「コスモスや新湯に塩素の漂いて」の批評
こんばんは。貴句、拝読しました。
結論:動詞「漂ふ」が怖過ぎますし、不自然。「新湯」は作者のご家庭でしたのね。
「や」の詠嘆がありますので、「漂い」は文語体で「イ音便」でしょうね。
文語の動詞「漂ふ」の意味は以下です。
①(空中や水上に)浮かんで揺れ動く
②拠り所が無く不安定な状態で暮らす
①の意味ですと、「俳句なんか今そこで詠んでいる場合なの!?
一刻も早く逃げないと作者が死んじゃうよ! 誰か救急車を呼んで!」という事に
なってしまいます。
何故なら、お湯や水蒸気に溶け切れない程の塩素ガスが
辺りに発生している事になっていますので。
②の不安定の意味だとすると、「塩素ならすぐ湯に溶けてるのに、
本当に漂っているのかな? 精々「匂ふ」位の強さじゃないの?
塩素は水やお湯に溶け易いよね」と、読者は困惑してしまいます。
どちらの意味にせよ、「漂ふ」は怖いですし、不自然かと思われます。
精々「ほのか」でしょうかね。
塩素と書かずに「塩素系洗剤の匂いが少し残っているんだろうな」と思わせられれば
最良かなとは思いますが、難しいかもしれません。
そして、季語「コスモス」。
新湯との取り合わせですから、「露天風呂なんでしょうけど、もしかして家庭での
入浴剤のコスモスの香りかな?」と私は疑問に思い、
一概にどうこう決められませんが、
いずれにせよ詠嘆しても塩素が強過ぎて主役の座をコスモスは
奪われてしまっていますので、「塩素」と書いてコスモスを句の主役に立てるのは
かなり難しいのではないかと、私は思いました。
次に、名詞「新湯」。
私は最初、「コスモスと取り合わせているので、固有名詞の新湯の露天風呂かな?
有名な温泉地の群馬の新湯(あらゆ)か長野の新湯(しんゆ)の露天風呂付きの
温泉の従業員さんが外の浴場を掃除していて、目に留まったコスモスの様子を
詠んだ句かな?」と思いましたが、作者の家庭のお風呂。
という事は、ルビは「あらゆ」、「しんゆ」ではなく、「さらゆ」ですよね?
添削ですから、「更湯」と「コスモス」は使うしかありません。
誤読の余地を無くす為に、「新湯」は「更湯」に変えますね。
こうすれば、「温泉地の名湯の露天風呂」とは誤解されませんので。
・塩素ほのか更湯なるコスモスの香(塩素と書く場合)
・掃除の残り香更湯なるコスモス(塩素と書かずに、塩素と思わせたい場合)
コスモスの香りの入浴剤があるらしいのでこうしてみましたが、いずれにせよ、
定型に収めるには難しい取り合わせではないかと、私は判断いたしました。
今回は以上です。ご覧いただきありがとうございました。
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いつもありがとうございます
洗い立ての風呂 新しいお湯をたっぷり
洗剤の塩素の臭いが少し漂っていました