魔王様はお困りですの第3話 全10話で完結
魔王様はお困りですの第3話
作者 まだあたたかい 得点 : 1 投稿日時:
「待たせたな魔王! 勇者ロドリゲスここに見参! さあ、いざ尋常に勝負せい!」
ばたーん、と派手な音を立てて魔王城大広間の扉が勢いよく開かれる。この扉は半自動である。千年の間魔王の使用に耐えた扉は流れるように気持ち良く開かれ、また気持ち良く閉じんとしていた。これは便利な機能でなにしろ開けっ放しという心配がない。西部劇の酒場についてたりするアレのような機能である。
「魔王! 臆したか! さあ顔を見せい! ……ぷぎゃ!」
勇者ロドリゲスの顔面に 機能に従って戻ってきた扉が命中する。
悲痛な叫び声とともに勇者ロドリゲスはくずおれた。
「大丈夫ですかい、旦那」
愛馬たるシステマが心配そうにのぞき込む。だが返事はない。
「ありゃ、とうとうくたばっちまいやしたか。ああ勇者ロドリゲスここに死す。まああっしと旦那の仲だ、せめて墓ぐらいは掘ってやりますかね。おおっと、そういってもあっしにゃカモシカのように美しい前足と蹄はあっても人間みたいな手ってやつがありませんや。墓穴掘るにも掘りようがない、手もないのにこりゃまったくお手上げってやつでさ。じゃ、そういうわけで旦那、あっしはこれで」
「待てい、愛馬よ」
死せる勇者が立ち上がる。少々鼻血が出ているようだ。
「ありゃ生き返った」
「死んでなぞおらぬ。ものすっごく鼻が痛かったがな」
「ああ、あれ。ツーンってきますやね」
楽しく会話していると、ぎいっと音を立てて魔王城大広間の扉が開く。その向こうには一つの影。
「ぬ! 出おったな!」
「いよいよ最後の戦いってやつですかい」
影はのそのそ進んでくる。少々やる気というものにかけているようだ。
「あー、ちょっと待ってくれよ」
「いくさ支度か。勇者の情けじゃ、待っておるから十分に召されよ」
「いや、そうじゃなくって」
「トイレですかい」
「そうでもなくて。あのさ、俺もその勇者ってヤツなんだけど」
出てきたのは若者。彼もまた勇者である。
まさに今、ここ魔王城において二人の勇者が邂逅したのであった。
「ふ……なるほど、共闘、ということじゃな?」
「いやね、戦う前にね、魔王さん今いないんすよ。外出中」
「やはり臆したか。で、いつ戻ってくる?」
若い勇者はふあああ、とあくびを漏らし少しばかり背伸びをした。
「俺も知らないんす。あー、帰ってくるときに、かわいい女の子でも連れてきてくれないかなー。ここ女っ気ないし。うーんそうだな、おめめぱっちりでおっぱいおっきい子がいいなー」
自分の胸に手を当ててぶるんぶるん振っている。下品である。
「いやあ旦那。この勇者も旦那並みにゲスっぽいですぜ」
「バカを申すな! わしは巨乳になぞ興味はない!」
「巨乳はヒロインの基本だろう!!」
「……いや旦那方、そっくりですわ」