真飛幽利は一人で暮らしたかった。の第4話 全4話で完結
最終話・真飛幽利は一人で暮らしたかった。の第4話
作者 A 得点 : 2 投稿日時:
退魔師として、幽利が壮士から与えられた初めのミッション。それは、座敷童を成仏させることだった。
「ユーリ、おかわり!」
「おまえな、居候だって三杯目にはそっと出すもんなんだよ。10杯とかなんだ。ギャル曽根か」
「誰それ? それより早くっ! そのあと、ゲームに付き合ってね。リベンジ!」
「100戦して1勝もできないのに、なんで挑んでくるんだよ。諦めろよ」
こんな大食いで生意気なヤツでも、共同生活をしているうちに、愛着のようなものが沸いてくるものだ。一応、顏は可愛いし。
幽利が何もせずに座敷童と暮らしている間に、実家から電話があった。父が大怪我をしたというのだ。幽利は慌てて、母に教わった病院に飛んで行った。
「何があったんだよ、親父」
「幽利、無事だったか」
「は? 怪我してるのは親父だろ」
「俺は退魔師ハンターに襲われたんだ」
「退魔師ハンター!?」
退魔師ハンターとは、妖怪束ねる親玉のような存在だ。霊や妖怪を成仏させる退魔師を狙っている。以前、父親と壮士で寺の奥に封印したのだが、誰かがそれを解いてしまったらしい。
優秀な退魔師である幽利の父でも歯が立たなかったのだ、幽利に手におえる相手ではない。とにかく壮士に相談しようと、アパートに戻ろうとしたとき……
「退魔師の匂いがする……」
幽利の目の前に、巨大な影が現れた。いくつもの怨霊が絡んだようなバケモノだ。
「こいつが、退魔師ハンター……」
こんな化け物に襲われたら人太あまりもない。幽利は逃げ出した。しかし、退魔師としては見習い以前の幽利が逃げ切れるものではなかった。
退魔師ハンターが幽利に牙をむく。
「うわああああああぁぁぁぁぁ!!!」
幽利は死を覚悟した。
しかし。
「あれ、痛くない」
幽利が目を開けると、座敷童が幽利の身代わりに、退魔師ハンターを攻撃を受けていた。
「座敷童!」
「ユーリ、掴まってて」
座敷童は負傷し、血を流しながら幽利を抱いて、人ではありえないスピードでその場から移動した。退魔師ハンターからなんとか逃げ切ることができた。
アパートに戻り、座敷童の傷を壮士に見てもらうが、非常に危険な状態だという。しかし、退魔師ハンターの心臓を使用した秘薬があり、それは妖怪にとって、特効薬になるという。
「正直、わたしでも退魔師ハンターに勝てる見込みはない。座敷童は運が悪かった。諦めろ」
壮士は首を振る。
「大食らいで生意気で、いつも勉強や睡眠の邪魔ばかりするやつだけど……」
幽利は拳を握った。
「俺、こいつを助けたいよ。修業でもなんでもするから……退魔師ハンターを倒す力を俺にくれよ!!」
その気迫に、壮士は深く頷いた。
「その言葉が聞きたかった」
そういうと、瀕死と思われた座敷童は、ひょっこりと起き上った。別の部屋から、幽利の父や、退魔師ハンターまでも姿を現した。
「はっはっは、今の姿、しっかり録画させてもらったぞ。シッカリ修行に励むように」
「え……いままでのは?」
「お前をやる気にさせる、芝居だ」
「マジか……」
幽利はがっくりと膝をつき、天に向かって叫んだ。
「くそがあああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーー!!」
幽利の修業は、まだ始まったばかりだ。