初めまして、目鏡コノミです。好物はメガネ男子です!
作者 百模モモ 得点 : 2 投稿日時:
「初めまして、目鏡コノミです。好物はメガネ男子です、よろしくお願いします!」
高校デビュー、大失敗しました。
遡ること、数時間前。
新しい制服に腕を通し、昨日切りに行ったばかりの髪を念入りにブラシでとかす。スタイリング剤も付けて、コンタクトを入れれば垢抜け女子の完成だ。
鏡を見れば、中学時代の陰キャオタクだった私はもうそこにはいない。大好きなアニメキャラのレオンハルト様の話も、もう封印すると決めたんだ。
全てはそう、モテるため。二次元じゃなくて三次元のメガネ男子に好かれたいのだ!
道に迷いかけながらも時間内に学校に着き、体育館へ移動して入学式も無事に終えた。さあ、次は教室で自己紹介だ。
あらかじめ、言うことは大体決めている。好きな食べ物はミルフィーユ。趣味は読書(漫画)と映画鑑賞。完璧っ……!
実は、ミルフィーユはレオンハルト様の大好物なのだ。はあ、お堅いのに甘党とか最高すぎるんだけどレオンハルト様!!
などと思っているうちに先生が説明を終え、とうとう自己紹介が始まった。
「初めまして、相沢アキラです。趣味は読書です、よろしくお願いします」
ちょ……っ、早速メガネ男子キター!
黒髪も、切れ長の目も、銀縁のフレームもレオンハルト様に似ている。ああ、眼福……。
彼に合わせて、次の人からほぼ全員「初めまして→名前→趣味とか好物1つ」の流れになってきてる。用意してきたのを全部喋れる雰囲気じゃないな。どれを言おう……?
方針が決まらないまま、私の番になってしまった。
「初めまして、目鏡コノミです」
好きな食べ物は、と言いかけて思い直す。何か表現が幼稚じゃないか?
「好物は」
レオンハルト様ですっ……!! と叫びたくなるのを我慢して言葉を続ける。
「メガネ男子です、よろしくお願いします!」
勢いよく頭を下げた私は次の瞬間凍りついた。
今、私、何て言った? 全身に鳥肌がたつ。えっ……嘘だよね? 顔を上げるのが怖い。折角、わざわざ私を知る人がいない高校を選んだのに。入学初日で高校生活詰みましたとか笑えない。