小説のタイトル・プロローグ改善相談所『ノベル道場』

七聖勇者

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スレ主 蒼月空太 投稿日時:

七人の勇者たる少年少女は、異世界に召喚された。

プロローグ

真竹で作られた重い竹刀。十三年間必死に「重い」と言って振るい続けてきたそれを、俺は両手で握り、振り上げ、一歩進み、振り下ろす。
そしてまた一歩下がり、同じことを何度も何度も繰り返す。生活習慣のように、人が食事を取るように……至極当然のことのように。
この竹刀の素振りは十七歳の夏を迎えた俺にとっては日常的……どころか、もう八歳辺りからは本能なんじゃないかと思えるくらいにやっている。
幼い頃から剣を使う主人公が大好きだった俺は、剣を振るうことが好きだから、剣を愛し剣に愛されていると思っていたから今この瞬間も剣道をやっている。
今でも剣道をやりながら、家ではアニメを見たりゲームをしたりで、剣を使う主人公の事を研究しては庭で木刀を持ってそれを真似したり剣道の技をひたすら磨く。
時々体全体を鍛えるためのトレーニングをしながら、独自の剣術っぽいのを考えたりして剣を振るう楽しさを加速させる。そ

「九百九十八、九百九十九、せ……んっ!」

まぁ、そんな機械的なほどに変わらないことをしながら俺は剣道の素振り、千回を終えて俺は両腕をだらりと下げる。
夏休みのクソ暑い時期に体育館でこんなことをしていれば、当然ながら俺は汗でビッタビタになる。ので、脇に置いてあるタオルを使って己から流れた汗を拭き、水分補給。
水をグビグビガバガバ……と飲んでいると、こちらを見ている人の気配に気づいて俺は水を飲みながら目線を真横にやる。

「朝から精が出るな。」

「あ、先輩。どーも。先輩もこれからですか?」

「ああ、私もお前に負けてはいられないさ。三年生としてのプライドの一つくらいは卒業までに保って置きたいからな。」

俺の一個上の先輩、俺が剣道を十三年ほどやっていても未だに俺よりも剣道が強い剣道歴十五年、更には眉目秀麗成績優秀と来た先輩。
ポニーテール姿で竹刀を振るうそれは、まさに戦の乙女のように美しい姿で、この人が素振りをやっていると集中できなくなる。
胸の部分とか、うなじの部分とか俺にとってストライクゾーンの先輩のそんな所を見たら竹刀以外の剣がバキバキに硬くなるのだ。
尤も、見られたら人生終了なので必ず叩き折る。悪役の武器を主人公が叩き折るがごとく、俺の煩悩を俺の理性がブチ折る。
先輩の千五百回の素振りを見終えてから、俺は疲れた腕を休ませるのもこの辺かな、とまた竹刀を握る。

「お前の素振りを見れるのも、私の素振りを見せられるのもあと少しだ。
夏の大会、全国優勝を目指そうじゃないか。」

「そうですね……っと。でも、出来れば俺は先輩の剣捌きはいつまでも見ていたいです。
先輩の剣なら、受けることすら光栄ですから。」

「ほう、そこまで言うのなら防具なしで試合をしてみるか?」

「やめてくださいしんでしまいます」

先輩は時々いたずらっ子みたいな笑みを浮かべながらこんなことを言うが、マジでやりかねない時とかがあるので怖い。
が、実力は俺よりもずっとあるし、三年生の矜持や十五年間培ってきた剣道の腕前は、誰にも負けないほどのものがある。
そんな先輩が卒業してしまうのは名残惜しいし、出来れば最後に一本くらいは取っておきたいなぁ……と思って俺は竹刀の素振りをまた始めた。
両手で竹刀を握り、竹刀のみに意識を集中させ、目の前にいる仮想の敵の頭を一撃で吹き飛ばすほどの威力を腕に込めて全力で踏み込む。
その過程と竹刀を振るうまでの覚悟と集中力、これは先輩にも負けていないと自負できる俺なりのアイデンティティ。
なんて、思いながら素振りを終えると、今度は先輩の番となり、先輩の素振りが終われば他の練習……と数時間が経ち、練習は終わる。

「そうだ、所で……お前はこの後暇か?」

「まぁ夏休みなんで、暇と言えば暇ですよ。何か俺に用でもあるんですか?」

五割くらいは嘘だ。夏休み中盤に入って宿題は真っ白、見たいアニメもあるから暇とは言えない……
が、先輩の頼みだった場合は国土下座でもドブ舐めでも椅子にでもなんでもなる気がある俺は嘘でもなんでもつく。
別に宿題もアニメもいつでもやったり見たりできるのだ。
この先輩の言動から察するに、先輩は俺を何かに誘おうとしている……それもわざわざ暇かどうか尋ねるのだから、大事なことなのだろう。
故に俺は先輩のお誘いならば喜んで行くし、虫だらけの末恐ろしい所だろうが何だろうが行く。アメリカに来いって言われたら泳いでいくさ。

「そうか、なら……夏休みの宿題である読書感想文の題材の本を探したいんだ。
一緒に図書室で探さないか?図書室なら、膨大な数の本があるからな。」

楽しいデートだとかそう言うのではなく、まさかの宿題だ。畜生、夏休みなんだからプールに行こうよ、先輩。そしてスク水着てください。
だが先輩の頼みならば先輩がどんな賞だって取れる気になるような本だって探してくれよう。呪いの本でも喜んで手づかみしようじゃないか。
なんて、現実には起こりえることのないふざけたことを考えながらも、俺と先輩は制服に着替えてから図書室へと足を運ぶ。
夏休みだと言うのに図書室に来ている者は思ったよりもいた。

まず髪がピンク色の眼鏡をかけてる半袖の女子……俺の後輩だ、そして知り合いでもある。彼女は何かの本を熱心に読んでいるようだ。
黒髪に金のメッシュをかけて、この暑さにネクタイを緩めながらあちー、とかなんだとか言いながらしゃがみながら本を探している様子。
面倒くさそうに本のページを捲っている黒髪ロングヘア―女子、知らない奴だけど顔は整ってるし一部の層からモテそうだ。アレで本の内容、頭に入ってるんだろうか。
何かブツブツ言いながらア行の辺りをずっと見てる男子、知らない奴だしなんかめっちゃ怖いし出来れば関わりたくないな。廊下ですれ違ったりくらいはしたかな?
ブツブツ言いながら本を片っ端から見る茶髪男子、知らないしなんかそのブツブツ喋るのが恐ろしいからせめて片方だけでもやめてくれ。

最初の二人は知っているが、後の三人……おっと、その前になんか図書委員の男子を口説こうとしている学校イチのビッチを見たことで知っている奴が三人になった。
尤も、向こうはこっちのことは知らないかもなので先輩以外の知り合いが二人しかいない。図書委員の方は知らない顔だから多分お互い知らないだろう。
が、まぁこの人数ならばそんなこと気にせずにいられるだろう。と、先輩に手を引かれるように本棚の前に連れていかれ、何の本がいいかと本と睨めっこの開始だ。

「お前ははどんな本を読むんだ?」

「そう言う先輩はどんな本を?」

「質問に質問で返すな。
……生憎私は中学二年生辺りの頃から本を読むことはすっかり減ったな。世の中を生きる上で必要な知識の本を詰め込み切ったから……と言う理由だった気がするな。」

さり気無い天才アピール、普通の奴なら腹が立つが先輩の場合はほぼ無自覚でこう言うこと言ってるし、謙虚な人なのだ。
実際、先輩は剣道の大会とかでも全国に出れば必ず優勝か三位くらいまで行くし、それでもう十分すぎる程の成績だから誇って良いのに、向上心が凄い人なのだ。
ラノベと剣術の本とかしか読まないような俺とは大違いだし、俺は人として先輩に憧れてはいるが先輩のような生き方は出来ない。

「で、結局の所どんな本を読むんだ?」

「俺は剣が出てくるラノベと剣術の本とかですね、剣道の本は空気と同じくらい読んでます。」

「全然読んでないってことだな。」

何を言うか。俺は空気は割と読む方ですよ、先輩。だってイジメられてる子がいるのは助ける空気だし。
人には人それぞれに割り振られた空気があるのだから、読み方次第で状況の空気は一変二変としていくのだから。
おっと、話が脱線した。今俺は先輩と一緒に本を探すことだ、ならば本を探すことを最優先にしなければならんのだ。

「ん~……この本、で良いか。」

先輩は本棚にある本一冊一冊のタイトルを目に入れて縦横無尽に目を動かしてそれらがどんな本かを理解してから感想文が書きやすそうな本を手に取った。
タイトルはなんか英語だったので俺にはわからないが、多分英語の小説家なんかだろう。まぁマルチリンガルな先輩なら読めちゃうんだろう。
そんで俺はその隣に置いてある、分厚くもなんか古ぼけている辞書未満、普通の本以上の分厚さの本を手に取った。
タイトルは「七聖勇者の伝説」表紙には魔法陣もどきが書いてある……ラノベっぽいけど本の書体がラノベっぽくないので、シャーロッ〇ホー〇ズみたいな感覚で捉えればいいだろう。

「なんだその本は」

「先輩がとったとこの隣にありました」

「そうか、ならまずは冷房の効いたここで読もうじゃないか。」

「ですね」

机で本を読んでいるのは俺の後輩、と黒髪ロングヘア―のそこそこ美人な女子だ。片方は熱心に、もう片方は面倒くさそうに……
片方は内容が頭にキッチリと刻まれていそうだが、もう片方は一文字も頭の中に残らなさそうだな……
なんて考えていると時間を食ってしまうので、後輩の席の一個隣に座って俺は七聖勇者の伝説なるちょっと厚い本を開いてみた。

―――賢王と魔王、二つの魂を分かちし男たちは大いに怒った。
一つの国を束ねる程の巨大な勢力を持つ彼らは戦争を始め、互いを傷つけあった。
しかし賢王の策、魔王の力。どちらも戦況を均衡させ、永遠に続くと思われた戦争を終わらせるべく、七人の勇者を召喚した。

要約するとそんなようなことがつらつらつらつらと書かれていた。
三行で説明できるようなことを、数十ページほど使って書いているのだからこの本を書いた人は凄いな。
なんて思っていると、それぞれの勇者の伝説集、と言うページに差し掛かったので開いてみる。

「んだこれ、誰かのイタズラか?」

「どうした?」

思わず声が出てしまった。不思議そうに後輩や黒髪女子がこっちを見てくるが、俺はそんなことを気にしていられなかった。
伝説、なんてものは欠片たりともなく、剣の勇者の伝説、と書かれた所には剣の絵と真っ白なページ。

「だってこれ、真っ白なんですもん。」

「あぁ、確かにそうだな……誰のイタズラなんだ?これは……」

盾の勇者の伝説、槍の勇者の伝説、弓の勇者の伝説、斧の勇者の伝説、槌の勇者の伝説、銃の勇者の伝説……
全部ただただ盾やら槍やら弓やらの挿絵がついているだけで、文字は何も書かれずに真っ白だ。
あれか?これは落丁本と言う奴なんだろうか。だとしたら新しいのを取って来るしか……けれどもこれは図書室に一冊しかなかった。どうなってんだ。
なんて思って本を閉じると、いつの間にかさっきまで本を選んでいた男子が席について、金髪ビッチの方も何か本を読んでいた。
それぞれ見てみると、この本に書かれてた勇者たちの使っている物と同じものが書かれた本を読んでるな。
と、周囲の本の方を見ていると先輩が目を見開いてこちらを凝視していた。何があったんだ。口がパクパク動いて声が出てないぞ、先輩……

「お、お前……体……」

「え?体がどうし―
ふぁ!?」

俺は自分の右手を見てみると、何故か知らないが購入したてほやほやの電球のような光量を放っていた。
自分の体の怪奇現象に驚いて声を上げると―

「な、なんですかこれ!」

「ど、どうなってんだ!?」

「え?」

「わああああ!?なにこれ!」

「な、なんだ……」

「え?なんか光ってる?ウケるー、おもしろ~。」

光っているのは、俺だけじゃあないようだった。慌てだすもの六名、ウケてスマホから写真撮ってる奴一名。
俺、後輩、金髪メッシュ、黒髪ロング、さっきまでブツブツ言ってた男子と、その茶髪の方と、金髪ビッチの体が光っていた。
いや比喩がおかしいだろうが、イルミネーションを体に巻き付けた時とか懐中電灯で照らされた人間みたいになっている。
先輩もそんな俺たちを見て、開いた口がふさがらずに目を見開いたままで、俺自身も驚きっぱなしでどうすればよいのかわからない。
と言うか、七人も一斉に光っているせい目がチカチカチカチカして目を開けるのも困難になってくる。

「ちょ、これどうやったら消え―」

俺がそう言いかけた途端、激しい眩暈、頭痛、謎の重さが俺の体を襲い、心臓がドクンッ、と鳴った途端。
俺の―

いや、俺だけではなく、この図書室で光っている七人同時に同じことが起きたようだった。
彼らも一瞬目を見開いてから頭を押さえたと思うと、俺と共にその場でバタリ、と倒れて―
目を開けることも出来なくなり、徹夜した日のように、瞼が重くなって目を開けることも出来ず、そこで意識が途切れた。

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