俳句添削道場(投句と批評)

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常に獣を飲まんとして待つ泉

作者 東次郎  投稿日

コメント(俳句の意味。悩みどころ)

「泉」は俳句新聞いつき組、昨年7月の兼題でしたね
俳句が万物の命を詠むものであれば、泉は何を喰らい何を飲むのかってね

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「常に獣を飲まんとして待つ泉」の批評

回答者 ハオニー

想像を描写するのは難易度が高いのですが、挑戦なさったようですね

これは「獣を飲み込もうと、泉は今か今かと待っているに違いない」というおおよその意味なのでしょうか?
その通りだと仮定して説明します

この句は逆転の発想ですね
動物が泉で水を飲む、水浴びするならばいくらでも書けるものです
しかし、泉は静かに待ち構えていると、違う視点から泉を見ています
こういった独特の視点が有利に働いていて、大健闘した句です

季語「泉」が獣を飲み込もうとしているという擬人化は、きちんと機能しています
擬人化は使う覚悟ができていないと大火傷する技法ですが、今回は代えがたい表現となっています

ここまで詰めたのなら、「して待つ」も挑戦してみてはいかがでしょう?
これはなくても伝わります
「常に獣を飲む」のも泉、「待つ」のも泉、擬人化2つは少しキツイかもしれません

まだ「泉」がどのような様子なのかを描写できる余地があります
想像の世界の句の中に、現実の光景がさらりと入れられればかっこよくなるのです

誤読封じの為、飲むは呑むに変えて...
常に獣呑まんと泉ゆらめきぬ

とすれば、「泉が揺らめいているのは、泉が獣を飲み込もうとしているからに違いない」と、そんな想像が出来るだろうと思いませんか?

名詞で終わるのもありですが、動詞で終わると動きに焦点が行きます
強調したかったのは泉そのものではなく、「泉の湧く様子」だったのだろうと私はそう思ったのです

点数: 3

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添削一覧 点数の高い順に並んでいます。

「常に獣を飲まんとして待つ泉」の批評

回答者 塩豆

お世話になります!塩豆です。
批評ではなく感想の方です。この俳句を読んだとき、夏井いつきの私の大好きな俳句の一つ「空蝉となるべく脚を定めけり」を思い出しました。勿論プロの俳人の作品ですから、この手の逆転の発想を詠んだ俳句の中では最高クラスの練度の作品と思いますので、参考になればと思います。
私もこんな感じの俳句を作ってみたいのですが、一度も納得のいくものはまだ作れていないのです。何だか羨ましいです。

点数: 5

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「常に獣を飲まんとして待つ泉」の批評

回答者 腹井壮

東次郎さん、おはようございます。いつもコメント有り難うございます。獣が泉を飲むなら飲まれる泉の立場になって考える。実に俳句的な考え方です。でしたら

鳥獣の吸ひ寄せらるる泉かな

説明句や報告句かそうでないかのギリギリのところを上手く狙う斎藤朝比古という俳人がいます。ボール半個分をうまく出し入れする人ですね。この程度ではまだまだ斎藤朝比古に追い付けません。

点数: 3

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「常に獣を飲まんとして待つ泉」の批評

回答者 北野きのこ

東次郎さんこんにちは。
お世話になっております。
句の感想を述べさせて頂きます。

この句の逆転の発想の豊かさについて、皆さんがおっしゃっている意見に私も同意します。
奇抜ではありますが、同時に読み手の共感を呼ぶ発想ですね。

チープな印象や既視感を喚起しがちな擬人化。
特に季語に対して用いるのはリスキーだと思うのですが、私はこの句の擬人化は成功していると感じました。
擬人化される事で、泉の光景に付与された不気味さや緊張感が作者の狙い通りに機能していると思うからです。

ひょっとすると私の好みの領域の議論になるのかもしれませんが…。

擬人化によって醸し出された緊張感を強調するのであれば、時間の幅を感じさせる「常に」は推敲できるのではないでしょうか。
「まさに今目の前で何かが起ころうとしている…!」の方が迫力が増すと思います。

また掲句は季語以外は不吉な予感として作者の脳裏に浮かんだ映像(=獣が飲まれる)で構成されています。
作者の目の前にある実景をもう少し足した方が、そこから想起される予感に読者が共感しやすいと思います。
時間情報、明暗、温感、冷感…などいかがでしょう。

「飲む」について、私は「呑む」の方が雰囲気に合うと思います。
どちらも漢字の用法として間違ってはいない様ですが、ゴボゴボと丸のみにされる雰囲気は後者の方が強いのではないかと。
https://chigai-allguide.com/%E9%A3%B2%E3%82%80%E3%81%A8%E5%91%91%E3%82%80/

今宵こそ獣呑まんと待つ泉
風ぬるし獣呑まんと夜の泉

やってから言うのも何ですが、作為的な情報が多いとチープさが増す…かも?
以上長々と失礼しました!

点数: 2

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添削対象の句『常に獣を飲まんとして待つ泉』 作者: 東次郎
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