深緑の第4話 全4話で完結
最終話・深緑の第4話
作者 あすく 得点 : 0 投稿日時:
「いや、それは違う。俺はお前と長い付き合いだ。本当に、長い、な」
紫鏡の突然の告白に、しかし文月は更に意味不明なことを言った。
「何? それってどういう……?」
「もう隠さなくても良いぞ。お前は確かに40年前からこの車両に乗ってあの時代に来ちまった。それはそうなんだろうが、お前自身の出自は違う」
文月の言葉遣いが、微妙に変化している。だが、それ以上にまとう雰囲気が変わっていた。
「お前は、2018年から、1度40年前に戻ったんだ。何故なら、俺がそうしたからだ!」
「あ、あぁ……」
聞いていた紫鏡の目に、僅かにだがはっきりと、マシンギミックが浮かび上がった。
「そうだった。そうだ、私は……」
「お二人とも、そこまででありますぞ」
空気と化していた男が、その間に突然割って入る。車窓の景色は、宇宙空間へと移っている。
「我は時空神。遥か時の流れを越えて争う汝らを、この時空列車に乗せて時の彼方へ駆逐させて頂きます」
「時空神……」
二人の声に、もはや人間的な感情はない。それは時空神を名乗る男も同様である。
「文月、いや、イースの大いなる種族の者よ、その力を恐れた我等機械生命は、この時代、この時間軸にて貴公を滅ぼすために、未来の水星よりターミネーターが送り込まれた」
「そう、谷町紫鏡の名を名乗り、貴方に近付き、暗殺のタイミングを待っていた」
「だが、俺はそれに気付き、イースの大いなる種族の秘術をもって、お前を更なる過去へ飛ばした!」
「私はショックでエラーを起こし、記憶を一部失った。この列車に乗ったのは、その後の偶然よ」
「そして、そなたらはここで再び出会った! さあ、時の彼方まで争い続けるが良い!」
「「嫌だ」」
「なんと!?」
時空神は、想像を越えた答えの二人を驚きの顔で見た。既にそこには、先程のホームでじゃれあっていた二人に戻っている。
「戦うの、面倒だし」
「エラーのせいで殺意抜けちゃったし」
「「べつに、このままでも、悪くないな」」
「夫婦漫才か!」
時空神の突っ込みは、実に的確であった。
その後、二人は時空神としばらくお茶をした後、何事もなく駅へ戻った。
「この日常、変えるの面倒だもんなあ」
「そうそう、文月をからかう楽しさを覚えた私に敵なんかいないんだよ!」
二人は電車を待ちながら、そんな風にして、過ごすのであった。
「あ、文月」
「何だ?」
「どうして電車なんか待ってたの?」
「ん?それは、ほら、アレだ」
「アレ?」
「えーっと、暇だったから、ノリと勢い?」
「ただの暇潰し!?」
お後が宜しいようで。