女の声と共に、不意に締め付けが緩む。
首を伸ばして視界を確保したボクは、女めがけてその何かををもう一度撃ち出した。
「あああああああああっ!!」
それは閃光。龍のようなその幅広い奔流が、女を空の彼方まで吹き飛ばしてゆく。
ボクや女子高生から外れた触手ともども、女は空の彼方へ吹き飛んで行った。
―あー良かった。それ、生き返ったあなたにあげた能力。なんでも貫通して吹き飛ばすビーム……地球も貫通して、さっきあなたが死んだ原因と同じなの―
「な、何だって?!」
確か普通に、と頼んだはずなのに。
ボクには女神の攻撃と同じ能力が付随してしまっていた。
―あなたが死んじゃった時の敵が今のやつでさ、地球の反対側に吹っ飛んでたから、代わりに倒してくれない?―
「はい?!」
ボクは瞬時に、頭が真っ白になった。