灰空ときどき死神〜ぼくが生きた7日間〜の第2話 全4話で完結
灰空ときどき死神〜ぼくが生きた7日間〜の第2話・C
作者 ショウリ 得点 : 0 投稿日時:
「その髪……」
「ああこれ? 生まれつきの病気でね、いつの間にかこうなっちゃった」
灰のように真っ白な髪を撫でながら、ヒトミと名乗った少女は快く答えてくれた。冷静に考えれば初対面の女の子にしていい質問じゃなかった気もするけど、僕にとっては会話という行為自体がそれほどに久しぶりだった。まして年下の、おそらくそれなり以上に可愛い女の子相手ともなれば空でも飛ぶような難行といっていい。
おもわず目をそらした僕の顔を、彼女は何を気にすることもない様子で覗きこんできた。瞳が栗色なところをみるとアルビノというものとはまた違うらしい。
「ねぇねぇ、あなた名前は? どうして入院してるの? お部屋はどこ?」
「僕は……運命。逆識運命。入院してるのは、その、特別病室……かな」
「ふうん、重たい病気なんだー」
「うん」
死神病だとは言わなかった。僕から教えずとも、どうせ近いうちに誰かから知らされるのだから。
「ヒトミ、さんは」
「えっ、なんで私の名前知ってるの? やっぱりエスパー!?」
「……さっき自分で言ってたから」
「そだっけ? そうかも。で、なになに?」
「ヒトミさんは、本当に病気なの?」
入院患者に向かって、我ながら妙な質問だと思う。それでも僕は聞かずにはいられなかった。
「ヒトミでいいよ。で、私が病気なのはもちろん本当」
僕には人の死が見える。死ぬ七日前からモヤが見え始めるのがそれだけど、実のところ健康な人間でも多少の影はあるものだ。おそらく寿命が生み出すものなのだと経験的に思っている。
だけど。
「私の病気は『女神病』。いつ死ねるか分からない、運次第で何百年でも生き続ける、そんな病気なんだって」
文字通り陰りのない顔で、死なない少女はそう言った。